出港中でもインターネットを! Starlinkは海上自衛隊を救うか? その1

記事の要旨

この記事では、海自艦艇でStarlinkによるインターネットサービスが使えるようになるというニュースを踏まえ、その背景や注意点について理解を得るため、次の内容を説明します。

第1回

  • Starlinkを使用したインターネット接続サービスが、艦艇乗員に提供されるようになる。
    • Starlinkは、低軌道での衛星コンステレーションにより、高速インターネット接続を可能にする。
    • 今後、艦内のルーターを介して、私物のスマートフォンからインターネットに接続できるようになる
  • 艦艇乗員の外界との通信の現状
    • INETや船舶電話が存在するが、業務目的での利用が原則
    • 航海中は「電子家庭通信」により、家族と電子メールをやり取り出来る
      • 私物のスマートフォンから艦内のwifiルーターを介して送受信可能
      • システム上は画像送受信の余地もあるが、現状はテキストのみで運用される。
      • 送受信は1日に1~2回程度、まとめて行われる
      • 同システムを利用して、ニュースをテキストのみで配信するサービスもある。
    • 海外派遣艦艇では、寄港地でwifiルーターを契約することがある。
      • 現地の携帯電話回線を使用する、いわゆる「ポケットwifi」をなるべく艦の開口部に近いところに設置する。
        • 居住区は艦の奥深くにあるため、居住区内から接続するのはほぼ不可能
        • 外から見えないながらも通信の繋がるところに乗員が殺到する。
      • 回線速度が遅い地域も多く、はその低速通信帯域を20~30人で共有するため、ほとんど使い物にならない
  • Starlinkが変える個人通信
    • 居住区や食堂にいながら通信できるようになる。
    • メール(テキスト)の送受信だけでなく、WebサイトやSNSの閲覧ソーシャルゲームへの接続もできるようになる。
    • リアルタイムに通信できるようになる。

第2回

  • プライベートなインターネット接続の必要性
    • 募集状況は年々悪化、中途退職者が激増艦艇部隊の充足率が激減
      • 原因の一つはインターネット接続できない不便さ
      • 航海日数の増加により個人通信できない時間が増加
    • 常時接続が前提の社会
      • オフラインでも使用できたアプリが、オフラインでは使用不能に。
      • ネット接続必須のサブスクリプションサービスが増加
    • 若年層のコミュニケーションもインターネット接続は前提条件
      • 繋がっていない人間は存在しないものとして扱われ、社会からの疎外感を感じる
  • 作戦・業務用途と厚生用途の優先順位
    • 当初、厚生用途が主とされてきたが、作戦・業務用途が主となった可能性あり。
    • 作戦・業務用途でも衛星通信は貧弱であり、Starlinkの活用により劇的に改善できる可能性がある。
    • インターネットを介さないようにしてきた作戦通信。急に導入できるか?

第3回

  • Starlink運用上の留意事項
    • 秘密保全上の問題
      • 乗員を介して艦の位置や行動予定が漏洩する恐れ。
      • 秘密保全のために自衛隊が執るべき処置
        • 重大なオペレーションの際は、通信を遮断する。
        • 秘密情報を伝達する相手を厳選する。
    • 運用の形態は未定?
      • 練習艦隊でのStarlink運用は調査研究として実施されている可能性あり。
      • 護衛艦での利用がどのような形で実現するかは運用ポリシーによる。
        • 使用できる端末やアプリが限定される可能性あり。
    • 通信の秘密」は守られるか?
      • 通信の秘密は憲法や法律で保障されており、インターネット通信も保護される。
      • ただし、犯罪捜査やその防止に必要な場合、通信内容に応じて遮断する行為も正当業務行為として認められることがある。
      • 送受信されるデータの検閲は、技術的には可能
        • 労力に見合わないため、実際に行われる可能性は低い。
        • 検閲される可能性を念頭に置いた自己防衛も必要
水雷長 遠見1尉

お、船務長!海自もとうとうStarlinkを導入するってニュースを見たんですけど!
うちの艦にはいつ来るんですか!?というか、本当に来るんですか!?

船務長 先野1尉

ああ……来るさ。きっと。
いつになるかは知らんが、まぁ来年度か再来年度くらいには来るんじゃないか?

水雷長 遠見1尉

おお~待ち遠しいですね!

砲術士 嶋村3尉

……スターリンク?なんです?それ?

船務長 先野1尉

なんと……流石にそれくらいは知ってて欲しかったが……。

目次

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リアルタイムで、プライベートなネット接続を。

通信士 与那覇3尉

Starlinkというのは、SpaceX社が提供する衛星通信サービスのこと。SpaceXはイーロン・マスクが率いる会社で、ロケットの打ち上げや通信サービスを行ってる。

通信士 与那覇3尉

インマルサットのような従来の衛星通信サービスは、高度の高い、つまり地球から遠いところにある静止軌道衛星を使っているけど、Starlinkは大量の低軌道衛星を使っているの。

用語解説

静止軌道衛星・低軌道衛星

高度による人工衛星の種別。

静止軌道衛星は、赤道上、高度約36,000kmに配置される人工衛星で、公転周期と地球の自転周期が釣り合っているために、地表との位置関係が変わらない。そのため、1つの衛星で24時間覆域を維持できる利点がある。ただし、地球との距離が離れている分、遅延が大きく(最低でも500ms)、大がかりな通信設備を要するほか、画像・電波等の情報収集衛星の場合、入手できる情報が粗くなる欠点がある。

低軌道衛星は高度約160~2,000kmに配置される人工衛星で、地球との距離が近い分、低遅延(2~27ms程度)であり、簡易な通信設備で大容量通信が可能になるほか、情報収集衛星の場合、より高精細な情報が手に入る利点がある。ただし、数時間で地球1周してしまうほど周回速度が速いため、1つの衛星がある地点に対し通信や撮影等のサービスを提供できる時間は極めて短い欠点がある。
Starlink等の衛星コンステレーションは、この欠点を補うため、無数の低軌道衛星を連携させるシステムである。

砲術士 嶋村3尉

ふぅん。そうすると、どうなるの?

通信士 与那覇3尉

まず、通信費消時を圧倒的に短くできる……つまり、遅延の少ない通信が出来るようになる。

通信士 与那覇3尉

それに、1つの衛星でやりとりできる情報には限りがあるから、衛星通信と言えば、数十~数百kbpsしか回線速度が出ないのが当たり前だった。
でもStarlinkでは数万個の人工衛星を打ち上げて、それらをネットワーク化することで高速通信を実現しているの。この大量の人工衛星の連携……これを衛星コンステレーションと呼ぶんだけど、そのおかげで数十Mbpsくらい……つまり携帯電話回線と同じくらいのスピードが得られるの。

砲術士 嶋村3尉

へぇ~。そうなんだ~!
それで、そのスターリンクが導入されると何が変わるの?INETが速くなるのかな?

通信士 与那覇3尉

……違うよ。
家族メールみたいな感じで、航海中でも個人のスマートフォンから、インターネットに繋げることが出来るようになる。

砲術士 嶋村3尉

ふーん……?
……えっ、そんなことできるの!?すごーい!


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海上自衛官の哀しき通信事情

INETと船舶電話は業務利用が原則

船務長 先野1尉

まずは現状について確認しよう。
キミ達が、艦内から部外と通信をしようと思ったら、何が使えるかね?

水雷長 遠見1尉

そうですね……、INET船舶電話、それから家族メールですかね?

船務長 先野1尉

そのあたりだろうな。

用語解説

INET

海上自衛隊におけるインターネットの名称。オープン系やクローズ系とは独立しており、専用のINET端末を使用してインターネット通信を行う事ができる。通信の用途は業務用の情報収集に限られ、Webメール・SNS等の私的通信は禁止されている。

艦艇では業務用の衛星通信回線を利用することでINETに接続することが出来る。

用語解説

船舶電話

NTTドコモの衛星電話サービス「ワイドスターII」のこと。静止軌道衛星「N-STAR」との通信により、日本近海で利用可能。業務通信の他、隊員家族との緊急連絡用に使用することが出来るが、通話料が高額(船舶電話⇒他電話:49.5~99円/30秒)であるため、利用には艦長・当直士官等の許可が必要な艦艇がほとんど。

ちなみに、固定電話・携帯電話から船舶電話にかける場合も、通話料は高額(ドコモ⇒船舶電話:55円/30秒、KDDI⇒船舶電話:177.1円/30秒)になる。携帯電話同様、「090」の電話番号を与えられているので、誤って掛けないよう注意。

機材老朽化により「ワイドスターII」は間もなくサービス終了となる見通しであり、近く、船舶電話も後継サービス「ワイドスターIII」へ移行することになると思われる。

水雷長 遠見1尉

とはいえ、このあたりは業務利用が原則……。好きなタイミング、好きな用途でってわけにはいかないんですよね。

船務長 先野1尉

そもそも、業務用途以外使用禁止なのに、業務用データの取扱い禁止という矛盾を孕んでいるのがアレなんだが……。
それはそれとして、さっき通信士も言っていたとおり、航海中の艦艇からのINET通信速度はダイヤルアップと同等か、下手をするとそれより遅いくらいだ。使い物にはならんな。

水雷長 遠見1尉

ですねぇ……。無いよりは遥かに良いんですけど、これがあるから「通信環境に配慮してるぞ」なんて言われたら、とてもではないですが、受け入れられないです、


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「スマホ事業」の先駆け、電子家庭通信

水雷長 遠見1尉

プライベートの通信といえば、やっぱり家族メールですね。正式名称は……なんて言いましたっけ?

船務長 先野1尉

電子家庭通信」だな。きちんと使っているか?

用語解説

電子家庭通信

厚生用途のため、航海中の艦艇から、隊員の家族・友人との間で電子メールの交換を行えるようにする装置・サービス。「家族メール」と俗称される。私物のスマートフォンからメールの送受信が出来るのが特徴。食堂等にwifiのアクセスポイントが設置されており、そこに繋ぐことで、艦内の専用サーバーとの間で電子メールの送受信を行う事が出来る。スマートフォン・艦内サーバー間の送受信はいつでも出来るが、実際に外部と送受信されるのは1日に1~2回程度

やり取りのできるアドレスは事前に登録しておく必要がある。また、各艦で「禁止ワード」が設定されており、フィルタリングに抵触すると送信されない。

画像データを取り扱う余地もあるとされるが、実際にはテキストメッセージのみで運用されている。

また、メールの送受信だけでなく、ニュース(テキスト形式)の配信も行われる。

砲術士 嶋村3尉

遠洋航海の時は親に連絡するのに使ってたんですけど、「ひとなみ」に来てからは全く使ってなかったですね。

船務長 先野1尉

あれは、スマートフォンからアクセスするのに、事前の設定が必要だから、今は使わなくても出港前に設定しておけよ。

水雷長 遠見1尉

家族メールが入ったおかげで、とりあえず近況なんかはやり取りできるようになって良かったですね。
ただ、送受信が1日に1、2回しかされないから、返事が来るまでに凄い時間が掛かるんですよね。タイミングが悪いと、そもそもこちらからの送信が次の日になるし、返信を受信するのはさらに次の日になったりするし。

船務長 先野1尉

「ほしのこえ」の世界だな。まあ、3、4日も待てば返事がやって来るだけ、だいぶマシかもしれん。

船務長 先野1尉

電子家庭通信の愉快なところは「艦内wifiが云々」と言われるところだな。いつぞやには某テレビ番組の自衛隊特集で「最近、海上自衛隊では人材難を解消するために艦内でwifiが使えるようになったそうです」なんて言われてたぞ。

水雷長 遠見1尉

wifiが使える……あ、そういうことですか。

船務長 先野1尉

IEEE 802.11系列の通信技術を、艦内で使えるようにしてやったって言ってるんだよぉ!良かったな!(インターネットに繋がっているとは言ってない)
例の、キミの後輩あたりなら泣いて喜ぶだろ。

水雷長 遠見1尉

欲しいのはインターネットに接続出来ている状態であって、その手段はwifiでもEthernetでも、なんでも良いんです……。

船務長 先野1尉

しかし、この「wifi」という言葉、いつの間にかインターネットへの接続サービスの事だと勘違いする輩が増えてきたのは問題だぞ。
前の群司令なんて、「COVID-19のせいで海賊対処行動艦艇では上陸できてないらしいが、艦内でwifi使えるようになったんだから、そんなに苦にはならんだろう」なんて公言してたからな。

水雷長 遠見1尉

うちの艦に乗ってこなくて、本当に良かった……。

船務長 先野1尉

ただ、この電子家庭通信の実情が理解されないのは、徐々に機能が強化されてきていることの裏返しでもある。
メッセンジャーアプリのような見た目でメールをやり取りできる機能が実装されたり、一部艦艇では、ほぼリアルタイムに送受信する実証実験が行われたとも聞く。
仕様が少しずつ変化しているために、共通認識が生まれにくいのだろう。

船務長 先野1尉

最近では、VOD用のアクセスポイントを流用することで、食堂などにしかなかったアクセスポイントが居住区にも拡充されるから、わざわざ食堂にまでスマートフォンを持っていかずとも、ベッドに寝っ転がったままメールできるようになるぞ。

用語解説

VOD

Video On Demandの略。システム内に記録された映像を、必要なときにネットワーク経由で配信させることで、DVDのような記録媒体の移動なしに再生する技術。

艦艇部隊では、「ラジオ・テレビ受信装置」の事を指す。各居住区のテレビに接続されており、事前に記録しておいた映像を任意のタイミングで再生する(VOD)ことが出来る。ただし、映像の品質はよろしくないようで、娯楽用途としての評判は必ずしも良くない。

Ⅴ 共通基盤
4 防衛力を支える要素
(1)人的基盤の強化
 2 艦艇の通信環境の改善(2億円)
 ●食堂等の共有区画においてのみ視聴することができるラジオ・テレビを、隊員個人の携帯電話からも視聴できるようにするため、艦艇に搭載されている「ラジオ・テレビ受信装置」(有線による配信のみ可能)を改修し、無線LAN環境を構築
 ●また、居住区画においても隊員個人の携帯電話からメールの送受信が可能となるよう、改修されたラジオ・テレビ受信装置と、隊員が家族と連絡を取るための装置(電子家庭通信装置)を接続。
 ●水上艦艇に加え潜水艦においても電子家庭通信装置を整備。

防衛力抜本的強化の進捗と予算-令和6年度予算の概要-
船務長 先野1尉

この考え方はなかなか面白いな。ま、取り扱っているメーカーが同一だから出てきた案なのだろうが。
「電子家庭通信」は、艦内で私物スマートフォンを使うことを前提にした初のサービスだっただけに、他の「スマホ事業」もこれに乗っかる形で実装を目指しているようだ。

海外寄港地でのインターネット接続はあるが……。

水雷長 遠見1尉

そういえば、同期から聞いたんですけど、最近の海外派遣艦艇は寄港地でwifiルーターを契約するようになったらしいですね。

船務長 先野1尉

ああ。そのようだな。これも厚生で予算が付いたらしい。
だが、水雷長も分かっているとは思うが、あんまり期待しない方が良いと思うぞ?

水雷長 遠見1尉

ええ。そうですねぇ……。

砲術士 嶋村3尉

何か問題があるんですか?

船務長 先野1尉

ここでいうwifiルーターは、さっきの電子家庭通信とは異なる、本当にインターネットに繋ぐための、いわゆる「ポケットwifi」というやつだ。
だがな、砲術士。これを使ってネットに繋ごうとしたら、キミはどうする?

砲術士 嶋村3尉

うーんと……。上甲板に出ますねぇ。

船務長 先野1尉

そのとおりだ。携帯電話にしても、ポケットwifiにしても、携帯電話の電波は艦内に入ってこないから、上甲板にでも行かないと通信は出来ない
だから、ポケットwifiを艦の開口部付近に置いておいて、スマートフォンを接続することになる。

水雷長 遠見1尉

つまり、居住区からはネット接続出来ないってことだよ。

船務長 先野1尉

そしてこの組織は何よりメンツを気にする。
寄港地では、上甲板でスマホをポチポチやるなんてことは許されんのがほとんど。触ってもいいが、外から見えないところでやれ、といわれるのが常だな。

水雷長 遠見1尉

艦の威容ってヤツ。そのためにどれだけの乗員が苦しんでいると思っているのか……!

海上自衛隊は、世界中の海軍の中でも「艦の威容」を特に気にする海軍として知られてきました。威容を保持するため、こまめに船体の錆を落として塗装し直し、出入港の際は上甲板に整列します。平成末期まで出入港時の服装も常装(=作業服ではない)が当たり前でした。こうした風習は乗員への負担が非常に大きく、曹士隊員や若年幹部からの評判はよくありません。ただ、「威容」というただの印象に過ぎないモノが、人々の認知に影響し、ひいては国家間の友好関係や抑止に影響しているのも事実。どのように負担軽減と威容保持のバランスをとるか、難しいところです。

船務長 先野1尉

これが練習艦「かしま」なら、割とどうでもなるもんだ。余分なスペースが結構あるからな。
だが、この「ひとなみ」を見てみろ。開口部付近で、外から見えない場所が一体どれだけある?

砲術士 嶋村3尉

ああ、確かに。ほとんど無いですね。

船務長 先野1尉

海外派遣ともなると、航空機を搭載しているのが常だから、格納庫とて使えない可能性が高い。そうなると、開口部に繋がっている廊室くらいしか、接続出来る場所は無い
そして、そこに数十人の乗員が殺到するんだ。

水雷長 遠見1尉

ただでさえ狭いのに、出入り口で押しくらまんじゅうですか……。
それに、そんなに多くの人が繋ごうとしたら、回線が保たないんじゃないですか?

船務長 先野1尉

ああ。派遣先の国によるところも大きいが、契約しているwifiルーターは最安値のプランで組まれているのが常だからな。
ルーター全体で一桁Mbpsしか速度が出ないことも珍しくないし、ちょっと使うとすぐに帯域制限が掛かるんだ。そんな細い通信回線を20~30人くらいで分け合うわけだからな。ハッキリ言って、ネットに繋がると思ったら大間違いだぞ。

水雷長 遠見1尉

惨たらしい……

船務長 先野1尉

この場合の最適解は、現地でSIMカードを買え、だな。
ここ数年はCOVID-19のおかげで上陸すらままならなかったようだが。

水雷長 遠見1尉

これ、難しいところなんですよね。停泊日数はせいぜい2~3日のことがほとんどだから、1か月使い放題のプランなんて買っても、ほとんどムダだし。
でも、ローミングすると結構高くつくし。


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Starlinkが変える個人通信

砲術士 嶋村3尉

話が最初に戻るんですけど、Starlinkが入ってくると、何がどう変わるんですか?

通信士 与那覇3尉

実際に装備されてる部隊に聞いてみないと使用感は分からないけど、大体想像は付くよ。

居住区や食堂にいながら通信できるように

通信士 与那覇3尉

まずは、上甲板や開口部付近まで行かずとも、つまり居住区や食堂で、インターネットに繋がるようになる。

通信士 与那覇3尉

これは、電子家庭通信やラジオ・テレビ受信装置に使用されてるルーターが、そのままStarlinkにも流用されると仮定した場合の話。
でも、艦内でスマートフォンを使える場所は限られているから、流用されなかったとしても、使える場所は大きく変わらないと思う。

砲術士 嶋村3尉

そっか……!もう立ちっぱなしでスマホいじらなくても良くなるんだ!

水雷長 遠見1尉

立ちっぱなしでネットサーフィンしてると、上腕二頭筋が筋肉痛になるんだよね。座ってネット出来るようになったらどんなにいいことか……

船務長 先野1尉

何より、酷暑の中、上甲板でやらなくて良くなるのは革命だな。
いくらネットのためとは言え、日の光を浴びれば灰になってしまう身なのでな。


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メール以外も利用可能に

通信士 与那覇3尉

現行の電子家庭通信ではテキストオンリーのメール送受信しか出来ないけど、Starlinkが導入されれば、ホテルなんかでwifiスポットに繋いだときと同じように、WebサイトやSNSを閲覧したり、ソーシャルゲームにログインしたり出来るようになるよ。

水雷長 遠見1尉

大事なのはココだよね!
テキストのやり取りはもちろんありがたいけど、普通にインターネットへ繋がるようにしてもらいたい!

船務長 先野1尉

出港するとソシャゲのイベントが2つくらい始まって終わってたりするからな。別に止めたわけでもないのにカムバックボーナスがもらえるぞ。

リアルタイム通信

通信士 与那覇3尉

そして、リアルタイムな通信が可能になる。
現行の電子家庭通信では、インマルサットなどの通信枠の限界から、1日に2回くらいしか送受信できないけれど、Starlinkが入ってくればそれも気にしなくて良くなる。
もちろん、Starlinにも通信量の制限はあるから無制限ではないけど。

砲術士 嶋村3尉

これってつまり、その場で相手の返信をもらうこともできるし、LINEの電話とかも出来るようになるってことだよね?そうなったらいいなぁ。


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入隊希望者 京井 未来

やあやあ、皆さん。何の話をされてるんですか?

船務長 先野1尉

キミがwifiの電波さえ入ってくれば満足して生きていけるって話だ。
そして当たり前のように入ってくるな。

入隊希望者 京井 未来

ええ、まあ否定はしませんね。

船務長 先野1尉

よし。キミは逸材だ。明日から任務行動艦艇へ行ってきなさい。
嫌というほどwifiの電波を浴びせてやるから。

まとめ

この記事では、海自艦艇でStarlinkによるインターネットサービスが使えるようになるというニュースを踏まえ、その背景や注意点について理解を得るため、次の内容を説明します。

第1回

  • Starlinkを使用したインターネット接続サービスが、艦艇乗員に提供されるようになる。
    • Starlinkは、低軌道での衛星コンステレーションにより、高速インターネット接続を可能にする。
    • 今後、艦内のルーターを介して、私物のスマートフォンからインターネットに接続できるようになる
  • 艦艇乗員の外界との通信の現状
    • INETや船舶電話が存在するが、業務目的での利用が原則
    • 航海中は「電子家庭通信」により、家族と電子メールをやり取り出来る
      • 私物のスマートフォンから艦内のwifiルーターを介して送受信可能
      • システム上は画像送受信の余地もあるが、現状はテキストのみで運用される。
      • 送受信は1日に1~2回程度、まとめて行われる
      • 同システムを利用して、ニュースをテキストのみで配信するサービスもある。
    • 海外派遣艦艇では、寄港地でwifiルーターを契約することがある。
      • 現地の携帯電話回線を使用する、いわゆる「ポケットwifi」をなるべく艦の開口部に近いところに設置する。
        • 居住区は艦の奥深くにあるため、居住区内から接続するのはほぼ不可能
        • 外から見えないながらも通信の繋がるところに乗員が殺到する。
      • 回線速度が遅い地域も多く、はその低速通信帯域を20~30人で共有するため、ほとんど使い物にならない
  • Starlinkが変える個人通信
    • 居住区や食堂にいながら通信できるようになる。
    • メール(テキスト)の送受信だけでなく、WebサイトやSNSの閲覧ソーシャルゲームへの接続もできるようになる。
    • リアルタイムに通信できるようになる。

第2回

  • プライベートなインターネット接続の必要性
    • 募集状況は年々悪化、中途退職者が激増艦艇部隊の充足率が激減
      • 原因の一つはインターネット接続できない不便さ
      • 航海日数の増加により個人通信できない時間が増加
    • 常時接続が前提の社会
      • オフラインでも使用できたアプリが、オフラインでは使用不能に。
      • ネット接続必須のサブスクリプションサービスが増加
    • 若年層のコミュニケーションもインターネット接続は前提条件
      • 繋がっていない人間は存在しないものとして扱われ、社会からの疎外感を感じる
  • 作戦・業務用途と厚生用途の優先順位
    • 当初、厚生用途が主とされてきたが、作戦・業務用途が主となった可能性あり。
    • 作戦・業務用途でも衛星通信は貧弱であり、Starlinkの活用により劇的に改善できる可能性がある。
    • インターネットを介さないようにしてきた作戦通信。急に導入できるか?

第3回

  • Starlink運用上の留意事項
    • 秘密保全上の問題
      • 乗員を介して艦の位置や行動予定が漏洩する恐れ。
      • 秘密保全のために自衛隊が執るべき処置
        • 重大なオペレーションの際は、通信を遮断する。
        • 秘密情報を伝達する相手を厳選する。
    • 運用の形態は未定?
      • 練習艦隊でのStarlink運用は調査研究として実施されている可能性あり。
      • 護衛艦での利用がどのような形で実現するかは運用ポリシーによる。
        • 使用できる端末やアプリが限定される可能性あり。
    • 通信の秘密」は守られるか?
      • 通信の秘密は憲法や法律で保障されており、インターネット通信も保護される。
      • ただし、犯罪捜査やその防止に必要な場合、通信内容に応じて遮断する行為も正当業務行為として認められることがある。
      • 送受信されるデータの検閲は、技術的には可能
        • 労力に見合わないため、実際に行われる可能性は低い。
        • 検閲される可能性を念頭に置いた自己防衛も必要
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