この記事では、海上自衛隊の業務内容に関して、次の内容を説明します。
- 海上自衛隊はヴィークルの運用をする組織であること。
- ヴィークルは大きく分けて「艦艇」と「航空機」の2種類であること。
- 「艦艇」は「水上艦艇」と「潜水艦」に大別できること。
- 「航空機」は「固定翼機」と「回転翼機」に大別できること。
- これらの分類は、ヴィークルの特性によるもので、作戦のやり方や人事管理にも反映されていること。
海上自衛隊の仕事は、乗り物を動かすこと!
ヴィークル中心の組織
海上自衛隊の仕事……具体的に、それも端的に説明するってのは、結構難しいんだけど。
「海を守る」ってのは目的だから、そのために何をしているか、一言で言うなら「乗り物を動かす」ことが海自の仕事かなぁ。
乗り物……?船とかですか?
そうそう。生身の人間は海の中では活動できないからね。船とか飛行機とか、何かしらの乗り物に乗って、初めて人は海に出られるんだ。
確かに。それもそうですね。
だから、海自は「ヴィークル(Vhiecle)」を一単位として部隊編成されているんだ。基地にいる補給部隊みたいに、ヴィークルの無い部隊もあるけど、それは敵と直接ぶつかり合わない部隊の場合だね。正面で戦闘する部隊は必ず何かしらのヴィークルを運用するから、海上自衛隊はヴィークル中心の組織と言えるんだ。
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【余談】「ヴィークル」≠「乗り物」?
話の腰を折るようで申し訳ないんですけど、なんで「ヴィークル」だけ英語なんです?
ああ、ごめんね。海上自衛隊では部隊が動かす艦とか航空機みたいな乗り物を「ヴィークル」と表すことが結構あるんだ。正直、なんかカッコつけてる感じがあるよね?
ただ、「部隊」って言うと基地にいる支援部隊なんかも指してしまうし、専門領域で使われる「アセット(Asset)」だと乗り物そのものを指すこともあれば、その乗り物を含む大きな部隊全体を指すこともあるし、逆にその乗り物が装備してるレーダーとかミサイルみたいなもっと細かいものを指す場合もあって、乗り物を指す言葉とは限らないんだよね。
え、「乗り物」で良いじゃないですか。
それだと一般名詞だから、本当に乗り物全般を指してしまうんだ。ここで言う「乗り物」は護衛艦とか哨戒機みたいな、部隊が海に出て作戦行動するために使う乗り物であって、人員移送のために使うバスとかトラックとかでは無いんだよね……。
そうなると、あえて外来語のヴィークルを使うことで、そういう特別な乗り物だけを指せるってワケ。
そういうもんですか。
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ヴィークルは「艦艇」と「航空機」
戦闘車両で戦う部隊は無い
話を戻すね。
さっき言った「ヴィークル」は「艦艇」と「航空機」に大別出来るんだ。
それは海で活動するため、でしたね?
でも、沿岸だったら車でも活動できるんじゃないですか?
それはもちろんそうなんだけど、海上自衛隊に車両を専門的に扱う部隊は無いんだ。
敢えて言うと、各基地の基地業務隊が持っている車両隊とか、車両科とか言われるセクションだね。でも、それは各部隊の人やモノの輸送をサポートするためのバスやトラックであって、いわゆる「戦闘車両」ではないんだ。
陸上から海に向かって攻撃することはないんですか?
もちろんあるんだけど、それは陸上自衛隊が担当しているよ。
彼らは地対艦誘導弾というミサイルランチャー付きの戦闘車両を持っていて、沿岸から敵艦艇を攻撃することが出来るんだ。
もともと、沿岸から対艦ミサイルで攻撃する時というのは、敵が上陸しようと日本の領土にかなり近づいている時、という前提があったんだ。だから、対艦攻撃はその後に続く敵上陸部隊との陸上戦闘の前哨戦になるから、陸自が地対艦誘導弾を持っているんだ。
最近は、このミサイルの射程を大幅に延伸する計画が出ているから、将来は使い方が変わるかもしれないけど、陸自には既にこういう装備を運用するノウハウがあるから、海自がわざわざ別に保有することは無いと思うよ。
なるほど。海自はあくまで海上での活動のために特化しているんですね。
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艦艇は「水上艦艇」と「潜水艦」
で、艦艇。
制度上、自衛艦は「警備艦」と「補助艦」に分類されるんだけど……
警備艦とか、機動艦艇っていう分類は、予算請求の時とかには使われているみたいだけど、実際の部隊ではまず使われてないね。
例えばだけど、「補助艦艇」に分類されている「補給艦」は「警備艦」じゃないから「練習艦」や「訓練支援艦」みたいに戦闘に参加しないか、というとそんなことは無い。むしろ、補給艦こそ敵から一番狙われるし、敵からの攻撃が予想されるようなところで護衛艦に補給をするだろうから、補給艦は紛れもなく戦闘艦艇の一種なんだよね。
という感じで、この分類はあくまで書類上の区分と思った方が良い。
そしたら、一番現実に即しているだろうと思う区分は、「水上艦艇」と「潜水艦」だね。
普通の船と、水の中の潜水艦ってことですか。
うん。全くもってそのとおり。
これは、機能上の分類でもそうなんだけど、人事から言ってもそんなにおかしくない分類なんだ。
護衛艦に乗っている隊員も、人事異動の時に輸送艦や補給艦へ行くことは珍しいことではないし。
一方で、水上艦艇の人が潜水艦に行くことはまず無いし、その逆もしかり。例外は潜水艦救難艦くらいかな。潜水艦の人が行く水上艦は。
水上艦艇の人が潜水艦に行かないのは何か理由があるんですか?
潜水艦に乗るのには、肉体的な適性も必要になるし、特殊な訓練も受けないといけないからだね。それに、作戦のやり方も水上艦艇と潜水艦では全く違うから、人を行き来させても、それほど大きなメリットが無いってのもあるね。
作戦のやり方が違うんですか。
そう。詳しくは別の機会に教えてあげるけど、潜水艦の戦い方は水上艦艇と全く違うんだ。
潜水艦は、水中に潜ることで極めて高いステルス性を獲得するからね。敵に見つからずに忍び寄って、一撃で敵を沈めるような戦い方が出来るんだ。反面、通信手段にかなり大きな制約があるから、複数隻で行動する水上艦艇と違って単独での行動にならざるを得ないところがあるよ。
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航空機は「固定翼機」と「回転翼機」
続いて、航空機の話だよ。
航空機は「固定翼機」と「回転翼機」に分類されるんだ。
回転翼ってのは、揚力を生み出す翼が回転している、つまりヘリコプターのことを指していて、翼が固定されている固定翼はいわゆる普通の飛行機のことを指すよ。
海上自衛隊Webサイトから転載。
なるほど、これもなんとなく分かります。
パイロットとか整備員は別々に管理されているって話ですね。
ご明察。構造も操縦の特性も全く違うからね。
で、海上自衛隊の場合、潜水艦の捜索が一番大きな目的なんだ。色んな機種を持っているとは言っても、そのほとんどはP-3C/P-1哨戒機、あるいはSH-60J/K哨戒ヘリコプターという、潜水艦の捜索能力に優れた航空機なんだ。
空から潜水艦を探すんですか。
そう。潜水艦を捜索する上で、水上艦艇は必ずしもベストな手段とは言えないんだけど、航空機はその弱点を補ってくれるんだ。
固定翼と回転翼にもそれぞれ利点と欠点があって、そこから作戦のやり方に大きな違いが生まれるんだけど。その話は、また今度にしようかな。
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まとめ
それじゃあ、いったんまとめるね。
まず、海上自衛隊はヴィークル中心の組織だということ。
海で活動するために、船や飛行機のような乗り物が部隊編成の単位になるって話でしたね。
そう。ヴィークルを持ってない部隊も多いけど、それらは訓練指導とか、インテリジェンスとか、基地機能の提供とか、何かしらの形でヴィークルを持っている部隊の支援をするために存在しているよ。
そして、海上自衛隊のヴィークルは「艦艇」と「航空機」に大別されて、その中で「水上艦艇」と「潜水艦」、「固定翼機」と「回転翼機」に分類されるんだ。
それぞれ、乗り物の特性が違うから、作戦のやり方も違ってて、人事管理も分かれているって話でしたね。
そのとおり!ぼーっとしているかと思ったけど、よく聴いているね!
ご褒美にケーキを追加しちゃおう!
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