この記事では国家公務員宿舎について、次の内容を説明します。
第1回
- 国家公務員宿舎の概要
- 国家公務員宿舎の目的
- 業務の円滑化のためであり、福利厚生としての住宅支援目的ではないとされる。
- 種類
- 国設宿舎/一般借受宿舎/特借宿舎
- 省庁別宿舎/合同宿舎
- 部屋の規格と貸与基準
- 床面積に応じ、a~e規格に分類
- 実際に運用されているのはa~c規格
- 階級により貸与可能な規格(≒広さ)が異なる。
- 海曹も利用可能だが、要件に合致しないことがほとんど。
- 床面積に応じ、a~e規格に分類
- 無料宿舎とは
- 緊急参集要員などは、無料で官舎を借りることができる。
- ただし、行動範囲に著しい制約を受ける。
- 緊急参集要員などは、無料で官舎を借りることができる。
- 入居方法
- 管理は基地管理部隊の厚生課が担当
- 宿舎係と下調整の上、入居届を提出
- 国家公務員宿舎の目的
- 沿革
- 宿舎設置の世代
- ボリュームゾーンは1980年代以前に建設された「階段室型」
- 2000年代以降に建設された少数の官舎は、一般的マンションに似た間取り
- 国家公務員宿舎削減計画
- 2010年代、国民の批判により官舎は半数以上が廃止に追い込まれた。
- 入居要件の厳格化
- 無料宿舎の拡大と入居率の低迷
- 2010年代後半、艦艇の科長など部隊の主要幹部が無料官舎の対象に
- 老朽化等を原因とする入居率の低迷により、却って官舎存続の危機に
- 魅力化
- 2020年代の防衛予算増額により、リフォーム等が活発に
- 宿舎設置の世代
第2回
- 入居のメリット/デメリット
- 入居時の知恵
- 【意見】官舎のあるべき姿
某日 「ひとなみ」士官室

艦長 上野2佐水雷長、ちょっと話がある。艦長室まで来てくれ。



はい、行きます。
10分後



お、戻ってきた。どうしたんだい?



それが……、今回の定期人事で転出させる調整が来てるから、準備しておけって。まだどの艦にするか決まってないけど、次は航海長になるみたい。



えっ、次は中級水雷じゃないの?
幹部中級課程
海上自衛隊における幹部自衛官の術科教育の1つ。
射撃、水雷、掃海、船務、航海、機関、経補、潜水艦、航空用兵、情報戦、航空装備、艦船装備など、特技職ごとに課程が分かれており、課程により開始時期や場所、期間などが異なる。
一部の時期は「共通期間」と呼ばれる。たとえば2術校の中級機関課程学生が1術校に移動するなどして、複数の課程が一堂に会し、合同で作戦要務や戦術図演の座学や実習に参加する。
A幹にとっては最終要員区分の決定時期でもある。中級課程修業に際し、特技職が変更(例:艦艇幹部→艦艇用兵幹部・射撃幹部)されることで、今後の方向性が定まり、上級の配置に就けるようになる。また中級課程の成績は、幹部候補生学校の成績により定まった幹部名簿序列(通称:ハンモックナンバー)に大きな影響を与えると言われている。
幹部候補生学校以来、あまり会うことの無かった同期と再会するチャンスであり、半年~1年程度プライベートにリソースを割けるチャンスであり、そして今後の自衛官人生を大きく左右する、とA幹にとって最大のイベントになる。



艦長も中級を強くプッシュしてくれたみたいなんだけど、海幕補任班からは、「航海長もやってないのに中級には行かせられない」「嫌なら辞めてもらって結構」って言われたみたい。



なんだよ、それ……!
だいたい、最近は航海長やらずに中級行ってるヤツなんて、いくらでもいるじゃないか!



はぁ……。ボクはいっつもこんなのばっかり。
次回の中級を逃すと、いよいよ同期はほとんどいなくなっちゃうなぁ。もう皆とは会えないか……。



……。



……まぁ、色々考えてもしょうがないよね。
引き継ぎの準備とか、引っ越しの準備とか、色々やらないと。



……うん。もう大丈夫。



そういえば、航海長になったら官舎に入ることになるんだっけ?



ああ。官舎は初めてだっけ?



うん、これまでは普通のアパートとかを借りてたから。
官舎って、どんなところなんだろ?
国家公務員宿舎の概要
住宅支援……ではない?



官舎とは俗称で、正式な名前を「国家公務員宿舎」と言う。
課業時間外の国家公務員に、床と壁と天井を提供する空間のことだ。



あ、ハイ……。



何言ってるんだ、コイツ?という顔だな。だが、官舎がなんのために存在しているのかを理解しないことには、官舎を理解出来ないのだよ。



法律には次のようにある。
(目的)
国家公務員宿舎法
第一条 この法律は、国が国家公務員等に貸与する宿舎の設置並びに維持及び管理に関する基本的事項を定めてその適正化を図ることにより、国家公務員等の職務の能率的な遂行を確保し、もつて国等の事務及び事業の円滑な運営に資することを目的とする。



これって、宿舎の目的、じゃなくて法律の目的ですよね。



そのとおり。だが、これ以外に宿舎自体を何故設置するのか、明確に書かれたものはないのだよ。敢えて言えば「宿舎」という言葉の定義だな。
(定義)
国家公務員宿舎法
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~二 省略
三 宿舎 職員及び主としてその収入により生計を維持する者を居住させるため国が設置する居住用の家屋及び家屋の部分並びにこれらに附帯する工作物その他の施設(共同浴場、簡易な児童遊園その他政令で定める共同施設を含む。)をいい、これらの用に供する土地を含むものとする。



職員を住まわせるための家屋……。



そう。職員が住むために家を作る。それがアレコレ作用すると職務が効率的に遂行される、というのが国家公務員宿舎。そこまでは誰もが異論無かろう。だが、その「アレコレ作用」とは何を意味するのか。



職員がホームレスになって落命せずに済むから業務が回るのか。
通勤時間が短縮できるから長く働かせられるようになるのか。
はたまた、職員が勤務意欲が向上して離職率が低下するのか。
この辺りの認識が統一されていなくてな。時代や立場によって、捉え方がマチマチなのだ。



つまり……、福利厚生的な性質を持っているか、曖昧ってことですか。



早い話がそういうことだ。どういう目的で設置されているかで、職員への貸し方も、設備のメンテナンスも、入居者の管理も、何もかもが変わる。その軸が明確に規定されていない故に、国家公務員宿舎というものは常に揺らぎ続けているのだ。



とは言え、これを責めるのも酷と言える。そもそも宿舎設置最盛期の1950~1970年代は、主に都市部で未曾有の住宅難が発生していた時代だ。住宅建設に理由など不要で、目的だ何だと考えている暇があったら、役人を格納しておくウサギ小屋を一刻も早く作らないと話にならなかっただろう。



武蔵野から多摩にかけて、野山も田畑も、みんな家に化けた時代ですもんね。



こうした時代に生まれたと思われる逸話として、経理員が参照するQ&A資料には「公務員宿舎に、同僚と同室に入居することを指示された職員に対し、単身赴任手当を支給してよいか」という項目があるくらいだ。



えぇ……。ということは、かつてそういう問題で頭を抱えた人がいたってことですよね。



まさしく。他に住める場所もなく、知らんおっさんと一つ屋根の下で愛の巣を作らされたおっさんがいたのだ。それに比べれば、今どきの官舎の悩みなど微々たるものだろう。もっとも、私は許さんが。



話を官舎の捉え方に戻すと、ここ20年主流の考え方は「勤務時間と勤務時間の間に過ごす待機所」だな。無論、公務員として働くインセンティブになることは否定しないが、100%福利厚生の住宅支援だと思ったら大間違いだ。官舎に入居するときは、そのくらいの認識は持っておいた方がいいぞ。
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国家公務員宿舎の種類



入居の仕方や入居時の注意点の前に、宿舎の仕組みについて教えておこう。まずは分類だ。
建設予算による分類



代表的な分類は、建設に使用した予算による分類だ。
- 国設宿舎
- 国の予算で建設
- 一般借受宿舎
- 既設の建物(主に民有)を国が借り受け
- 特別借受宿舎
- 国家公務員共済組合連合会(KKR)の資金により建設し、国が借り受け



国設宿舎っていうのが、普通の官舎なんですかね?



ああ。特に断りなく「●●宿舎」と書かれている場合は国設宿舎だと思って良い。



次の一般借受宿舎。民間人が建てたごく普通のマンション・アパートの部屋を、国が借りる方式のものだ。というわけで、私も実物は見たことないが、外観からは全く官舎に見えないらしい。



どうして、わざわざ民間から借りてくるんですか?



何らかの理由で国設宿舎を作れない……つまり、住まわせるべき職員は確実に存在しているが、適切な用地がないとか、新しい宿舎をわざわざ建てるほどの人数ではないとか、そういった事情があるからだそうな。



国が建てる建物には期待してないので、どんどん増やしてもらいたいものだ。が、以前宿舎業務を担当していた者から訊いたところによれば、一般借受宿舎は職員が入居していなくても、大家に家賃を払い続けなければならない。故に正当化が難しく、設置・維持は困難を極めるそうな。



確かに、それで空き家だったらもったいないですもんね。



そして最後、特別借受宿舎、略して特借宿舎だ。これは全省庁の中でも、防衛省にしか存在しない特別な制度だ。



国家公務員共済組合連合会って……あのKKRメンバーズカードのKKRですよね?
国家公務員共済組合連合会(KKR)
国家公務員の年金・福祉事業について、共同で実施するのが適当な業務を行うために設置された、国家公務員共済組合20団体(防衛省共済組合など)が加入する組織。年金の資金運用のほか、医療施設や保養・宿泊施設の経営などを行っている。
「KKRメンバーズカード」は加盟する国家公務員共済組合の組合員(≒国家公務員)が作成可能なKKR会員証兼クレジットカードであり、提示することでKKRホテルを割引利用できたり、空港のラウンジ利用・海外旅行保険などゴールドカード相当の付帯サービスを受けられたりする。



ああ、そのKKRだ。色々回りくどく書いているが……要するに、宿舎の需要はあったが建設予算が付かなかったから、KKRから借り入れて分割返済している、そういうことだ。



えぇ……、それって民間企業に例えると、社宅を建てるお金が無いから、社員から借金して建てたってことですよね。



このあたりで、だいたい公務員宿舎というものがどういう位置づけなのか、概ね察しが付くだろ。



国がKKRに借金を返済し終えると、その官舎は名実ともに国設宿舎扱いになり、名前も特借宿舎ではなくなる。数年前まで各地に「●号棟だけ名前に『特借』が付いてる」という官舎が多かったのは、最後に残った特借を見ていたためだ。
で、令和5年に防衛省は残債を完済したので、俗称はともかく、今や正式に特借宿舎と呼ばれる官舎は残ってないようだな。



ちなみに、特借宿舎と名前が付いてはいるが、建物としての仕様は国設宿舎と何も変わらん。KKRは金を出してるだけだからな。私も江田島では特借宿舎に住んでいたが、普通のボロい官舎だ。
ちなみに、船務長が述べるように「特別借受宿舎は防衛省にしか存在しない制度」と認識している自衛官が結構多いようですが、実は他省庁も特借宿舎を持っていました。
もともと、特借宿舎は公務員の住宅難を解決するため、大蔵省が国家公務員共済組合連合会から資金提供を受ける形で始まり、他省庁が追随しました。その後の政府の政策変更(持ち家重視)により昭和47年度をもってほとんどは建設終了したのですが、防衛庁と(少数ながら)林野庁のみが建設を継続しました。
防衛省以外の特借宿舎は平成中盤、遅いものでも平成末期には債務償還を完了(国設宿舎化)したため、防衛省のみ最近まで残っていた、というのが正しい認識になります。
【豆知識】
今や現存しない特借宿舎(建物自体は物理的に残ってますが……)について、KKRが唯一事業継続しているのが、実は郵政省所管宿舎の土地部分。通常の特借宿舎は土地自体は国が提供し、KKRが建物を負担したのですが、郵政省の特借宿舎だけは土地もKKRが所有していました。郵政事業民営化に際し、建物部分は買い取りされたものの、土地のみ投資用不動産としてKKRが所有を継続しています。
管轄省庁による分類



続いて、もう一つの分類は所管する省庁の違いだ。
- 省庁別宿舎
- 各省庁が、所属する職員のみを入居させるために設置する宿舎
- 合同宿舎
- 複数省庁の職員を入居させるため、財務省が設置する宿舎



この合同宿舎ってのだと、防衛省以外の人も入居しているってことですね。



そういうことだ。
防衛省は大所帯なので、自前で宿舎を持っていることが多い。各基地の周辺ではあまり出くわさないが、東京地区で勤務すると世話になることがあるかもしれん。



ふーん、他省の人が住んでる以外に、何か違うんですかね?



私が前の艦で入居してたのは合同宿舎でしたよ。入退去の申請のやり方や、家賃の支払いのやり方が若干普通の官舎と違いましたね。経理員もあんまり慣れてなかったので、大変そうでした。



あと、自衛隊の官舎だと、自衛隊の官舎独特の慣習が通じるんですけど、合同宿舎だとそういうのが通じないのも大変でしたね。発令日の前日に入居したいと言ったら怒られたりしました。



あー、そういうのはちょっと面倒ですね……。



建物のつくりは、防衛省の官舎も合同宿舎も、ほとんど変わらないです。建設の基準が同じなんじゃないですかね?
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部屋の規格と貸与基準



部屋の広さはどうなんです?やっぱり狭いんですかね?



いや、必ずしもそういうわけではないぞ。
部屋には規格が決められていて、満たした要件に応じて借りられる部屋が変わるのだ。
| 規格 | 延べ面積 | 貸与基準 |
|---|---|---|
| a | ~25㎡ | なし(独身・単身者) |
| b | 25~55㎡ | 行(一)2級相当 3尉(~68号俸) 准尉(~104号俸) 曹長(~104号俸) 1曹・2曹 幹部候補生 |
| c | 55~70㎡ | 行(一)3級~5級相当 3佐~2尉 3尉(69号俸~) 准尉(105号俸~) 曹長(105号俸~) |
| d | 70~80㎡ | 行(一)6級~8級相当 1佐(二・三) 2佐 |
| e | 80㎡~ | 指定職 行(一)6級~9級相当 1佐(一) |
(国家公務員宿舎法施行規則及び防衛省所管旅費取扱規則による。)



a規格はワンルーム/1K、b規格は1DK~2DK、c規格は3DK~3LDKと覚えておくと良いだろう。



ボクが借りるとしたら、c規格以下になるんですね。



ああ。ただ、ここに書いてあるのはあくまで規則上貸与出来る基準であって、実際に貸与出来るかどうかは、その時の宿舎の空き状況による。



たとえ1尉3佐であっても、b規格しか貸与出来ないことはしばしばあるから注意が必要だ。独身者・単身者の場合は顕著だな。



そして、規則上はd規格やe規格が設けられているものの、実際にはもうほとんど残っていないし、新設も認められていない。地方総監公邸のような例外を除けば、将官になってもc規格に入居するのがほとんどだ。



偉くなっても、部屋が広くなるわけじゃないんですね……。



そういえば、海曹の人は入居出来るものなんですか?



海曹だから入居出来ない……ということはない。ただ、ここに書いた基準とは別に、入居資格のガイドラインが定められている。海曹でこれに合致することは少なく、必然的に官舎は幹部ばかりになる。
1 職務上宿舎への入居が認められる公務員の類型の意義
国家公務員宿舎に入居が認められる公務員の類型は、以下の5類型とする。
職務上宿舎への入居が認められる公務員の類型と各類型に該当する戸数の根拠
- 離島、山間へき地に勤務する職員
- 頻度高く転居を伴う転勤等をしなくてはならない職員
- 居住場所が官署の近接地に制限されている職員
- 災害、テロ、経済危機、武力攻撃等を含め、政府の迅速な対応が求められる事件・事故等が発生した際、各府省が定める業務継続計画(BCP)等に基づき緊急参集する必要がある職員
- 国会対応、法案作成及び予算等の業務に従事し、深夜・早朝における勤務を強いられる本府省職員



幹部で合致するのは……転勤が多い職員や居住場所の制限ですか。



そうだ。ほとんどの幹部は頻繁に転勤するし、それこそ航海長ともなれば緊急参集要員としての制約を受ける。ほとんどの幹部自衛官は入居要件を満たすのだ。一方で、海曹は頻繁に転勤があるわけでは無いからな。



海曹でも、教官配置などで転勤をするケースは無いわけではないので、認められることがある。ただ、単身赴任となった場合、海曹には営内居住になるという選択肢がある。営内なら食事も出るし、そういった配置はせいぜい2、3年もすると元の地域に戻るものだから、わざわざ手間を掛けて新居を構えようとはしない海曹も多いな。



あれ?そういえば、隊舎と官舎って違うんですか?



ああ、それは明確に違う。隊舎には営内居住として入居するが、公務員宿舎は営外居住だ。



例えば、幹部が1術校で学生になるため江田島に住む場合を考えよう。
2術校に在籍しながら、共通期間の教育を受けるため一時的に江田島にやって来る中級機関課程の学生は、校内の幹部隊舎に営内居住……というか部内泊することになる。この場合は食事も出る。
一方で、1術校付の発令を受け、年間を通して江田島に住むことになる中級船務の学生は、鷲部や大原の国家公務員宿舎に営外居住することになる。もちろん、部外のアパートなどでもOKだ。この場合、食事は出ないので、自前で用意しなければならない。



短期的に住むっていうのは、出張みたいな扱いなんですね。



ちなみに、1術校にはa規格の独身・単身寮がある。営外居住なので、学校の柵の中に居を構えることになるが、パソコンの持ち込みも、飲酒も、制限されることはない。



へぇ。不思議な感じがしますね。



話を戻すと、海曹では官舎への入居を認められないことがほとんどだが、いずれにも例外はある。その代表例が管理人として働く事だ。
宿舎に専従管理人を設けるには、戸数などの条件を満たす必要があり、余程の規模でなければ認められない。入居者が管理業務を押しつけられることがほとんどだが、幹部は多忙に加え頻繁に入れ替わるので管理業務が円滑に行われない。そこで、管理人として働く事を条件に宿舎への入居が認められる……というケースがいくつかある。
(管理人)
国家公務員宿舎法施行規則
第二十七条 各省各庁の長は、宿舎の貸与を受けた職員のうちから管理人を選任して、宿舎の維持及び管理に関する業務を行なわせることができる。
2 各省各庁の長は、おおむね二百戸以上の宿舎をとりまとめて宿舎の維持及び管理に関する業務を行なわせるため、予算の範囲内で管理人を置くことができる。
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無料宿舎



そういえば、航海長だと官舎に無料で住めるって聞いたんですけど、本当ですか?



ああ。本当だ。
(無料宿舎)
国家公務員宿舎法
第十二条 無料宿舎は、次に掲げる職員のうち政令で定める者のために予算の範囲内で設置し、無料で貸与する。
一 本来の職務に伴つて、通常の勤務時間外において、生命若しくは財産を保護するための非常勤務、通信施設に関連する非常勤務又はこれらと類似の性質を有する勤務に従事するためその勤務する官署の構内又はこれに近接する場所に居住しなければならない者
二~四 省略
(無料宿舎を貸与する者の範囲)
国家公務員宿舎法施行令
第九条 法第十二条第一項に規定する政令で定める者は、次に掲げる者として各省各庁の長が財務大臣に協議して指定する者とする。
一 次に掲げる官署に勤務する職員のうち、本来の職務に伴つて、通常の勤務時間外において、国民の生命又は財産を保護するための非常勤務に従事するために当該官署の構内又はこれに近接する場所(中略)に居住する必要がある者
イ 警察官署
ロ 刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院及び少年鑑別所並びに入国者収容所及び地方出入国在留管理局
ハ 国立の病院、療養所、児童自立支援施設及び障害児入所施設
ニ 海上保安官署
ホ 自衛隊
ヘ 独立行政法人の開設する病院
二~四 省略



いわゆる「緊急参集要員」というヤツだ。部隊が部隊として機能するため最低限必要な人員は、他の職員よりも居住場所の制約が大きいということで、官舎が無料で貸与される。



無料になる対象は、部隊指揮官、つまり群司令に隊司令に艦長。そして、主要なスタッフ……つまり、群司令部の幕僚や自衛艦の科長などだ。航空部隊だと幹部搭乗員などが指定されている。



ありがたいことですね。



ありがたいと言えばありがたい……
が、世の中、そんなに上手い話ばかりでもないぞ。緊急参集要員、つまり無料宿舎の対象者には行動の制約が課せられるということだ。
(無料宿舎の貸与の条件)
無料宿舎の運用について(通知)(防人厚第1744号。26.2.19)
2 無料宿舎を貸与された隊員は、その勤務する官署に近接(おおむね2キロメートル以内に所在)する無料宿舎に居住し、当該官署への緊急参集を命ぜられた場合には、おおむね30分以内を目途として、直ちに参集しなければならない。



そういえば、そんな決まりがありましたね。しかし、よく考えてみたら呉なんて、30分以内に係船堀まで行こうと思ったら、呉駅前すら厳しいですよ?艦長はゆめタウンにすら行っちゃいけないって話になりかねませんね……。



一応、勤務する官署に出頭出来れば良い、ということで必ずしも自分の働く部隊自体に辿り着けなくとも、同じ地域……つまり総監部や教育隊の敷地に到達出来ればセーフ、という体裁にはなっているようだ。



実際、横須賀などは惨憺たるものでな。無料宿舎として追浜・金沢八景間にある室ノ木宿舎があてがわれているものの、あの立地ではどう考えても逸見岸壁に30分以内に辿り着くことは出来ないのだ。これも、一応とてつもなく急げば、船越地区の北端には到達出来るからOKらしい。



このルールだったら、官舎の貸与を受けなければセーフになりませんか?



その抜け穴は当然埋められている。緊急参集要員は無料宿舎を借りるか、同等の場所に居住しなければならず、結局緊急参集の義務が生じることは何も変わらん。



もちろん、在任期間中、絶対に30分圏外へ出てはいけない、などというものではない。が、通常の隊員に比べ多くの制約があるのは事実だ。無料宿舎とは、そうした制約に対するせめてもの穴埋めなのだよ。
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入居の手続き



だいたい分かりました。ところで、入居するときにはどうしたらいいんですか?



宿舎を管理している部隊に問い合わせをするんだ。
各総監部地区では、艦隊基地隊(旧:基地業務隊)の厚生課だな。東京地区なら東京業務隊、江田島なら1術校という具合に、基地の管理部隊の厚生課を調べるんだ。だいたいそこに「宿舎係」というポストがある。



部内向けの宿舎係サイトを見れば、大抵は宿舎の名前や間取りなどのリストが手に入る。それを見て、希望する宿舎を決めて、宿舎係に電話で調整するんだ。
近年は、人事・給与システム上でも手続きをする必要があるが、まだそれだけで完結するような状態には至っていない。



なるほど。ボクの場合、まだ行き先が決まらないから、今の時点では決められないですね。



とは言え、護衛艦には決まっているのだろう?地域は5つに絞られるから、今のうちに調べておくと良い。



部屋の希望なんかは言えるんですか?



その時の空き状況や、宿舎担当者による……としか言えんな。
一部の地域では「●●航海長は代々、●号棟の●●●号室と決まっているんです!」なんてことを言う担当者がいるとも聞く。無料宿舎の指定手続きが煩雑らしく、極力場所を変えたくないそうな。



各担当部隊のサイトに行けば分かるが、どこもかしこもデカデカと「官舎は福利厚生施設ではありません!」と掲示している。要するに、各職員のワガママに付き合う気はない、ということだ。
言うだけ言うのはアリだが、聞いてもらえなくても、いちいち腹を立てないことだな。



あれ?厚生課が所管してるのに、福利厚生施設じゃないんですか?
それにしても、ちょっと感じ悪いですね。



仕方ない。それこそ冒頭に述べた、目的が曖昧というヤツだ。
住む我々からしてみれば、日々の住まいのことなのだから、生活水準の向上を図りたいと考えるのは当然の事だ。



しかし、貸す彼らからしてみれば、そうやって隊員の生活水準を向上させることなど法律には書いてないし、そのための予算も人も付いてはいない。そんなことをしてやる責任などない、というのが本音だろう。



だから言っただろ。官舎とは、課業時間外の国家公務員に、床と壁と天井を提供する空間だと。少なくとも、生命活動を維持するために必要なものは手に入る。それ以上は求めても仕方ない。それくらいのつもりでいた方が、余計なもめ事を起こさずに済むぞ。



なんとも世知辛い……
沿革



ついでだ。官舎というものがどう運用されてきたかについても、私の知るところを教えておこう。
宿舎設置の世代



まずは世代分けだ。現在、海上自衛隊で使われている官舎は、設置された時期がある程度固まっている。つまり、世代があるということだ。



これを知っておくと何が良いか。建築年を見れば、図面を見ずともある程度内部構造や設備を類推出来るようになるのだ。何しろ、官舎は整備計画局が定めた基準に基づき建築されているからな。建設時期が同じであれば、必然的に似通ったものになる。部屋選びの役に立つだろ?



それは良いですね。
1960年代から80年代



まずは、1960年代から70年代、そこから若干数だが80年代に建築されたもの。



築年数50年を軽く超えてますね……。



ああ。竣工年に起きた出来事を調べると、あさま山荘事件だの、ニクソン訪中だの、教科書で読んだ出来事が次々出てくる。最早、歴史だな。だが、官舎の世界では一番のボリュームゾーンだ。
次の艦ではもう少し新しいところに入居出来るかもしれんが、中級で江田島に行けば、鷲部にしても大原にしても、この世代のお世話になるぞ。



この世代の特徴は
①「階段室」型の間取り
②風呂・トイレは窓付き・換気扇なし
③寝室は和室(から改装された洋室)だ。



一つ目の「階段室」型間取りというのは、いわゆる「団地」スタイルだ。今どきのマンションは、横1本に伸びた共用廊下に玄関が多数並んだスタイル(外廊下型)をとるが、古い公営住宅は1階につき2部屋がひとつの階段を共有する構造をとっている。これが「階段室」型というヤツだ。



そういえば……小学校の時、団地に住んでる子の家に遊びに行ったらそんな感じでしたね。







階段室型の特徴として、宿舎内のコミュニティの最小単位が「階段」になることが挙げられる。外廊下型の場合、同じ階の住人と何かと会うことが多いが、階段室型の場合、向かい合った部屋の住人とはよく会っても、その反対側の部屋の住人と話すことはあまりない。回覧板も、隣の部屋ではなく上/下の部屋に渡すことになるしな。



そのため、「●階の入居者」ではなく、「●棟1階段、2階段……」といった管理を受ける。



なるほど……。



それから、階段室型のレイアウトは、南北両面が廊下ではなく外に接しているおかげで、プライバシーを確保しやすく、通風も採りやすいとも言われている。



お、それは良いですね。



……と思うかね?
ところが、南北両面に大きな窓が設けられているので、ここからの熱の出入りがかなり大きい。「夏暑く冬寒い」の原因だ。



あっ……



そして、ベランダのある南側の部屋にはエアコン室外機を設置する場所を確保出来るが、反対側の北側には室外機設置スペースが無い。この寝室は無空調状態で生活しなければならない。



そうか、外廊下型のマンションだと共用廊下に室外機置けるけど、それが出来ないんですね。



昔はそれでも良かったのかもしれんが、エアコン無しでは命に関わる昨今では、このレイアウトは致命的だと言える。



続いて、風呂・トイレだ。たいていの場合、窓が付いていて、代わりに換気扇が無い。



それは……アレですか。窓を開けて換気しろってことですかね。



そういうことだ。いずれにしても結露とカビの原因になるため、最近の集合住宅では採られなくなったレイアウトだ。



そしてもう一つ、風呂について言うと、建設当初、バランス釜が導入されていたということだ。



噂には聞いたことがあるんですけど……「あの」バランス釜ですか?



ああ、「あの」バランス釜だ。
バランス釜


風呂の給湯設備の一種。公務員宿舎の代名詞。
近年の一般的な給湯設備は屋外に燃焼器を設け、風呂や台所などに給湯するが、バランス釜では浴槽の隣に箱形の燃焼器を設置し、屋内で燃焼させることにより風呂に直接給湯する。
構造上、浴槽の大きさを圧迫するとともに、独特の操作手順に習熟する必要がある。それらのデメリットと、「バランス釜が設置されているような老朽化した浴場」へのマイナスイメージが相まって、公務員宿舎の代表的な負の要素として名が挙がる。



とは言え、さすがに近年はバランス釜がそのままになっている宿舎も、ほとんど無くなってきた。リフォームを経て、代替設備として壁貫通型給湯器が設置されていることが多いな。


壁に見える「銀色の箱」は貫通型給湯器。



壁から銀色の箱が飛び出ているだろう?これが給湯器だ。湯の蛇口を捻れば勝手に起動して給湯してくれる。使い勝手は一般的な集合住宅のものとさして変わらんから安心しろ。



なるほど、この銀色の箱が壁から生えているところは、少なくともバランス釜ではないってことですね。



そのとおりだ。念のため言っておくと、もっと新しい、ベランダに設置するタイプの給湯器に換装された宿舎には、そういうものが見えない。だから、壁から銀箱が生えてないからといってバランス釜だと決めつけるのは早計だぞ。



それから、どこまで給湯されているかは、宿舎次第だから注意した方が良い。給湯されるのは風呂だけで、台所は別途給湯器を自前で設置しなければならない宿舎もある。


画像の場合、風呂から敷設された塩ビ管で給湯されている。
が、給湯されていなかった時代の名残として、給湯器を設置するためのベニヤ架台が残っている。



えぇ……



最後に、寝室は和室という話だ。



やっぱり、時代なんですかね?



ああ。今のようにベッドを部屋に置くこともなかった時代、床に布団を敷くなら、確かに畳の方が都合が良かったのだろう。
ただ、フローリングに比べると傷みやすく、頻繁な交換が必要になることから、あまり好まれていないのが実情だな。



築50年超の住宅と言っても、50年前のものがそのまま残っている訳ではなく、10年か20年に1回くらいは大きなメンテナンスが入っている。
その時にフローリングへの改装工事が行われ、和室は1部屋だけ、という宿舎がほとんどだな。



細かいところで言うと、元和室の部屋には、壁に電灯のスイッチが付いていない。シーリングライトを設置した場合、リモコンなり本体の直接操作なりON/OFFしなければならないな。



やっぱり、今どきのマンションとは全然違いますね。



今言ったとおり、この世代の宿舎は過去数回にわたって改装工事が入っている。単なる築年数より、どのようなリフォームが入ったかによって部屋の内部が大きく変わっているのが、この世代の特徴だ。



天井が未だに砂天井のところもあれば、石膏ボード化されているところもある。洗濯機をベランダに置かなければならないところもあれば、浴室の外に防水パンが設置されているところもある(蛇口が繋がるとは言ってない)。風呂の床がコンクリートタイルのところもあれば、現代的な水切れの良いプラスチック板のところもある。台所に独立した給湯器を設置しなければならないところもあれば、風呂の給湯器から給湯されるところもある。本当に千差万別だ。



これって、事前に知ることは出来ないんでしょうか……。



難しいな。少なくとも、データ上はどれも古い宿舎としてしか認識できないからな。このあたりは、経験者に聞くのが手っ取り早い。
あるいは、ダメ元で宿舎係に聞いてみるのもアリだ。彼らも彼らで、入居率を向上させないといけない手前、最近リフォームされた宿舎を売り込んでくる傾向がある。選り好みするなと言われるかもしれんがね。



なるほど……。
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1990年代から2000年初頭



続いては、1990年代から2000年代初頭にかけて建設されたものだ。あまり多くはないが、各基地周辺に数棟あるくらいだ。私が以前住んでいた、久里浜第2宿舎の7号棟などはこの世代だったな。



この世代の特徴は、階段室型レイアウトを維持しつつも、風呂・トイレを内側へ入れたことだ。



そうなると、風呂・トイレから窓がなくなって、換気扇が付いたってことですか。



早い話がそういうことだ。小さな変化のようだが、水回りで結露とカビに悩まされなくなったのは、劇的な変化と言って良い。



確かに、それは大きいですね。



台所もレンジフード付き換気扇が導入されるなど、細かいところで結構変わっている。



ただ、この刷新の話は、あくまで代表例の話だ。中にはもっと新しくても風呂トイレに窓が付いている物件もあると聞くからな。だいたいのイメージとして捉えてくれ。
2000年代以降



そして、2000年代以降になると、階段室型レイアウトから外廊下型レイアウトへの転換が起きる。呉の吉浦宿舎に、舞鶴の余部宿舎7号棟など。



今どきのマンションみたいな感じになるんですね。





ああ。それまでの官舎は4階建てがほとんどだったが、この頃から10階超の多層階にシフトしていく。エレベータが付いたというのも大きいな。



おお、エレベータがあるんですか!



とは言え、2000年代末以降、長らく新設はストップしたので、こういった物件は本当に数件程度だ。



そして、2020年代に入って満を持して登場したのが、横須賀は船越、海上作戦センターの裏に新設された船越宿舎だ。



ま、これも色々話を聞くと、毀誉褒貶あるんだがな。
とは言え、断熱や24時間換気システムなどは、近年の住宅基準を満たす形で用意されている。50年モノの官舎に比べれば雲泥の差だな。



どんなものか見てみたいですね。
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国家公務員宿舎削減計画



さて、次は運営面の流れだ。あまり古い話をしても仕方ないし、私はそんなに詳しくないから、2010年代以降について説明しよう。



官舎を巡る社会情勢で、明確な変化が起きたのが平成21年(2009年)だ。時の政権が始めた「事業仕分け」において、朝霞の米軍キャンプ跡地に建設予定であった合同宿舎など、数件の官舎建設が凍結されたのだ。



これらの建設計画は、その後の再検討を経て継続妥当と判断され凍結解除となるのだが、平成23年(2011年)の東日本大震災を経て、公務員優遇との批判が続出する。そこで立ち上がったのが「国家公務員宿舎の削減計画」だ。



公務員叩きですよね。世知辛いなぁ……



宿舎の入居資格が今と比べてかなり緩かったようだな。入居にあたって職務上の必要性を問われないなど、福利厚生施設的な雰囲気を帯びていたのも事実ではあったらしい。
当時は不況続きで社宅を廃止する企業も多かったので、公務員に矛先が向いたのだろう。



ま、批判やその対応が妥当だったかどうかは、この際置いておこう。国民の非難を受け、宿舎の新設が止まり、廃止が進み、入居要件が厳格化され、家賃が増額された。これが事実だ。



計画が立ち上がって5年のうちに廃止された宿舎は、全省庁で10,684件中5,046件。約半数の宿舎が閉鎖に追い込まれたわけだ。



そんなに廃止してしまったんですね……。



必要性の説明が出来なければ、そうなるのが役人の世界だ。もっとも、当時を知る者に聞くと、各省庁横並びで削減目標が設定され、たとえ必要でも廃止せざるを得ない状況に追い込まれた……というが。



まあいい。いずれにせよ終わった話だ。
それより、ここで重要なのは削減計画を経て、入居資格がより厳格化されたことだ。先述の入居資格の話は、この削減計画で定められたものなのだ。
1 職務上宿舎への入居が認められる公務員の類型の意義
国家公務員宿舎に入居が認められる公務員の類型は、以下の5類型とする。
職務上宿舎への入居が認められる公務員の類型と各類型に該当する戸数の根拠
- 離島、山間へき地に勤務する職員
- 頻度高く転居を伴う転勤等をしなくてはならない職員
- 居住場所が官署の近接地に制限されている職員
- 災害、テロ、経済危機、武力攻撃等を含め、政府の迅速な対応が求められる事件・事故等が発生した際、各府省が定める業務継続計画(BCP)等に基づき緊急参集する必要がある職員
- 国会対応、法案作成及び予算等の業務に従事し、深夜・早朝における勤務を強いられる本府省職員



……これって、財務省の官僚が作ったんですよね。



ああ、当然政治家の意向を受けて、であろうがな。



なら、最後の国会対応の項目はなんなんです??これって要するに財務省の本省勤務の官僚は官舎に入れるように、ってことですよね。



キミの言いたい事はだいたい分かる。



だって、他の項目は文を見ただけでは対象になる職員が特定できないけど、この項目だけは明らかに中央官僚をピンポイントで指してるじゃないですか。しかも、解釈違いでうっかり対象外にされないよう、事細かに書いてる。
こんな文書出されたら、他の公務員は刃向かえないんですよ?それなのに、当の文書作ってる人たちが自分自身を対象だって明言するのはどうなんです!?



だいたい、首都圏の官舎が批判されて始まった削減計画なんでしょう??なのに田舎の官舎ばっかり5000件以上も廃止して、自分たちだけは確実に首都圏の官舎に入れるようにしたってことじゃないですか!



それはな。私とて、これを読んで何も感じなかったわけではないぞ。



だが、中央で働いている官僚とて、ゆとりのある暮らしをしている訳ではあるまい。終電後退庁、始発前登庁するような者も珍しくない。数十分で通勤出来る住宅に住もうと思えば家賃は10万20万を軽く超える。
その現実を知りながら、他の公務員と平等に官舎を諦めろとは、私は言えんよ……。



それは……、そうかもしれませんけど……。



ま、そもそもその深夜早朝勤務は本当に必要なのか?とは思うがね。それこそ官僚を責めても仕方あるまいよ。
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無料宿舎の拡大と入居率の低迷



国家公務員宿舎削減計画により、防衛省は多くの宿舎を廃止することになる。そして、賃料増額の圧力もますます強くなる。だが、構成員の財布に手を突っ込まれた防衛官僚は、やられたらやり返すアツい役人魂をしっかり持っていた。



防衛省が反撃の一手として持ち出したのが無料宿舎だ。当時、無料宿舎は制度自体存在していたが、その対象となる隊員はごく僅かしかいなかった。時に平成26年。防衛省は無料宿舎の対象となる緊急参集要員として、部隊の主要人員を認めさせることに成功する。
その下準備として「家賃が上がったら官舎から出て行く隊員が多い」というアンケート結果を数年前から準備し、「緊急参集要員を継続的に住まわせるには無料化は不可避」「むしろ本来無料であるはずの者から賃料を取っている現状は不当」というロジックを主張したのだ。



なるほど、ここから艦艇の科長や群の幕僚が無料宿舎の対象になったんですね。



そうだ。私や航海長がタダで住めているのは、まさしくこの時戦った役人のおかげというわけだな。感謝すべきなのだろう。



……だが、この起死回生の一手こそが、防衛省を苦しめることになる。右の頬を打たれたら左の頬を打ち返す精神は、財務省も持ち合わせていたのだな。



いざ無料宿舎の運用を始めると、入居率の低さが問題となる。
何故問題かと言えば、わざわざ予算を掛けて無料宿舎の枠を用意したのに、それが実際には活用されていないとなれば、無料宿舎枠の廃止、ひいては宿舎自体の廃止に繋がりかねないからだ。



ここから防衛省は、隊員に無料宿舎に入居するよう働きかけるようになる。が、必ずしも奏功せず、入居率の低さは現在でも問題であり続ける。



せっかく獲得した無料枠が、却って宿舎自体の存続を危うくしているんですね。しかし、どうして皆入居しないんですか?
- 老朽化した設備
- 築年数の古さに加え、メンテナンスが不十分であったため、部屋の状態が劣悪。
- 貸与対象者に忌避されるほか、そもそも人に貸せる状態にないが、復旧させる予算もなく放置されたことも。
- 宿舎特有の慣習の忌避
- 諸役員や原状回復費用の支払い等、宿舎特有の慣習が嫌われ、宿舎への入居を拒否
- 自宅の保有
- 緊急参集要員の多くが、既に基地周辺に自宅を保有しているため、宿舎への入居を拒否
- タイミングの悪さ
- 部屋数に余剰が無いため、緊急参集要員が赴任する時に貸与可能な部屋が無い。
- 部屋が貸与可能になったら対象者に引っ越しを求めているが、移転料(引っ越し費用)が支払われないため、入居を拒否されるケースが多い。



……基地の近くに自宅があるなら、それはそれで良いんじゃないですか?



と思うかもしれんが、世の人が思う「基地周辺」と緊急参集要員の基準は一致しないのだ。
例えば、横須賀を母勤務地にしようと、金沢八景や衣笠に自宅を構える者は少なくない。駅周辺に住めば30分以内に出勤可能で、悪くない選択と思う。だが、これは距離や徒歩時間の要件と合致せず、緊急参集要員の居住場所としては認められないケースがほとんどだ。



先の室ノ木宿舎のケースもそうだが、公共交通機関や自動車が使えることを前提にすると、必ずしも各々の自宅より無料宿舎の方が出勤に向いているとは限らなくてな。故に「無料宿舎に入れ」と言われても、なかなか入居しない者が多かったのだ。



無料宿舎の範囲拡大から10年が経ち、最近では幹部も無料宿舎に入居することを前提に人生設計するようになってきた。特にA幹は基地周辺に家を持とうとする者も減ってきたから、それほど問題になっていない。
だが、B幹は海曹時代にまさしく基地周辺に家を買っているケースが多く、依然としてこの問題を抱えている。



まあ、気持ちは分かりますね。
こう言っちゃなんですが、どうせ無料で貸してくれるなら、借りるだけ借りて、自宅から通えば良いんじゃないですか?



そういう者もいないわけではない。が、それは指定場所に居住する義務への違反として懲戒処分の対象になる。気軽にやるものではないぞ。



あわせて、無料宿舎への入居をきっかけに家族と別居する場合、単身赴任手当の支給対象となることが多い。そうやって手当を受給していながら、実際には家族の住む自宅に住めば、単身赴任手当の不正受給という話にもなってくる。



いや……止めておきます。
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魅力化



なんだかなぁ……。無料宿舎を貸してもらえるのはありがたいですけど、色々と暗い話が多いですね。



言っただろう、官舎とは床と壁と天井なのだ。そう多くを期待するな。



だが、決して悪い話だけでもないぞ。最近は防衛予算の増額の恩恵を受け、少しはマシになりつつある。


令和8年度自衛官の処遇改善パンフレットから転載。



それこそ、私が江田島で暮らしていた大原の官舎は、パラパラ落ちてくる砂の天井、公衆トイレより粗末な洗面台、便器は「伊奈製陶」(注:後のINAX, LIXIL)のマークがついた骨董品、風呂は小学校のトイレみたいなタイル貼り、洗濯機の防水パンも無いという散々な有様だった。
が、最近ではリフォームされて見違えるようになったらしい。


令和8年度自衛官の処遇改善パンフレットから転載。



おお、これはすごい。



こんなのは、遥か昔にやっておくべきだったことを、今更大慌てでやっているだけに過ぎん。それでも、ありがたいことには違いない。



ま。とは言え、現に人が入居していれば改修のしようがないからな。一旦人を追い出して、あのコンクリ塊にギャンギャンバリバリ穴をぶち開ける必要があるのだ。向こう何年かは、むしろ誰も彼もが隣のオンボロ官舎に追いやられ、加えて粉塵や騒音ともお付き合いすることにはなる。



あー。でも、どこかでやらないといけないんですもんね。



そう。そこにまで文句を言い始めたら、何も始まらん。数年後の快適性を確保するため、今は多少我慢すべき時なのだ。



散々暗い話でしたけど、少しは明るい気分になれましたよ。
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この記事では国家公務員宿舎について、次の内容を説明します。
第1回
- 国家公務員宿舎の概要
- 国家公務員宿舎の目的
- 業務の円滑化のためであり、福利厚生としての住宅支援目的ではないとされる。
- 種類
- 国設宿舎/一般借受宿舎/特借宿舎
- 省庁別宿舎/合同宿舎
- 部屋の規格と貸与基準
- 床面積に応じ、a~e規格に分類
- 実際に運用されているのはa~c規格
- 階級により貸与可能な規格(≒広さ)が異なる。
- 床面積に応じ、a~e規格に分類
- 無料宿舎とは
- 緊急参集要員などは、無料で官舎を借りることができる。
- ただし、行動範囲に著しい制約を受ける。
- 緊急参集要員などは、無料で官舎を借りることができる。
- 入居方法
- 管理は基地管理部隊の厚生課が担当
- 宿舎係と下調整の上、入居届を提出
- 国家公務員宿舎の目的
- 沿革
- 宿舎設置の世代
- ボリュームゾーンは1980年代以前に建設された「階段室型」
- 2000年代以降に建設された少数の官舎は、一般的マンションに似た間取り
- 国家公務員宿舎削減計画
- 2010年代、国民の批判により官舎は半数以上が廃止に追い込まれた。
- 入居要件の厳格化
- 無料宿舎の拡大と入居率の低迷
- 2010年代後半、艦艇の科長など部隊の主要幹部が無料官舎の対象に
- 老朽化等を原因とする入居率の低迷により、却って官舎存続の危機に
- 魅力化
- 2020年代の防衛予算増額により、リフォーム等が活発に
- 宿舎設置の世代
第2回
- 入居のメリット/デメリット
- 入居時の知恵
- 【意見】官舎のあるべき姿








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