この記事では、一般幹部候補生の採用制度について、次の内容を説明します。
- 一般幹部候補生の採用試験を受ければ、防衛大学校へ行かなくても幹部になれる。
- 広島県江田島市の海上自衛隊幹部候補生学校で1年間、防大卒の隊員は「1課程」、一般幹部候補生採用試験の合格者は「2課程」の教育を受ける。
- 1課程と2課程は、座学のカリキュラムは違うが、日常の訓練・生活は混ざって行う。
- 出世のスピードは1課程も2課程も変わらない。
- 2課程には、人材の多様性を増すことで、組織を強くする役割がある。
- 幹部候補生学校を修業すると3尉に任官、半年の遠洋練習航海へ行く。
今日からは海上自衛隊に入隊するための方法について教えるね!
まず、私は一度として入りますとは言ってないんですが、ああ聞いてないですね、どうぞ続けてください。
ボクはね、未来には是非幹部になってもらいたいと思ってるんだ!ボクよりずっと頭もいいし、広い視野でものを見られる人だと思ってるからね!
それはどうも。
でも、先パイ。前にテレビで見たんですけど幹部になるには防衛大に行かないといけないんでしょ?そろそろ大学卒業するってのに、また大学受け直すのはちょっと……。
フフン、幹部になれるのは防大生だけじゃないんだよ!普通の大学生にだって、なる道は用意されているのさ!
えっ、そうなんですか。
防大か、一般大か
幹部を目指す方法で一番メジャーなのは防衛大学校の学生になることだね。これは間違いない。
そういえば、高校の同級生でひとり、防大に行ったのがいましたね。
防衛大学校は神奈川県横須賀市にある自衛隊の教育機関で、陸海空全ての自衛隊の幹部候補生になる人たちが教育を受けているよ。
入校時点では陸海空どれに行くのか決まってなくて、2年生になる時に決まるんだ。4年で卒業すると学士の称号がもらえて、そのまま陸海空それぞれの幹部候補生学校に入校するんだよ。
えっ、防大って、卒業してもまた学校へ行くんですか?
そうだよ。海自の場合、広島県江田島市にある幹部候補生学校で約1年間、幹部海上自衛官としての教育を受けるんだ。
この時こそが一般大生のチャンス!一般幹部候補生の採用試験をパスした人は、ここで防大卒業生と合流して幹部候補生としての教育を受けるんだ!
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カリキュラムは違っても、生活は一緒!
一般幹部候補生は、大卒程度の学力を持った人たちが対象の採用制度で、主に一般大を卒業した人が入ってくるんだ。
正確に言うと、防大を卒業した人たちは一般幹部候補生課程(第1課程)、一般大から来た人たちは一般幹部候補生課程(第2課程)の学生になるの。座学のカリキュラムは少し違うけど、日頃の訓練や生活は1課程も2課程も入り混じってやるよ。
防大卒の1課程と、一般大卒の2課程ですか。カリキュラムが違うってのはどうしてですか?
事前に自衛隊の教育を受けているかの違いだね。
1課程の人たちは防大にいるときに、ある程度自衛隊全体の規則や船の運航に関する勉強をしてるんだけど、2課程はそういう経験がないので一から教えないといけないんだ。ボクも最初の頃はずっと行進や敬礼の練習ばっかりやってたね。
だから教わる分野の比率がちょっと違うんだ。反面、1課程の人たちは英語教育とかに割く時間がちょっと多いかな?
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出世のスピードも一緒!
なるほど。しかし防大の人たちは5年も教育を受けて、一般大の人たちは1年しか教育を受けないんですよね?
やっぱり防大の方が出世するんですか?
いや、案外そうでもないよ。
確かに1課程、2課程ってのは人事記録には残るんだけど、配置を決めたり昇任の順番を決めたりするときには特に区別されていないんだ。今のところ、海上自衛官のトップになる海上幕僚長はほぼ全員防大出身者で占められてるけど、あと一歩で海幕長や司令官になれたっていう2課程の人もそんなに珍しくはないよ。
へぇ、意外です。
防大生の強みは陸自や空自に同期がいたり、上下2、3期くらいの先輩後輩と交友があったりすることだと、ボクは思うんだ。特に上の将軍様にもなると、単に能力があるだけじゃなくて、周りのえらい人たちとも信頼関係がないといけないから、同じくらいの能力だったら防大出身者が上に行くのも、そんなに理不尽ではないと思うよ。
なるほど。
あと、1課程にもいろいろいるんだけど、期に1人か2人くらいはとんでもないスーパーエリートが現れるから、その人が一番上をかっさらっていくってのあるよ。中高生の頃から国防に燃えて、自衛官として生きることに人生を捧げてる人。
ボクの同期にも一人居るけど、頭はいいし、運動もできるし、性格もいいし、顔も声も素敵だし!そういう神様みたいな人がね……!いるんだよ……!そういうのを見ると、むしろこの人には上にいってもらいたいなと思うね。
そういうわけで、2課程だってかなり高いレベルまできちんと出世するから、安心して良いよ。
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組織に多様性をもたらす2課程
先パイは2課程なんですよね?
2課程でも出世できるとは言いますけど、縦横のつながりを持てるとか、そういうの見ると、防大に行った方がよかったと思います?
いや、全然?
えぇ……
1課程の人の話を聞くと、防大はボクには合わないかなって。
同期が集まったとき、ボクの知らない思い出話してるのを見ると羨ましくはあるけどね。でも、ボクにはボクの生き方があるから。
そういうもんですか。
それに、わざわざ2課程っていう制度がある理由を考えると、決して悪くないと思うよ。防大って、良くも悪くも画一的な人材を育成してしまうんだけど、2課程は多様性に富んでるからね。東大卒のピカピカな人とか、帰国子女とか、会社員やってた30手前の人とか、芸能人になる夢に破れて入隊を選んだ人とか、風俗の送迎バイトにのめり込んで大学卒業を逃した人とか。
いろんな人が入ってきて、いろんな物の見方をするから組織が強くなるんだ。ボクみたいな珍獣枠も捨てたもんじゃないでしょ?
1課程も2課程も、それぞれに良いところがあるってことですね。
そういうこと。
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幹部候補生学校修業後の進路
1課程も2課程も、1年間幹部候補生学校でお勤めを終えると3等海尉になるんだ。修業式のあと、そのまま練習艦隊の練習艦に搭載されて、半年の遠洋練習航海へ刑期延長。帰国すると各地の部隊に配属になるんだ。
なんか今、不穏なワードが聞こえましたが……。幹部候補生学校を卒業すると、もう幹部なんですか。すごい出世スピードですね。てっきり何年かは海士として下積みをするのかと。
幹部候補生は人事上、海曹長として扱われるから、入隊したときから海士より遙かに上の階級だよ。スゴいもんでしょ?
まぁ、名目だけなんだけどね
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まとめ
それじゃあ、まとめるね。
今回は、一般幹部候補生の採用制度の話をしたよ。一般幹部候補生の採用試験を受ければ、防大にいかなくても幹部になれるんだ。
採用されると、防大卒の人たちと一緒に幹部候補生学校で1年間教育を受けるんですね。防大卒の人は1課程、一般大の人は2課程という教育を受けますが、座学に違いがあるだけで、訓練や生活は入り混ざってやると。
そう。そして、出世のスピードは変わらないということ。防大に行かなかったからトップはねらえない、なんてことはないよ!
そして、2課程の人たちには組織の多様性を増す役割があるって話もありました。いろんな経験、いろんな物の見方をする人がいた方が組織が強くなるってことですね。
そう。
そして、幹部候補生学校修業後は、3尉に昇任して、半年の遠洋練習航海へ行くんだ。
なるほど……ひと通り分かりましたけどね、先パイ。待遇とか、試験の難易度とか、一切話がなかったんですが……
もちろん、忘れたわけではないよ!そのあたりはまた機会を改めて話そう!
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