保険の意義をよく考えよう。団体保険とのつきあい方 その1

記事の要旨

この記事では、新規入隊者の保険加入についてアドバイスします。

  • 自衛隊に入隊するとすぐに、団体保険の説明会が行われ、加入を求められる。
    • かつては事実上、加入を強制するものであったが、近年はあくまで任意という雰囲気が強くなってきている。
    • 歴史的経緯などから自衛隊に対する保険会社の影響力は強く、加入しない入隊者を問題視する幹部がいるのは事実。
  • 自分に必要な保険を、きちんと考えた上で選ぶべき。
    • 説明会では保障条件や保障額の説明はあるが、保険の意義については説明されず、ほとんどの新規入隊者は深い考えなく奨められたとおりに加入している。
    • 保険は突発的なトラブルで大きな損害を受けたときに、その損害をカバーするためにあるもの。その意義と自身のライフスタイルをよく考えて加入しよう。
  • 各保険の保障内容と留意事項
    • その2で解説
水雷長 遠見1尉

入隊直後にやらないといけないことと言えば……。
あっ、そうだ。保険の話をしてなかったね。

入隊予定者 京井 未来

保険ですか?

水雷長 遠見1尉

そう、保険。生命保険とか医療保険とか。
入隊するとすぐ加入することになるから、今のうちに考えておいた方がいいね。

目次

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強制……ではない団体保険加入

水雷長 遠見1尉

入隊すると、かなり早い時期に講堂に集められて、団体保険の加入案内を受けるんだ。

入隊予定者 京井 未来

うーんと、団体保険っていうのは何ですか?

水雷長 遠見1尉

団体保険っていうのは、ある団体のメンバー(社員など)だけが入れる生命保険や医療保険のことだよ。まとまった数の契約が見込めるし、保険料の徴収をその団体が代行してコストを抑えるから、個々人が保険会社と契約するのに比べると割安になると言われているんだ。

入隊予定者 京井 未来

それはお得ですね。

水雷長 遠見1尉

防衛省の場合、防衛省共済組合の事業として民間の保険会社と団体保険の契約をしているんだ。

水雷長 遠見1尉

ただ……この保険の案内というのが結構曲者でね。
ボクが入隊した頃はなんというか……加入を強制する雰囲気があった。

入隊予定者 京井 未来

え、そうなんですか。

水雷長 遠見1尉

各保険会社の営業員が簡単な説明をした後で「この保険については、30口の加入をお願いしております」と言われて、なんか判子を付かないと終わらせてくれない感じがあったというか……。
実際、頑として契約しなかった同期もいたんだけど、後で分隊長に呼び出されて「何で加入しないんだ」と詰められてたんだよね……。

入隊予定者 京井 未来

えぇ……

水雷長 遠見1尉

ただ、若い子に聞く限り、最近はそういうやり方はしなくなってきているみたい。あくまで任意は任意ってことで。おかげで加入率が徐々に落ちてきていて、それはそれで偉い人の間で問題視されているという……。

入隊予定者 京井 未来

そもそも、保険に入る、入らないなんて個人の自由だと思うんですけど。なんで偉い人がそんなこと考える必要あるんですか?

水雷長 遠見1尉

これには歴史的な経緯というものがあってね。
自衛隊が発足したばかりの頃、自衛官は「危険を伴う仕事」であるという理由で、各社から保険加入を断られていたんだ。国のために働いている人たちにその扱いは無かろうということで、政治家や高級幹部が保険会社に頭を下げ、紆余曲折を経て大手の保険会社が自衛官でも加入させてくれるようになったんだ。

入隊予定者 京井 未来

なるほど、その恩があるから保険会社には頭が上がらないってことですか。

水雷長 遠見1尉

穿った見方をすると、団体保険の制度は保険会社にも偉い人にもWin-Winな状態なんだよね。保険会社は20万人以上いる自衛隊員との契約のチャンスが得られるし。

入隊予定者 京井 未来

偉い人のメリットは?

水雷長 遠見1尉

主要保険会社にどういう顧問が在籍しているのか……。これ以上は言えません……。

入隊予定者 京井 未来

あっ……。

水雷長 遠見1尉

まあ、そういう闇の話もあるけど、実際、完全に無保険で生きるわけにもいかないからね。自衛官にとっても団体保険の制度があること自体は決して悪いことでは無いんだ。

水雷長 遠見1尉

団体保険には自衛官同士の互助組織としての機能を持っているという側面もある。さっき言った「分隊長が加入しなかった同期を説教した」というのもそれを踏まえてのことで、「今自分が必要を感じないからと言って入らなかったら、仲間が困っているときに助けられないだろ」という趣旨なんだ。まあ……これは価値観によるかな。ボクは否定しないけど、積極的に賛同もしない。

入隊予定者 京井 未来

互助というのは分からないでもありませんが……保険を通じなくてもいいんでは?

水雷長 遠見1尉

まさにそれだね。とは言え、互助会から遺族にお金を送ると贈与税も掛かってしまうから、保険を通じてやった方が賢いというのも事実だし……。
そもそも公的な保障が不十分なのがいけないんじゃないか、というのがボクの意見。

水雷長 遠見1尉

そしてボクが気に入らないのは、どうしたことか、保険会社でご厄介になっているOB、それも地方総監を務めたようなレベルの偉いのが時々部隊にやってきて、加入を求めていくことだね。まったく、どうしたものか……。
本人はひょっとしたら本当に保険が重要だと思って、意義を理解してもらおうとしているだけなのかもしれないけど、現場ではとにかく加入率・加入口数を上げないとまずいとなって、加入口数の少ない人を説教するだけなんだよね……。

入隊予定者 京井 未来

なんとも、複雑な問題なんですね……。


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保険の意義と自分のライフスタイルを考えよう。

水雷長 遠見1尉

別に、ボクは保険は要らないって言ってるわけじゃないんだ。でも、自分に必要な保険はなにかをよく考えてって言いたいの。

入隊予定者 京井 未来

ええ。それは分かります。

水雷長 遠見1尉

入隊後の説明会では、どういう条件を満たしたら、どういう保障をしますっていう話が主で、そもそもその保険に入る必要があるのかはほとんど説明されないんだ。保険会社の営業員が話すんだから当然かもしれないけど。

入隊予定者 京井 未来

営業としては入る前提で話を進めた方が契約取れますもんね。

水雷長 遠見1尉

だから、新規入隊者のほとんどは深く考えることなく、説明会で勧められたとおりに加入していく。団体生命は30口ずつ。団体医療も団体傷害も生命・医療共済も3口ずつってね。

入隊予定者 京井 未来

それは入隊者が必要としているものではないんですか?

水雷長 遠見1尉

必要としている人もいれば、必要としていない人もいる。
人によるんだ。

水雷長 遠見1尉

例えば、入隊した時点で既に結婚していたり、子供がいたりする人。最近ではそこまで珍しくは無くなってきた。そういう人が明日交通事故で死んでしまったら、残された家族はどうやって生きていくのか。

入隊予定者 京井 未来

子供がいなければまだなんとかなるかもしれませんが、子供がいたら簡単には働けないし、絶望的ですね……。

水雷長 遠見1尉

そういう人は生命保険にしっかり入っておくべきだね。
一方で、親にも十分な蓄えがあって、結婚もしていなければ子供もいない。ハッキリ言って自分がポックリ逝ったとして、なにも残らない人。そういう人が3000万も4000万も生命保険をかけて、一体誰に残すのか。

入隊予定者 京井 未来

確かに。人によりますね。

水雷長 遠見1尉

これは補給長の受け売りなんだけど、保険というのは突発的なトラブルで大きな損害を受けたときに、その損害をカバーするためにあるんだ。だから、家族のために残す生命保険や、巨額の賠償に備える自動車保険(対人・対物)、火災保険なんかは保険としての価値が高い。
いずれも数千万円、ひどい場合は数億円の損害が発生するからね。

水雷長 遠見1尉

一方で、損害額があんまり大きくない、卑近な例で言うと「スマートフォンを壊してしまった場合に修理代をカバーします」なんて保険は、数年も加入したら払い込んだ金額が保障額を上回るわけで、貯金しておいた方がマシだったってことになる。

入隊予定者 京井 未来

そうですね。

水雷長 遠見1尉

そういう保険の意義と自分のライフスタイルをよく考えた上で、どの保険にいくら入るのかを考えてくれると嬉しいな。

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