この記事では、新規入隊者の保険加入についてアドバイスします。
- 団体保険の歴史的経緯と保険の意義
- その1で解説
- 団体生命保険
- 日本生命と明治安田生命が担当。
- 病気や事故により死亡・障害となった場合に保障される。
- 働いて収入を得るはずの人間がいなくなってしまったことで、収入が激減する遺族の生活を守る。
- 副次的に、障害で働けなくなった時の収入減少を補填する役割もある。
- 団体医療保険
- 日本生命が担当。
- 病気による入院・通院・手術を保障する。
- 損害額があまり多くないので、毎月保険料を納めるより貯金した方が良い。
- 貯蓄額が少ない時期は役立つが、蓄えが出来たら解約すべき。
- 団体傷害保険
- 三井住友海上火災保険が担当。
- 交通事故やその他の事故による死亡・後遺障害・入院・通院を保障する。
- 総合賠償特約が極めて優秀なので、そのためだけでも入る価値あり。
- 防衛省生協(生命・医療共済)
- 生命保険と医療保険がセットになったような商品を提供
- 免責事項が無いため、故意や自身の犯罪行為による死亡のような特殊な状況をのぞき、確実に保障される。
- 留意事項
- 戦争で殉職した場合、保険では保障されない。
- 公務災害や賞恤金の対象であり、保険の免責事項になるため。
- 任務行動中に事故や病気で損害を受けた場合は保障される。
- 免責事項の内容は通常の保険と変わらないため保障されない可能性はあるものの、団体保険の意義から任務行動中の事故・病気に対しては保障する意向を各社が表明している。
- スケールメリットがある。
- 20万人超が加入する日本最大級の団体保険
- 保険料自体は決して割安ではないが、還付金を考慮すると安価なネット保険と同等のコストパフォーマンスになる。
- 加入期間1年(毎年更新)の掛け捨て型である。
- 終身保障ではないため、退職して解約すると保障されなくなる。
- 退職後にも加入するプランは別に用意されてはいる。
- 掛け捨て型の方が割安に済むため、終身保障でないことは必ずしもデメリットではない。
- 終身保障ではないため、退職して解約すると保障されなくなる。
- 医療保険・傷害保険について
- 民間の医療保険は病気・ケガの両方を保障するのが普通だが、防衛省団体保険では病気とケガで保険が分かれている。
- 入院や手術によって生じる費用は、生活を破綻させるような金額にはならない。民間の医療保険・傷害保険に入る必要があるかは、慎重に考えるべき。
- 自衛隊病院での受診には費用が掛からず、部外受診でも3割負担で済む。
- 医療費が大きくなった場合、医療費控除や高額療養費制度を利用すればある程度返ってくる。
- 戦争で殉職した場合、保険では保障されない。
- その他
- 火災保険
- 入隊時に加入を勧められることはないが、家を借りるようになったら加入しておいた方が良い。
- その他の保険
- 「団体生命保険」とは別に「団体取扱生命保険」が存在し、各保険会社の営業員が部隊へ訪問営業に来る。勧められるままに加入する人も多いが、加入する必要があるかはよく考えよう。
- 火災保険
さて、それじゃあ個別の団体保険について説明していこう。ボクはそこまで詳しくないから、補給長が説明してくれる。
よろしくお願いします。
はいはい、お任せあれ。
団体生命保険
まずは団体生命保険。
- 日本生命と明治安田生命が担当。
- 病気や事故により死亡・障害となった場合に保障される。
- 保険料は1口100円/月
- 保障額
- 死亡または高度障害時の保障額:62万円/口
- 災害保険金/障害給付金:25万円/口(40口まで)
- 不慮の事故や公務災害による死亡・障害の場合に加算される。
- 障害給付金は高度障害(障害等級1級)の場合100%支払われ、障害等級が低くなるごとに保障額が減少する。
- 通常2社に30口ずつ加入することを推奨される。その場合、死亡時の補償額は2社あわせて3,720万円(不慮の事故の場合、災害給付金が加算され5,220万円)となる。
- 1社につき50口まで加入可能。41口目~50口目までは「増口型」と称し、1口あたりの保障額が増える。
- 2社に30口ずつ入るなら、1社に50口、もう1社に10口加入すると、死亡保険金額が増える。
- 諸事情により、実際にやる人は少ない。
- 不慮の事故で死亡した場合、災害給付金が10口分出なくなるので却って保障額が減る。
- 2社に30口ずつ入るなら、1社に50口、もう1社に10口加入すると、死亡保険金額が増える。
要するに、死んだら遺族にお金が出るってことですよね?
そう、働いて収入を得るはずの人間がいなくなってしまったことで、収入が激減する遺族の生活を守る。色んなオプションに惑わされがちですが、これこそが生命保険の本質と言えますね。
そうなると、私は親が裕福だし、結婚もしてないので加入しなくてもいいような……。
その考え方はごもっともです。他の考慮事項を挙げると、高度障害への備えになりますが……。
高度障害ってどの程度を言うんです?
労働者災害補償保険法の施行規則で障害等級が定められていて、その第一級のことを高度障害と言います。実際には各社の保険約款で決まっていますから、若干表現は違いますが。
一 両眼が失明したもの
労働者災害補償保険法施行規則 別表第一 障害等級表から「第一級」の「身体障害」
二 そしやく及び言語の機能を廃したもの
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
五 削除
六 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
七 両上肢の用を全廃したもの
八 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
九 両下肢の用を全廃したもの
日本生命保険相互会社 保険約款
- 両眼の視力を全く永久に失ったもの
- 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
- 中枢神経系または精神に著しい障がいを残し、終身常に介護を要するもの
- 胸腹部臓器に著しい障がいを残し、終身常に介護を要するもの
- 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
お、重い……
とは言え、生きていかなければならないですからね……。
できる仕事にもかなりの制約が出ますから、収入は激減するとみて間違いないでしょう。
とは言え、これほどの状態になったら公的な補助が得られることも忘れてはいけません。障害年金が年に180万円くらいは出ますし、公務災害認定されればその補償もされます。
介護が無ければ生きていけない状態なら、特別障害者手当が月額28,000円くらいは出ます。
他にも、細々とした障害者への補助はたくさんありますから、無闇に恐れる必要はありません。
うーん?それだけで足ります?
そこが難しいところですね。公的な補助だけで何の心配も無く、働かずに暮らしていけるかと言えば、まず無理でしょう。
とは言え、いくらあれば足りるのかを事前に把握することも難しいです。ある程度の口数で入っておいて、その金額が足りないかもしれないリスクは敢えて許容する、というのも一つの手です。
許容ですか?
ええ。高度障害になるケースはかなり珍しいですからね。あらゆる脅威に完璧に備えるのは無理があります。蓋然性が極めて低い脅威に対してはどこかで割り切った方が良いでしょう。
確かにそうですね……。
よし、とりあえず合計20口入ることにしましょう。事故で高度障害になった場合は災害給付金と合わせて1,740万円がもらえます。年間生活費が300万円かかると仮定して、障害年金180万円+保険金を年に120万円取り崩せば、15年は持ちこたえられます。その間に仕事を見つけるなり、親にパラサイトするなりすれば、なんとかなります。きっと。
素晴らしい。そういう考え方が大事です。
その計算が本当に正しいかは誰にも分かりません。でも、加入した後で計算が間違っていると気付いたら、そこで加入口数を変えられます。なんとなく入るよりずっと良いでしょう。
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団体医療保険
次は団体医療です。
- 日本生命が担当。
- 病気による入院・通院・手術を保障する。
- 年齢により保険料は異なる。
- 本人のみ加入の場合、1口200~600円/月程度
- 保障額
- 入院給付金:1日3,000円/口(4日間は免責)
- 手術給付金:1回3~12万円/口
- 通院給付金:1日1,500円/口
- 入院給付金の対象になる入院から退院した後、120日間以内に同一の病気で通院した場合
- 3大疾病オプション
- がん・急性心筋梗塞・脳卒中のいずれかになった場合、または死亡した場合、一時金が給付される。
- 一時金は100万円~500万円。
- 追加保険料は年齢と性別により異なる。
- 100万円コースの場合、200円~1600円程度
- 留意事項
- 災害不担保、精神障害不担保
まず、この保険の注意点は病気しか保障されないということです。
ケガで入院してもダメってことですよね?
そのとおりです。病気で入院した場合や手術をした場合にのみ保障があります。
加えて、入院した場合も4日間の免責期間がありますから、実際に保障されるのは5日目からということになります。
5日入院って、結構な病気ですね……。
ええ。最近ではがんの治療ですら日帰りが増えてきていますからね……。
そして、手術についても支払い対象になる手術は限られています。詳しくは説明を受けに行ったときにパンフレットを見ていただきたいんですが、ほとんどが開頭・開腹・開胸を要するような大がかりな手術で、例えば親不知を抜く手術なんかは対象になりません。
……つまり、保障対象になるような可能性は低い?
言葉を取り繕わずに言うと、そうなります。
私はこの保険に対して結構辛辣なことを言うんですけど、まさに保障されづらいのが理由です。
パンフレットを見ると、途中に「災害不担保、精神障害不担保」って文言が載ってます。この「不担保」っていうのは「保障しません」って意味です。でも、3大疾病オプションの宣伝ページには20代から60代まで、入院理由の第1位は男女とも精神疾患だと書かれているんです。しかし、入院の代表的理由であるにも拘わらず、精神疾患は保障しない。このストライクゾーンの狭さは、私には受け入れられません。
その3大疾病オプションはどうです?これは結構ありそうな気がしますが?
現職のうちに3大疾病になる可能性は確かに低くありません。
ですが、それを目的に保険に入るなら、払い込んだ金額に見合ったリターンが得られるか、よく考えるべきです。
えっと……、3口加入して100万円の三大疾病オプションを付けた場合、保険料は……若いうちは月1,000円くらいで、40代後半で月2,000円くらいですか。その間に一度も保険のお世話になるような入院や手術をせず、50歳でがんが発覚した場合……
ざっくり、平均1,500円の月額保険料を30年間納入したとしましょう。
すると、54万円の保険料を納めることになります。
それに対して得られるリターンは100万円の一時金と、もし出れば入院や手術に対する給付金ですか……。まあ、一応2倍近くのリターンは得られるんですかね。
それを魅力に感じて入るのも良いでしょう。
一方で、100万200万程度なら、わざわざ保険で賄わなくとも貯金で済ませれば良いと考えるのも有りです。
そこは、加入期間中にどのぐらいの確率で三大疾病になるかによっても変わってきますね。
ええ。50代までにがんに罹患する人の割合は約1割と言われています。決して小さな数字ではありませんが、9割の健康に過ごせた人は、54万円の保険料に対するリターンを一切得ずに終わるわけです。
微妙……。
私見ですが、この程度の金額なら貯金で済ませた方が良いと思います。保険はあくまで確率が小さいながらも壊滅的な損害を生じるリスクをヘッジするためにあるものです。
そうですねぇ……。
この「壊滅的な被害」というのも人によって変わります。早い話、数十億円の資産を遊ばせているような大富豪からしてみれば、急に1億円払わないといけなくなっても、それほど大きな問題にはなりません。
でも、貯金ゼロでその日暮らししている人からしてみれば、10万円払わないといけなくなっただけで人生が詰むわけです。
だから、貯蓄額がまだまだ少ない若いうちはこういう保険に入っておくのも有りだと思います。でも、100万200万の貯金が出来たら解約すべきでしょう。
ですね。私には要らなそうです。
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団体傷害保険
- 三井住友海上火災保険が担当。
- 交通事故やその他の事故による死亡・後遺障害・入院・通院を保障する。
- 保険料は1口700円/月で、保障額は原因により異なる。
- 交通事故の場合、死亡/後遺障害で590万円/口、入院日額4,500円/口
- その他の事故の場合、死亡/後遺障害で315万円/口、入院日額2,500円/口
- 総合賠償特約が極めて優秀
- 他人にケガを負わせた場合や他人の財産を破壊した場合、賠償金を2億円まで保障する。
- 家族が他人に損害を与えた場合も保障される。
- 追加保険料はわずか100円/月であり、総合賠償特約への加入を主目的に団体傷害保険に加入する人も少なくない。
- 長期障害所得保障保険
- 団体傷害保険の特約のひとつ。
- 病気やケガにより働けなくなり、収入がなくなった場合に60歳まで保障される。
- 保障額は月額5~20万円から選択し、年齢・性別により保険料が変化する。
- 必ずしも割安ではないが、経済的にみて「死亡より厄介な事態」のセーフティネットとなり得る、数少ない手段。
こちらは、事故による死亡・入院・手術に対する保障を行うということで、団体医療保険と対照的にケガしか面倒を見ない保険になります。
ぶっちゃけ、割安ですか?
死亡保障について言えば、団体生命とほぼ同等の保障額がもらえます。
ただ、団体生命には還付金があるのに対して、団体傷害には還付金がありません。
還付金?
詳しくは後で説明しますが、保険料として集めたものの、支払いで使い切らなかったお金が後で戻ってくるんです。要するに、後から保険料が値引きされるものだと思ってください。
それが発生する団体生命の方が、同じ保障額でも団体傷害より割安に済みます。生命保険専門でやってるわけですから、当然と言えば当然です。
ケガに対する保障としては、自衛隊の訓練や任務で発生したものに対しても保障される点がちょっと異質なところです。基本的に、普通の保険だと自衛隊の仕事で起きたものは免責になるでしょうから。
でも、団体医療の話からすると、そのあたりもやっぱり貯金でなんとかした方がいいんですかね?
ええ。その見解は変えてません。
でも、この保険に入っておくと良いことがあるんです。それが総合賠償特約に加入できることなんです。
総合賠償特約?
他人にケガを負わせたり、ものを壊してしまった場合、賠償金を払わないといけなくなりますよね?そんな時に、賠償金額を最大2億円までカバーしてくれるんです。
それってすごいことなんですか?
もちろんです。例えば自転車に乗っていて、誰かとぶつかって障害が残るような大けがをさせてしまった場合。相手がお医者さんやパイロットみたいな高所得者だと、その失われた所得も賠償の対象になるので、賠償金額が億を超えることもあります。
うっ、1億円超の賠償ですか。さすがにうちでも払えません……。
地下帝国に身を投じるしかない……。
それを免責金額ゼロ、つまり自己負担無しで肩代わりしてくれるんです。しかも、本人だけでは無く、家族のやらかしも同様に保障してくれます。
す、すげぇ……。
自転車での事故はカバーされますが、自動車や原動機付自転車での事故はカバーされません。必ず約款を確認しましょう。
そういうわけで、ハッキリ言って団体傷害保険の存在意義はこの賠償特約にあると言っても過言ではありません。この素晴らしさに比べると、本来の傷害保険機能はおまけです。
もうひとつ、長期障害所得保障保険というのがあるようですが……。
それを付けるかは好み次第ですね。
病気やケガで休職・退職しなければならないような場合に、60歳までの収入減少を補ってくれるというものです。
この保険の厄介なところは、支払い額とリターンの計算が非常に複雑で分かりづらいところです。ただ、商品としての存在価値は決して小さくないと思います。
そうなんですか?
保障額は「所得喪失率」によって変化します。働けなくなる前にもらっていた給料に対して、今の給料はどれぐらい減ってしまったかによって保障額が変わるわけです。
完全に働けなくなっているなら、100パーセント。5万円コースで契約していたら月に5万円もらえます。
一方で、艦艇勤務していた人がケガや病気で陸上勤務になって元々の給与から30%ダウンしたとしましょう。その場合、所得喪失率30%となって、5万円コースの人は月に15,000円をもらえます。ただ、その後の昇給で20%ダウンにまで回復したら、そこから先は保障されません。
……すごく、計算が難しいですね。
この保険の強みは、公的補助が弱い軽度な障害をカバーできることです。むしろ重度障害より起きる可能性は高いでしょうね。よく顧客のニーズを捉えていてよいと思います。ただ、そのための保険料は決して割安ではありません。そのあたりをよく考えて加入するか決めると良いと思います。
うーん……。そうですね。団体傷害は1口だけ入って、総合賠償特約にだけ加入します。昇給が進んで、もっと大きな金額になってきたら、所得補償を考えますね。
ええ。それが良いと思います。
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防衛省生協
最後に防衛省生協の生命・医療共済です。
- 生命保険と医療保険がセットになったような商品を提供
- 保険料は1口1,000円/月
- 保障額
- 入院給付金:1日3,000円/口
- 手術給付金:1回3万円/口(1入院につき1回まで)
- 死亡/重度障害:500万円/口
- 免責事項が無いため、故意や自身の犯罪行為による死亡のような特殊な状況をのぞき、確実に保障される。
正直言って、保険の中では影が薄く、あんまり特筆すべき事もない商品です。
免責が無いっていうのはどういうことですか?
詳しくはあとで説明しますが、他の保険は約款上、自衛隊の任務で損害を受けた場合に保障するかしないか、かなりシビアな契約になっています。つまり保障されない可能性があるんです。
それに比べると、この商品はそういう規定がほとんど無いので、保険金詐欺のような特殊な事情が無い限り、原則として保障されるというのが強みになります。
ただ、そのことにどこまで価値を見出すかですね……。
うーん。当日まで考えておくことにします。
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留意事項
戦死しても保険金が出ない!?
まず、何よりも知っておくべきはここです。
戦争が起きて、防衛出動して殉職したとしても、生命保険金は出ません。
えっ……
これは約款にきちんと書かれていることです。必ず確認してくださいね。どの保険にもだいたい書いてありますが、戦災による死亡は免責事項に該当するんです。
そこに備えて、みんな入るんじゃないんですか……?
その場合は、公務災害としての補償金や賞恤金の対象となりますから、私企業が保障するのがそもそもおかしな話なんです。
もっとも、そういう公的保障の制度はまだ十分に整備されていないんですけどね……!
なんだかなぁ。そしたら、部外の保険でもいいんじゃないですか?
と思うかもしれませんが、一応フォローしておくと、他の任務行動に起因して損害を受けた場合には保障されるものも結構あります。
災害派遣とか、海上における警備行動とか、弾道ミサイル等に対する破壊措置とか。
また、任務行動中、任務そのものが原因でなくてもケガや病気になることはありますからね。そういう時は団体保険がカバーしてくれます。
民間の保険とは違うんですか?
明確に差を付けているのは、団体傷害保険ですね。約款を見るとかなり細かく書かれています。
ちょっと煮え切らないのが団体生命です。とは言え、一応書いてはありますよ。
引受保険会社は、保険金のお支払事由が次の項目のいずれかによって生じた場合には、保険金をお支払いしません。
(中略)
● 戦争その他の変乱。(*1)
*1 ただし、戦争その他の変乱によって支払事由に該当された被保険者の数の増加がこの保険の計算基礎に及ぼす影響が少ないと引受保険会社が認めた場合には、その程度に応じ、保険金の全額をお支払いし、または保険金を削減してお支払いします。
日本生命相互保険 団体生命保険「保険金・給付金をお支払いしない場合等」
まあ、戦争が起きて国が滅びるかって時に「絶対全額払います!」とは言えないですよね。
難しいところですが、一応支払う努力をする意思はあるってことです。
あとは、その会社との信頼問題ですから、これ以上は何とも言えません。
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スケールメリットと還付金
これは、前回水雷長が言ってましたね。
防衛省の団体保険は、20万人以上の自衛隊員が加入する国内最大級の団体保険ですから、それだけのスケールメリットがあります。
実際、割安なんですか?
保険料の金額と、保険金額を比較すると、実際そうでもありません。
ただ、ここで大きく影響するのが還付金の存在です。
使い切れなかったお金が返ってくるってやつですね。
ええ。集めたお金を全て保険金として支払っているわけではないので、必要経費を引いてなお余る金額が還付されるんです。
還付額は年によって異なりますが、団体生命の場合、3割~4割くらいは返ってきます。なので、実際の負担額は6割くらいなんです。そう考えると、保険のコストパフォーマンスはかなり良いものになります。
なるほど。そういうことだったんですね。
ただ、注意点が2つあります。
一つ目は、還付金を臨時収入と捉える風潮が自衛隊にあること。還付金は現金で返ってくるんですが、給与明細なんかには反映されないのをいいことに、家族に隠して飲み代に使うおっちゃんがすごい多いんですよ。少し前までは保険会社のチラシに「還付金額を増やすために口数を増やそう」なんて本末転倒な内容の漫画が載ってたんですが、それが受け入れられるくらいの雰囲気が自衛隊にはあります。
還付金を浪費してしまったら、割高な保険にお金を出しただけになってしまいますもんね……。
二つ目は、還付金は絶対にもらえるものではないということです。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るってた時期、団体医療保険の保険金支払いが爆発的に増えて、とうとう還付金が出なくなったことがありました。還付金がもらえるのは、あくまで他の人が保障を受けてないからだということを忘れてはいけません。
還付金をあてにするなってことですね。
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加入期間1年の掛け捨て型
団体保険は原則として加入期間1年です。
?
つまり、毎年契約を更新する掛け捨て型の保険だと言うことです。
掛け捨て型ってことは……終身保障にはならないってことですか?
そのとおりです。一応、終身保障してもらえるプランも用意されてはいますが、原則は終身保障ではないです。ただ、これは必ずしも悪いことではありません。
生命保険にしても、医療保険にしても、高齢者になると支払事由に該当することが必ず起きます。人間、一生のうち1回は必ず死ぬんです。
確かに。終身の生命保険って、いつかは必ずもらえる保険ってことですよね。
そんな商品、まともに成り立つはずがありません。成り立たせようと思ったら、払込期間が満了するタイミングでトントンになるくらいに保険料を引き上げるしかありません。
つまり、掛け捨てじゃない保険は必ず割高になるんです。
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医療保険・傷害保険について
これはさっき言いましたね。普通の医療保険はケガも病気も保障してくれますが、団体保険では団体医療と団体傷害で別々になってます。だから、民間の保険とコストパフォーマンスを比べるのは非常に難しくなってます。
とはいえ、そもそも手術や入院でかかる費用は、人生を破綻させるほどの金額ではありません。だから、加入する必要があるかはよく考えてほしいところです。
でも、入院が数ヶ月続くような場合はどうなるんです?
まず、自衛官の場合、自衛隊病院での治療に医療費はかかりません。そして、部外の病院でも三割負担で済みます。
その上で、本人の負担額が大きくなってしまった場合は、医療費控除を受けたり、高額療養費制度を利用したりする手が残っています。結果的に、一つの病気にかかるお金はせいぜい10~20万円程度、膨らんでも30万円程度で済むんです。
なるほど~。
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その他
今回は触れませんでしたが、入隊してしばらく経ったらぜひ加入を検討してほしいのが火災保険です。
火災保険……ですか?
もしも火災を起こしてしまった場合、日本では延焼による周辺世帯への賠償はしなくてもいいことになっています。とは言え、自分が住んでいる家はなんとかしないといけなくなります。賃貸ならその原状回復費用を払わないといけないんですね。
確かに。結構な金額になりそうですね。
これこそ保険の本領を発揮する分野です。他にも風水害による損害や、水回りのトラブルで他人の家財に損害を与えた場合の賠償なんかも火災保険はカバーします。だから、家を借りるようになったら、ぜひ加入を検討してみてください。
分かりました。
それから、自衛隊で働いていると、保険の営業がどんどんやってきます。
団体保険のですか?
いえ、正確に言うと「団体取扱保険」というやつです。団体保険と違って、あくまで個人で契約するものですが、団体割引を効かせてくれるというものです。
昼休みになると、よく営業員が訪問営業にやって来て、舷門を占拠していくんですよ。で、初任海士を片っ端から呼び出して、言葉巧みに契約させていくんです。
でも、それこそ保険の意義をよく考えてほしいんですよね。結婚もしていなければ、親を養う必要もない若者が保険金を一体誰に残すのか。
団体生命だけで満額時の保障額は6000万円を超えるわけですからね。それに加えてさらに生命保険に入って、給与の1~2割を保険に費やして一体なにをしたいのか……。
そんなことがあるんですね……。気をつけます。
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