この記事では、海上自衛官の給与について、次の内容を説明します。
- 初任給は幹部候補生で22~24万円、2等海士で17~20万円程度。
- 初任給は民間企業に比べて決して高いとは言えないが、営内居住や無料給食の経済的利点を考えると、かなり良い部類に入る。
- 安定的に定期昇給するのが強みで、勤務成績にもよるが、10年で幹部は33~35万円、曹士は24万~27万円程度まで俸給が増額する。
- ボーナスとして、勤勉手当・期末手当が年2回支給される。1回あたり月給の2か月分程度支給される。
- 実際には、諸手当による増額に大きく影響される。艦艇の乗員や航空機搭乗員は特にその恩恵を受ける。
- 護衛艦に乗る勤続10年の自衛官の年収を概算すると、幹部で770万円、曹士で570万円になる。
ねぇ、先パイ。そろそろ教えてもらいたいんですけど……。
まぁまぁ……。皆まで言うな。キミの言いたいことはだいたい分かっているよ。
この記事では給与の金額について解説しますが、登場する数字はわかりやすさを優先して大まかな数字に丸めてあるため、若干の誤差があります。
また、給与の金額は法改正により変動する可能性がありますので、詳細はお近くの自衛隊地方協力本部にご確認下さい。
やっぱり気になる給料
堅実に増加する俸給
というわけで、みんな大好きお金の話。
ぶっちゃけて言うと、海上自衛官の給与はイケイケな大企業ほどは高くないよ。初任給は一般幹部候補生で22~24万円くらい。2等海士で17~20万円くらい。
「自衛官候補生」として入隊した場合、2等海士に任官するまでの3か月間は、自衛官の俸給ではなく「自衛官候補生手当」約14万円を毎月受け取ります。任官時に「自衛官任用一時金」約22万円を受け取ることで合計約64万円となり、2等海士の3か月分の俸給より若干大きい金額をもらえるように制度設計されています。入隊してすぐに辞めてしまう隊員への対策でしょう。
まぁ、公務員ですからね。
でも、ここで強みを発揮するのが、営内居住と無料給食。
そうですね。デメリットも多々有りますが、安く見積もっても月5万円、高く見積もれば月10万円分くらいの節約効果があると思います。そう考えると、決して悪い給与ではないですね。
加えて重要になってくるのが、確実に行われる定期昇給。
自衛官の月給は「階級」と「号俸」で決まるんだ。「3等海尉の10号俸は\261,400/月」って具合だね。この「X号俸」は年1回、勤務成績に応じて「X」の数値が加算されていく。今年10号俸だった3尉は、何か服務事故を起こしたりしない限り、次の年には14号俸 \269,200/月を支給されるんだ。
勤務成績に応じて特別昇給や昇任のスピードに差があるから何とも言えないんだけど、10年後には幹部で33~35万円くらい、曹士なら24~27万円くらいまで昇給しているはず。
大企業に比べると昇給のスピードはちょっと遅いですね。
でも、堅実に昇給できるのはやっぱり魅力的です。
今はコロナ禍明けの景気回復期で、給与も増額気運が強いからあんまり目立たないかもしれないけど、景気が悪くなっても昇給のペース自体はあまり変わらない。これは強みだね。
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ボーナスは年2回、1回に月給2か月分くらい
ボーナスはどうなってますか?
ボーナスは年に2回、6月と12月に支給されるよ。
正確には「期末手当」と「勤勉手当」の2種類が一度に支給されるんだけど、このうち勤勉手当は勤務成績が加味される、つまり「ボーナスの査定を受ける」ってことが起きるんだ。
この手当はどちらも月給の1か月分前後、合計で2か月分くらいが支給されるよ。
つまり、年に月給4か月分。年収は月給の16か月分くらいですね。
ところが、それでは済まないんだな、これが。
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海上自衛官の真骨頂、諸手当。
海上自衛隊が凄いのは、多くの隊員が何かしらの乗り物に乗っていることなんだ。で、乗り物に乗ると、手当が出る。
詳しくはまた話すとして、例えば艦艇乗員だと「乗組手当」俸給月額の43%が出る。さっき出した例、3等海尉10号俸だと\112,402になるね。
数値は違うけど、航空機の搭乗員にも似たような手当があるよ。
おぉ~!すごい。年収が130万円くらい変わりますよ!
あと、代表的なのだと「地域手当」あるいは「広域異動手当」。横須賀に勤めていたり、総監部間の異動をしていたりすると、俸給月額の10%、さっきの例だと月に\26,140。乗組手当と違って地域手当・広域異動手当の凄いところは、勤勉手当・期末手当の基準になる月給にも反映されることなんだ。
……つまり、その手当をもらってると、ボーナスが10%アップ……!?
えっと……年収が40万円以上変わりますよ。
そういうわけで、俸給月額を16倍すれば年収、というのは諸手当を無視した場合の値で「最低でもそのくらいはもらえるんだな」くらいのつもりでいればいい。
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勤続10年、護衛艦乗りの年収は……?
年収がどんなものか計算すると、こうなるよ。
勤続10年の護衛艦乗りの年収をとってもおおまかに試算
- 幹部:約774万円
- 曹士:約571万円
- 条件
- 俸給月額を幹部は34万円(1尉35号俸くらい)、曹士は27万円(3曹30号俸くらい)として計算
- 期末手当・勤勉手当は年に4か月分で計算
- 幹部にのみ、広域異動手当として俸給月額の10%を支給
- 乗組手当として俸給月額の43%を支給
- 護衛艦乗りに特有の航海手当・海上警備手当などは除外(実績により異なるため)
- 扶養手当・単身赴任手当などは除外
うんうん。悪くないですね。
手当のブーストは、実に100~200万。とてつもない威力だよ。
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まとめ
というわけで、まとめるよ。
今回はみんな大好きお金の話。
初任給は幹部候補生で22~24万円、2等海士で17~20万円程度ですね。民間企業より目立って高い金額ではありませんが、無料給食などのメリットを加味すると、まずまずの金額です。
景気に左右されず、安定的に定期昇給していくのが強みだよ。
10年もすれば、幹部は33~35万円、曹士は24万~27万円程度まで昇給できるんだ。
ボーナスは年2回で1回に月給の2か月分くらい。
海上自衛隊の特異なポイントとして、諸手当による給与のブーストが著しいよ。艦艇乗員や航空機搭乗員は特に恩恵を受けるんだ。
これらの点を踏まえて、勤続10年の護衛艦乗りの年収を試算してみると、幹部は770万円くらい、曹士は570万円くらいになるよ。
……やっぱり、具体的な金額が見えるのはいいですね。思ったより給与が充実しているのが分かりました。
そうでしょ?ボクもね……転職しようと思ったら「さしてスキルもないのに、20代後半でそんなにもらってる人、ほとんどいませんよ?」って、エージェントから叱られちゃった……
先パイ……!?
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