この記事では、幹部候補生学校や教育隊における「同期」の重要性について、次の内容を説明します。
- 同期とは
- ある教育を同じ「期」に受けた同僚。
- 特に、入隊最初の教育(一般幹部候補生課程や練習員課程)や自衛官人生の大きな転換点となる教育(海曹予定者課程や幹部予定者課程)を指すことが多い。
- 採用期別は人事管理に大きく影響するので、意識する機会がなにかとある。
- 同期は実務上の利害関係と親愛の情が混ざり合った、複雑な結束力を持つ。
- 特にA幹(防衛大学校・一般幹部候補生)や航空学生は、教育期間が長く、多くの過酷な経験を共有していることから結束力が強い。
- 昇任等の選考は期ごとに行われるので、同期は最も分かりやすい競争相手でもある。
- ある教育を同じ「期」に受けた同僚。
- 同期を大切に!
- 同期は、海自で手に入るものの中で、最も価値あるもの
- 実利的には、非公式な情報共有の媒体となり、業務調整時、腹のさぐり合いを最小限に留められる相手になる。
- 精神的には、理屈抜きに繋がることのできる、数少ない友人になる。
- 同期を信じ、同期を助けよ。
某日 「ひとなみ」士官室

通信士、次のミニチャートなんだが、港内のヤツ、全部作り直してくれ。
ミニチャート
艦艇において、司令・艦長・当直士官等が閲覧するための、海図の写し。
道路のない海の上では、正しく目的地を目指すために自艦の位置を把握する必要がある。そこで地形や目立つ建物(ランドマーク)の位置が記載された海図に、予定コースを記入して、ランドマークとの位置関係やGPSを利用して艦位を取得し、予定とのズレを把握する。
海図は大きく容易に海図台から動かせず、また法定備品として汚損を最小限に抑える必要があるため、各指揮官が手元で参照する際は海図を縮小コピーしたミニチャートを用いる。ミニチャートには予定コースのほか、避険線(座礁を防ぐため超えないと決めた線)や、近辺のフェリーのダイヤ、漁業情報などが記載され、指揮官の安全な運航をサポートする。
船務科・航海科の若年士官がミニチャートの作成を担当するのが通例である。



はぁ……。承知しましたが、前回とほとんど変わってませんよ。



そうなんだが、最新の情報に更新してるか司令が気にしてるって、小耳に挟んだもんだからさ。隊が出してきた航海計画、うちが普段使ってる計画とほんの僅かに違うだろ?悪いけど、海図はもう反映してあるから、頼むよ。



仕方ないですね……。良いでしょう。明日までになんとかしておきます。



ありがとな。
5分後



むぅ……思いのほか、面倒だ……。
嶋村、ミニチャート作れる?



ミニチャートか。候補生以来だから、もう忘れちゃったね。



そしたら、お前も来年にはどうせやることになるんだから、ここで覚えておいたほうが良い。教えてあげるから来て。



本当?ありがとう!



さすが通信士、平然と同期をこき使ってる……。



同期、ですか。
同期とは



前々から思ってたんですけど、その「同期」って何です?



あれ?分からない?同期って……。民間でも「同期生」とか、よく言うと思うんだけど。



「同期」っていうのは、文字通り「期」が同じ人のこと。で、「期」というのは、ある教育を受けた時期がいつかって話。
「第76期一般幹部候補生」とか、防衛大学校の「本科第69期学生」とか。



ああ、同窓会みたいなもんですか?てっきり、Synchronizationの「同期」かと……



それはコンピュータに毒され過ぎてるよ……



つまり、入隊した時に受けた、第●期●●課程の教育が何だったか?って話ですか。



うん。絶対に採用時の教育ってわけではないけどね。「中級同期」とか、「海士課程同期」とか、途中で受ける教育でも使うには使う。
ただ、単に「同期」って言った場合は、入隊時のものを指すことがほとんどだね。
採用期別は人事を左右する



なんでそうなるかと言うと、昇任や入校などの人事管理上、「採用期別」が非常に重要になってくるからなんだ。この選考は18幹候~20幹候が対象、みたいな話がよく出てくる。それに、期別によって先輩後輩の関係がだいたい決まるからね。何かと期別を気にする機会は多いんだ。
幹部海上自衛官の入隊期別
原則として、幹部自衛官は候校に入校した年によって期別分けされる。「第○○期一般幹部候補生課程」のような分け方もあるが、課程の制度変更などにより値が変わることもあるため、入隊年(西暦下2ケタ)と幹部候補生としての分類によって分けるのが一般的。
すなわち、令和6年度(2024年度)入隊の一般幹部候補生課程(=A幹)の場合「24幹候」、令和2年度(2020年度)に入校した一般幹部候補生課程(部内課程)(=B幹)の場合「20部内」と表される。
期別管理は特にA幹において重要な意味を持ち、昇任や学生選考の基準として「○○幹候の者」などと示されることがある。



そっか。年功序列だから「去年はこの年に入隊した人が昇進したから、今年は次の年に入隊した人ね」ってことが起きるんですか。



うん。昇任選考は前の昇任から●年経過することでスタートするっていう決まりがあるから、多少ばらつきは出るけど、ある程度横並びになるよ。



だから、同期は非常に比べやすくて、分かりやすいライバルになるんだ。
ボクが1尉なのに対して、何期も先輩である機関長は3佐だけど、特に勝ったとか負けたとか、そういう感覚はない。でも、同期の航海長、梶くんが3佐に昇任したときボクが1尉のままなら、ボクの方が評価が低いという現実を突きつけられる。



なるほど。



それに、期に決まった人数だけ配置されるポストというのもあるから、そこを希望している同期とは奪い合いになるんだ。



へぇ、どういう配置なんですか?



A幹で一番分かりやすい例を言うと、砕氷艦「しらせ」の運用士かな。例年、2配置目のA幹が配置されると言われているよ。
他にも、幹部候補生学校の幹事付とか、大学院や企業での研修とか。護衛艦隊司令官の副官なんかも毎期1人出してる配置だね。



なんでそうなるんです?



予算や定員の関係で毎年1枠2枠だけ確保されてる中で、毎回いちいち全体から選考するのは大変だろうからね。それに、期による不公平感が生じないようにっていうのもある。
でも一番は、人事管理上の問題だね。ある期にいる隊員は同じ年齢層、多くの人は1、2歳差くらいしかバラつきがないから、定年退職の時期もだいたい一緒になる。



何しろ予算や定員の制約があるから、1年に新しく割り当てられる人数はあんまり変えられない。
例えば、海自全体で経験者を40人くらい必要としていて、年に1~2人しか養成出来ない特殊配置があったとする。経験のある20代が3人、30代が7人、40代が20人、50代が10人なんて状態だとどうなるか。



えーっと、これからの10年で、今の50代が10人抜ける訳だから……



いや、自衛官は若年定年制だからね。階級によって違うけど、分かりやすく55歳定年と仮定しようか。



あ、なるほど……。
そうなると5年で10人が抜けるから……、毎年2人養成しないと、人数を維持できないじゃないですか。



そう。その後には40代の20人が控えているから、15年先まで毎年2人ずつ、予算枠いっぱいに養成しないとダメ。
で、そうやって15年後にはもともと30代だった人達が定年を迎え始めるけど、そんなには減らないから、枠の関係で毎年1人しか養成できなくなる。



いや、そんなことしたら、毎年2人ずつ養成してた頃の人たちが定年迎え始めたとき、また苦しくなるじゃないですか。



まさしくそれなんだよね。だから、毎期から1人出すってことをやるんだ。そういう風習がないと、特定の期に集中してしまったりするから。



なるほど、特殊な教育や経験を積んだ人が気づいたらほとんど退職してました、っていうのを防ごうと思ったら、毎年コンスタントに養成しないといけない。だから人事に採用期別が深く関わってくるんですね。



ちなみに、今言ったのは主に幹部の話だけど、実は曹士にとっても入隊期別は重要だよ。特に3曹昇任の選考なんて、モロに期別で見られているからね。
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ライバルにして、家族。



しかし、そうなると同期とは競争関係にあるわけですか。結構、ピリピリした関係になりません?



いやいや、そんなことはないよ。むしろ、高校や大学の友だちより、同期の方が仲いいくらいだよ。



えー、そうですか?それって先パイが高校・大学で浮いてただけでは?



くっ……地味に否定しづらいところを……。



ね、船務長もそう思いますよね??



うむ。確かに、否定はせん。



このヒトも似たり寄ったりなんだよなぁ……



特にA幹の同期意識は強烈だ。このあたり、曹士の入隊同期とは、少し雰囲気が違うかもしれん。



人事管理上、比較されるからですよね。



それだけではない。一番違うのは共有する経験の長さと過酷さだ。



あっ……、



海士の入口教育は4ヶ月。教育隊では大変な思いをすることになるが、それでも江田島や小月ほどではない。



A幹は、まず期間が長い。まる1年も続くのだ。江田島の前に小原台刑務所を経由すればさらに長いぞ。通常で4年、Age of Empiresプレーヤーなら5年追加だ。



日々教官にしばき倒され、時間に追われ、互いに協力しあわなければ、生活すらままならない。夏の夜ともなれば室温30℃超の居室で互いに裸体を晒しながら床で涼をとる。若さを持て余した若い者同士、何も起こらぬわけもなく……



……(ゴクリ



互いの欠点をあげつらい、罵りあい、それはもうバチバチだ。あ、拳を交えると懲戒処分だから、気をつけろよ?



あ、そうですか。



とは言え、いつまでもいがみ合っている馬鹿はそうそういない。ある程度時間が経てば、お互いに折り合いを付けられるようになる。そうやって、ぶつかり合いながら、極めて濃密な経験を共有するのだ。1年も過ぎた頃には、幹事付の声真似だけで1晩は呑めるようになる。



それに、単に経験を共有しているだけではないよ。卒業した後も、同期とはなにかとお世話になるんだ。なんと言っても、違う部隊で同格の配置に就いているからね。部隊間で調整が必要な場合、同期と調整することになる可能性が高いんだ。



あー、出世のペースもある程度横並びなんですもんね。



近場にいる部隊なら2~3か月に1回、関わりの薄い人でも2~3年に1回くらいはどこかで同じ仕事に携わる。そこで交わされる会話は、どっちが貧乏くじを引くか、とか結構生々しい話になる。



結局、仕事仲間ですもんね。



部隊間の利害関係も出てくるから馴れ合ってはいけない領域もある一方、大変な経験を共にしてきたという親愛感。これらが入り混じるからこそ、同期はすごく特別な存在になるんだ。
「同期」を題材にした映像作品は結構ありますが、私がダントツでオススメしたい作品……それは戦争映画ではなく、なんと特撮「ウルトラセブン」です。
宇宙ステーションV3のクラタ隊長は、主人公たちウルトラ警備隊のキリヤマ隊長と地球防衛軍の士官学校同期という設定のゲストキャラです。初登場時からして、キリヤマとクラタは生きて再会できたことを喜びつつも、部隊間の対立が表に出て緊張状態に至ります。互いに譲れないものがありながらも、敬意と信頼は決して揺るがない。その「濃さ」から、クラタは全49話中4話(第13話「V3から来た男」第35話「月世界の戦慄」第48~49話「史上最大の侵略」)にしか登場しないにも拘わらず、準レギュラーと錯覚するほどの存在感を放っています。他にも、ごく当たり前に行われる10度の敬礼とか、見所は盛りだくさん。
キリヤマとクラタの特筆すべき点は、その背景設定すら知らずとも、自然にそういう関係なのだと理解出来るところにあります。ウルトラシリーズにはその後も、時折そういった設定の人物が出てくることがありますが、この2人ほど「同期の軍人」らしさを自然体で表現したものはありません。演じる中山昭二・南廣は共に戦前の生まれであり、軍人の習性を知る機会も少なからずあったのでしょうが、それを「子供だまし」と軽んじられていた特撮で余すところなく表現した点は賞賛に値します。
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前作の「ウルトラマン」は「ウルトラQ」の続編であり、怪奇現象としての怪獣がもたらした混乱を解決する話であったのに対し、「ウルトラセブン」は明確に地球侵略を企む宇宙人との戦争を描いており、軍事色の強い作品となっている。
高度経済成長のもと浸透した科学万能主義、軍拡競争の苦々しさ、「守られる側」のあるべき姿、日本人から忘れられつつある沖縄など、1960年代末期の社会情勢が色濃く反映されて生まれた独特のドラマは唯一無二のものとなっており、今なおシリーズ最高傑作との評価も。



大学までの同窓生は、卒業した瞬間からどんどん関係が薄れ、プライベートで相当な努力を重ねないと、会うこともなくなっていく。でも、海自の同期は仕事でやり取りする以上、必然的に関係を維持することになるんだ。



確かに。小学校の同級生、まだ近所に住んでるんですけど、卒業してからは一度も会ってないですね。



曹士の入隊同期より圧倒的、というのはそういうところだ。教育隊の場合、単に期間が短いだけでなく、修業後の任地はバラバラになるし、配置的に関わることも少ないからな。



その点、A幹に劣らず、というより、もっと団結が強いのが、航空学生だ。ちょうどいい、飛行長を見てみろ。



ん、なんか電話されてますね。



……はいはい。予備日使うことになったから、入港が明後日にズレ込むんだな?大丈夫大丈夫!きちんとリスケするから。任せとけ。おう、それじゃあな。



……何の話をしてるんですかね?



飲み会の調整でしょ。明日入港予定だった艦の飛行長が、航空学生同期なんじゃないかな?



うむ。ウチの飛行長は良い歳してチャラチャラした外観だが、元はと言えば、江田島とは比べものにならない小月の地獄を乗り越えてきた猛者だ。航学の結束力たるや凄まじく、事ある毎に同期と酒盛りを敢行している。



単に酒が好きなだけでは……?



キツければ良い、などという戯言を言うつもりはないが、実際、キツい課程ほど同期の団結は強固になる傾向がある。通常、専修科程度ではそれほど団結心が生まれないものだが、開式スクーバ課程や特別警備課程のようにトコトン追い込まれる課程の場合は、話が別になる。



やれやれ、聞こえているよ、キミ達。
確かに、他の採用区分に比べると、航学の同期の団結は強固かもしれないね。我々は、ちょっとした気の緩みが生命に直結する。生活のキツさも、勤務への意識も、普通の学生並みという訳にはいかないんだ。



それに、期間も航空学生課程と操縦士基礎課程だけで2年近くあるからね。固定翼・ヘリ・TACCOで途中分岐するけど、最後まで一緒にいる連中は、実に4年間も一緒だ。その後の部隊実習に、飛行幹部候補生の期間まで合わせれば、6年にも及ぶ。



そう。言うなれば運命共同体。互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。一人が同期のために。同期が一人のために、だ。



そのとおり。私にとって、同期は……そう、兄弟や家族みたいなモノさ。



嘘を言うなっ!
お前も!お前も!お前も!!俺のために



うるせぇぞ、さっきから!!黙って仕事しろバカどもが!!
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同期を大切に!
翌日



なっ!?何これーー!?



どうした?



今朝、群の水雷幕僚から送られてきたメールだよ!ウチの艦が来月、名指しで訓練させられることになってる……!!つい先日やったばっかりなのに!



しかも、本文見たら、「群司令の強いご意向により」とか書いてる……!何がマズかったんだ……!?どうしよう……???



んー?なんかやらかしたっけ?まあ、対潜に限らず、ウチは成績低いからなぁ。



こりゃ、睨まれてる……もう、ダメだー!



やれやれ……何を騒いでいるのだ。どれほどしばかれても、別に命まで取られるもんでもなかろうに。



仕方ない。ここは私が一肌脱いでやるとしよう。



何か手があるんですか!?



何のことはない。運用幕僚か、通信幕僚あたりを捕まえて、真意を訊きだしてやる。



あ、そうか。運用幕僚と通信幕僚は船務長の同期……!



なんだ、先野か。どうした?



なんだとはなんだ。この私が電話してやっているのだぞ。
キミが中級船務で優等賞を取れたのは、一体誰のおかげだと思っている。



……え?ゴメン、何かしてくれたんだっけ?
忘れてたら、本当に申し訳ないんだが、思い出せない。



愚かな。この私が何もしないでやったから、キミは優等賞になったのだ。



相変わらず、お前が何を言ってるのか、まるで分からんよ。……で、用件はなんだい?



今朝水雷幕僚が送ってきたメールだ。一体何だ、あの文面は。
群司令は突然何を思いついたのだ?



あー、あれか。いや、昨日ちょっと司令官報告する機会があってな。そしたら、最近、訓練発射の成績が押し並べて悪い、発射以前の訓練が足りてないんじゃないかって司令官がぼやいてたもんで、群司令が話合わせているうちに、来月訓練することになってしまったんだ。



ほう、それでアレか。来月、予定が空いてそうな艦はウチしかいなかったから、とりあえずウチの艦でやることになったと。



ま、平たく言えばそういうことだね。



ありがとう。言ってることは理解した。
だが、ウチの水雷長は肝っ玉の小型化が進んでいてな。いいかね、繊細な生き物なのだ。水雷幕僚を指導しておけ。自分の言葉が他人にどういう印象を与えるか、もう一度そのミニマム脳味噌と節穴EYEでクソお確かめの上、事前に下調整してからああいうメールを送れと。



へいへい、すまんね。



というわけだ、水雷長。別にウチの艦がどうこうという話ではない。が、やらなければならんのは変わりないから、とりあえず準備しておけ。



よかったー。ありがとうございます!



それはそうと。先日送った、昨日期限の情報保証の調査、いつになったら回答もらえるのかな?あと「ひとなみ」だけ出してくれれば、EFに送れるんだけど。



……。



大変申し訳ございません!2時間以内にとりまとめの上、回答させていただきます!



明日の朝イチに出せばなんとかなるから、そんなに急がなくて良い。今日中でいいから、正確にやってくれ。
まだ「ひとなみ」だけ遅れてるって誰にも言ってないから、安心しろ。



ウヘヘ……!ご高配に感謝いたします……!



……。



それから、やっぱりこの夏で群司令交代するみたいだわ。



コホン。……やはりそう来たか。で、後任はどっちだ?Tか?Kか?



どうもK1佐らしい。



凶報だな。となると、例の新方式とやらを群でやろうとしてくるだろうな。



間違いなくそうだろう。で、そうなった場合「ひとなみ」で試行して欲しいんだよ。



正直、やりたくはないな……。だが、他の艦でやれば大変なことになるだろう?仕方ない、ウチで引き受けるか。別に無理に成功したという体裁にしなくても良いんだろう?



ああ、上手く行ったらラッキーだが、正直そんなには期待してないと、首席幕僚も言ってるから、辻褄合わせはしなくていいはずだ。群司令替わったらすぐやれと言うことになるだろうから、今のうちから準備しといてくれよ。



良いだろう。ではな。



本当に、ありがとうございます。



なに、こういう時、余計な腹芸なしにぶっちゃけ話を出来るのが同期の強みだからな。キミが彼らと話せばどうしても余計な遠慮が入る。



実にありがたいものだな、同期とは。話していれば、こうして非公式な情報も入ってくるしな。キミはそういう付き合いを嫌っているようだが、悪いことは言わん、ここで仕事をしたければ、同期とは仲良くしておきたまえ。



うーん。。。打算で仲良くするっていうのは、なんだかなぁ……。



こういう考え方は嫌いだろうな?キミは。
だが、そういう打算はさておいて、やはり同期とのコミュニケーションは重要なものだ。



この組織の中で、信用に足る人物などそうそういない。同期はその数少ない例外になり得る。無論、同期だから無条件、とはいかんがね。



それは……わかります。同期って、理屈じゃないですよね。ボクも、海自に入って一番よかったのは同期ができたことだって思います。



ああ。とは言え、所詮は人間同士の付き合いに過ぎんことは忘れるなよ。「同期の絆」に甘えて適当なことをやっていると、いずれその絆も失われることになる。別に、飲み会に行けとか、ゴシップを交換しろというのではない。ただただ、同期から忘れられたり、軽蔑されたりするような生き方は避けるのが賢明。そういう話だ。



ええ。そうならないように気をつけます。
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あれ?砲術士。まだミニチャートやってたの?



ええ。ようやくコツが掴めてきました。あとちょっとですね。



で。通信士は?



海図係と調整することがあるって、艦橋に行きましたよ。



ふーん。まぁ、今は分隊士業務も特にやることないから、別に良いんだけど。一義的には通信士や船務士がやるべき仕事でしょ?それ。
嫌だったら断って良いんだからね?言いづらかったら、ボクからも言うし。



いえいえ、そんな。大丈夫ですよ。普段から通信士には助けてもらってますから、こういう時くらい、ですね!



そう?まぁ、いいけど。



……通信士、れーちゃんは、私が足を引っ張っちゃいましたから。
れーちゃん、本当は「まや」通信士だったんですよ。1年目イージス艦の通信士。ピッカピカの内示だったのに、遠洋航海の帰国直前に急に「ひとなみ」だって言われて。私や機関士みたいなダメっ子がいるから、穴埋めでセット販売にされちゃったんです、きっと。



うん……なんとなく、聞いてはいる。正直、残念な話だよね。



れーちゃんとは防大の中隊も、候校の分隊も一緒でした。私はバカだから、れーちゃんの世話になってばっかりです。本当に申し訳ない。だから、これぐらいはやらないと。



そっか……。じゃあ、ボクはもう行くけど、あんまり無理はしないようにね。



はい、お疲れさまです。



……ボクも、梶くんにはお世話になりっぱなしだもんな。この恩を返せる日は来るんだろうか……。
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悪い、遅くなった。



あとちょっとのところまで来たよ。



そう。ありがとう。



その……、恵。
私は、この艦に来たこと、後悔してないから。



私は今でも覚えてる。カッター訓練でお前に助けられた日のこと。それから私とお前はいつも一緒だった。



ああ……そんなこともあったね。



だから、あんな機関士とは一緒にするな。同期は同期でも、お前はただ机を並べただけの相手じゃない。私にとってお前はお前。この世でたった一人しかいない。



うん。そうだね……。



これまでなんとか一緒に過ごせてきたけど、それもこの艦がきっと最後。あと1年もしないうちに、お前とは離ればなれになる。だからこそ、同じ艦にいられる今を大切にしたい。私はお前とならどこまでも行けるんだから。



だから、変な遠慮はしないで。



そうだね……。そしたら……



12.7ミリ機関銃射撃の指揮官胸算が出来なくて困ってるんだ。手伝ってくれる?



……ぷっ、



何を言うかと思えば!
……いいよ、ミニチャートが終わったら、それも一緒にやってしまおう。



やったー!ありがとう!
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同日夜



おっ、今から上陸するところ?



うん。梶くんも?



おれも。
急な話だけど、このあと一杯どうだい?



あー、ボクは……



……いや。特に予定もないし、一緒に行こうかな?



そう来なくっちゃ。早く行こうぜ。今日は艦内同期会だ!



うん……!
この記事では、幹部候補生学校や教育隊における「同期」の重要性について、次の内容を説明します。
- 同期とは
- ある教育を同じ「期」に受けた同僚。
- 特に、入隊最初の教育(一般幹部候補生課程や練習員課程)や自衛官人生の大きな転換点となる教育(海曹予定者課程や幹部予定者課程)を指すことが多い。
- 採用期別は人事管理に大きく影響するので、意識する機会がなにかとある。
- 同期は実務上の利害関係と親愛の情が混ざり合った、複雑な結束力を持つ。
- 特にA幹(防衛大学校・一般幹部候補生)や航空学生は、教育期間が長く、多くの過酷な経験を共有していることから結束力が強い。
- 昇任等の選考は期ごとに行われるので、同期は最も分かりやすい競争相手でもある。
- ある教育を同じ「期」に受けた同僚。
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- 同期は、海自で手に入るものの中で、最も価値あるもの
- 実利的には、非公式な情報共有の媒体となり、業務調整時、腹のさぐり合いを最小限に留められる相手になる。
- 精神的には、理屈抜きに繋がることのできる、数少ない友人になる。
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