この記事では、入隊希望者の採用試験合格を支援するため、次の内容を説明します。
- 一般幹部候補生採用試験の2次試験は、小論文・口述試験・身体検査からなる。
- 2次試験は幹部としての資質を問う試験
- 2次試験対策の開始時期
- 1次試験までは1次試験対策に集中し、終了後すぐに2次試験対策に取りかかるべき。
- ただし、近年は1次試験から2次試験まで1か月程度しかないため、あまり余裕はない。苦手な人は1次試験対策より前からトレーニングをした方が良い。
- 小論文
- テーマを示され、それに対する自身の考えを述べる。
- 文字数は約1600字。
- 原稿用紙1枚につき約800字で、以前は原稿用紙1枚であったが、令和4年度試験以降は原稿用紙2枚に増量した。
- 問題のテーマは、かつて在日米軍問題や弾道ミサイル防衛など、防衛に直結するものが多かったが、近年は気候変動問題や経済問題など、広範な社会問題について問うものが増えている。
- かつては与えられた2テーマから1つを選択して答えるものであったが、現在の問題はテーマが1つだけ、関係する表やグラフとあわせて示されるようになった。
- テーマの広範化は、軍事分野の知識に特化した人には逆風となる。事前に専門家の意見を暗記しておいて引き写すようなことも出来なくなっており、より論理的思考力が問われる。
- 試験のコツ
- 聞かれたことに対し確実に答え、聞かれていないことには答えない。
- 序論・本論・結論の構成を守る。
- 口述試験(面接)
- 別記事参照。
- 身体検査
- 身長・体重・視力・聴力などの測定や、既往歴についての聞き取りなど、一般的な健康診断と同様の内容。
- 問題になることはあまりないが、時々抵触する者がいる。
やあ、1次試験の調子はどうだった?
フフフ……先パイ、一体誰に聞いてるんです?
この私の手に掛かれば、あの程度が問題になるとお思いですか?
お、おう……。まあ、出来が良かったなら、よかったね。
それはそうと、2次試験対策は進めてる?
ええ、ボチボチですが。このゴールデンウィークで一気にやってしまおうかと思ってます。
幹部たりえるかを問う2次試験
さて、2次試験では「小論文」「口述試験」「身体検査」が行われるよ。
内容からすると、1次試験とはだいぶ趣が違いますね。
うん。純粋に学力を測ろうとする1次試験に対して、2次試験は幹部としての資質を確認するのが目的なんだ。
要は「こいつ、本当に幹部にしちゃって大丈夫?」って。お勉強は出来ても、人格に問題があったり論理的に物事を考えられなかったりする人は、ここで弾かれるワケ。
なるほど、それなら私は大丈夫そうですね。
……いったい、この無限の自信はどこから沸いてくるんだろうか……
幹部にしてはマズい人間を削ぎ落とす、という観点から言うと、高得点を狙いにいく、というよりも減点されないようにする観点が大事になってくるよ。
小論文にしても面接にしても、クリティカルヒットを狙って難しい解答をするよりも、堅実で隙の無い解答をするべきだね。
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1次試験と並行して対策する必要はある?
今更ですけど、ひょっとして準備始めるの遅かったですかね?
1次試験と並行してやった方が良かったのかなと、ふと思ったんですが。
いや、大丈夫。
1次試験の時期は1次試験に集中すべきだと思うよ。2次試験対策の片手間に準備できるほど、1次試験は甘くないからね。
2次試験はそもそも資質を問うだけあって、数こなせばすぐに点が伸びるような性質のものでもないし。
ふむ……。でも、そう考えると、むしろ対策には時間が掛かるってことじゃないですか?
そこなんだよね。少しやったからって直ちに伸びるモノではないということは、時間をかけてしっかり勉強しておかないといけない。それはそのとおりだね。
一応気にしておかないといけないのは、この数年で1次と2次の間隔が狭まったことだね。試験が年1回しか無かった頃は、2~3か月くらい開いていたんだけど、今は1か月しかない。
2次試験対策に使える時間が減ってしまったということですね。
文章を書くのが苦手な人、口で説明するのが苦手な人なんかは、1~2か月と言わず、むしろ1次試験対策より前から少しずつトレーニングしないといけない。
時間がなくなったことも相まって、正直、これまでの人生で積み上げてきたものを問われる、という側面が結構強くなってるね。もちろん、時間が短くても、できる対策はしっかりやった方が良い。
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身体検査
まずは……そうだね。身体検査から。
所持品の確認でもされるんですか?
いや、ここでいう身体検査は健康診断みたいなものだね。
身長・体重の確認に始まり、視力、聴力、歯科に、既往歴の聞き取り、尿検査、手術痕の確認、関節はきちんと曲がるか、手足はちゃんと付いてるか……
なんか、穏やかでないのが混じりましたね……
冗談でもなんでもなく、ね。
事故で指が1本無くなった人なんて、世の中そんなに珍しくはないよ。護衛艦でも全乗員の中に1人くらいはそういう人がいる。
問題はそういう人が入隊できるか。正確な合否基準は知らないんだけど、使えない身体の部位が多い人は入隊できないんだ。
そういう明確な障害がある人以外で、この検査で落ちることってあるんですか?
あんまり例は聞かないなぁ。
でも太ってる人、痩せてる人は気をつけた方が良いね。募集要項に書かれている体重の基準から外れると、やはり合格が厳しくなってくる。
あとは虫歯の治療。未治療の虫歯が多いと不合格になるから、きちんと完治させていかないといけない。
私はどれも大丈夫そうですね。
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小論文
さて。小論文は、呼んで字のごとく、短めの論説文を書く試験だよ。
その場で示されたテーマについて簡単に説明した上で、自分の考えを書くんだ。
文字数
長さはどれぐらいですか?
約1,600字だね。
原稿用紙1枚が約800字(28字×29行=812字)で、令和3年試験までは1枚だったんだけど、令和4年からは2枚になったんだ。
あら、長くなったんですか……。試験時間は変わってないんですか?
うん。でも、1枚に収めるのがすごく大変だった記憶があるから、2枚になった今の方が楽なんじゃないかな?
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テーマ
テーマはその場で示されるって言いますけど、どんなものが出るんですか?やっぱり軍事関係の話題ですか?
そう思いがちだけど、実はそうでもないんだよね。
特に近年は軍事とは関係なさそうな話題もたくさん出てるよ。
- 令和元年
- 「入国管理法の改正」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「TPP11」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「IoT」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 2018年6月に行われた「米朝首脳会談」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「インバウンド景気」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「サイバー攻撃」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 2019年10月から予定されている「消費税増税」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 2016年11月に発行された「パリ協定」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 令和2年
- 政府の推進する「働き方改革」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 香港における政府への抗議活動について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 我が国の人口動態の推移について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「米中貿易摩擦」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 我が国のAI技術の動向について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 最近の日韓関係について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 我が国の最近の異常気象について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「第4次産業革命」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「我が国におけるサイバーセキュリティ」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「量子コンピュータ」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「キャッシュレス決済」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「シェールガス/メタンハイドレート」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「保護貿易主義」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 令和3年
- 「行政のデジタル化」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「ダイバーシティ」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「高度プロフェッショナル制度」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「5G」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「インフラの老朽化問題」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「生体認証」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「アクティブ・ラーニング」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「日米貿易協定」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「児童虐待」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「スマートシティ」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「新しい生活様式」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「標的型メール攻撃・ランサムウェア」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「カーボンニュートラル」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「英国のEU離脱」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「改正出入国管理法」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
- 「IoT」について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
(令和元年~令和3年 一般幹部候補生試験問題より引用)
おお……色々ありますね。でも、確かに軍事色はあんまり強くないですね。
ボクが受けた頃は「弾道ミサイルの防衛対処」とか、「在日米軍の再編」とか、「東シナ海における中国の防空識別圏の拡張」とかそういう話題も結構多かったんだけどね。最近はこういう具合に広範な社会問題を問うものがほとんどだね。
テーマがたくさん並んでますけど、この中から選べば良いんですか?
まず、受験日によって出る問題が違うから、これら全てに出くわすわけではないね。で、令和3年までは1日につき2テーマを与えられて、どちらかを選択すればよかった。
令和4年以降では、選択の余地なく、1テーマだけを与えられるようになったよ。付与の仕方も、テーマを単語だけ与えておしまい、って感じではなくて、関係する表やグラフも加わるようになったんだ。問い方も少し具体的になったかな?
- 「AI(人工知能)」について、下記の内容を確認し、AI技術の進展に伴い生起すると考えられる課題と解決策についてあなたの考えを述べなさい。
- 併せて、AIやディープラーニングに関する説明と、AI導入による業務の効率化事例やその効果が列挙される。
- 「テレワーク」について、下記の内容を確認し、テレワークの導入が急激に進むことの問題点と解決策についてあなたの考えを述べなさい。
- 併せて、テレワークの説明と、企業における導入状況(推移と資本金別の導入状況比較)が列挙される。
(令和4年 一般幹部候補生試験問題より引用)
ふーん。なんとなく、採りたい人材ってのが見えてきますね。
そう。令和になった頃から、問題は明らかに従来のモノから変わってきている。
これは、まず「『軍事バカ』は要らない」っていうメッセージだと考えるべきだね。普通のニュースには目もくれず、来る日も来る日も軍事のことばかり考えてる人。
たとえ中国の東海艦隊の全所属艦艇と、その搭載ミサイルのスペックを暗唱できるとしても、社会的な常識が無い人は……少なくともA幹として採用する気はないってこと。
先パイ、良い時期に入隊しましたね?
ええい、黙らっしゃい!
常識なら最近身につけたわ!
しかし、そういう社会問題ってやっぱり大事なんですかね?
そりゃあ、もう。
まず、一般的な国民と全く考え方の違う人をリーダーにするわけにはいかないし。この国の抱えている問題を無視して軍事軍事……ってやってる人が意思決定するようになったら、国民と反目するようになってしまうよ。
それに、軍事は軍事だけで動くものではないんだ。紛争が起きるときには、当事者になにか解決したい問題があって、その手段として軍事的な活動が選択されるだけに過ぎない……。だから、一見すると軍事に関係なさそうな話題でも、実は安全保障と密接に関係している……ってものはたくさんあるんだ。
だから、広い視野でものを見られる人がリーダーには必要なんだ。
なるほど。
だからか、情報通信技術(ICT)やAIに関する問題が結構ありますね。得意分野なので、そういう問題に上手くあたればいいなぁ。
このあたりは一般社会でもホットな話題だけど、自衛隊としても急速に能力整備を進めている分野だからね。他にも、エネルギー、気候変動、経済といった問題は、軍事オタクがあんまり手を付けないけど、安全保障に直結する話題だからか頻出。
そういう時事ワードみたいなのをきちんと押さえておかないと、厳しいわけですね。
もちろん事前に理解しておくに越したこと無いんだけど、令和3年以前と違って、言葉の意味自体は問題文で説明してくれるようになったから、何が何でも100%理解しておく必要はなくなったよ。
このあたり、やっぱり知識を詰め込むだけ詰め込んでくる軍事オタクには逆風と言えるね。以前は出そうなワードについて述べている専門家の意見を丸暗記して引き写せば、それらしい文を書けたんだけど。
今の問題は意味までは説明してくれるから、意味とデータを組み合わせて自分の考えを説明しないといけなくなってしまったんですね。
そういうこと。まさしく、従来の知識問題から論理的な思考力・文章力を試される試験へと転換しているんだ。
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小論文のコツ
小論文を書くコツって何かあります?大学で読み書きしてる論文とは違うんですかね?
根本的な考え方はそう大きく変わらないんだけど、小論文の場合、何と言っても文字数の制約が圧倒的に大きい。
だから、学術論文に登場するような論文全体の要約やら、先行研究の有無やら、そういうのはもちろん無い。
小論文は、この手の公務員試験に特有の慣習とも言えるものだから、練習をしようと思ったら、とりあえず1冊参考書を読んでみると良いかもしれない。
別に、絶対にこの本じゃないといけないってことはないと思うけど、書店で色々見た感じ、ボクはコレがベストだと思ったよ。
何と言っても、受験者が書きがちな文を載せて、それに対してどこを直すべきなのかが明示されているし。
あー、分かります、それ。
正答例だけ載せられても、そこからどのぐらい外れて大丈夫なのかが分からないんですよね。
こういう参考書をザッと読んだら、過去問から実際に文を書いてみるといいよ。自分の考えをまとめるのに、どのぐらい時間が掛かるのかは把握しておいた方がいいからね。
なるほど~。
他に、先パイは気をつけていたこと、あります?
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コツ① 聞かれたことに対し確実に答え、聞かれていないことには答えない。
まずはコレ。
聞かれたことに対し確実に答え、聞かれていないことには答えない。
?
問題文は毎年同じような聞き方をしてくるけど、必ず何を訊いてるのかを確認しないといけない。
例えば、さっき挙げたこの問題。
我が国のAI技術の動向について、その概要を記し、あなたの思うところを述べなさい。
令和2年 一般幹部候補生試験問題
「AI(人工知能)」について、下記の内容を確認し、AI技術の進展に伴い生起すると考えられる課題と解決策についてあなたの考えを述べなさい。
令和4年 一般幹部候補生試験問題
2問ともAIについて問われている問題だけれども、訊ね方が違うんだよね。
なるほど、前者には「概要を書け」と書いてるんですね。
ということは、前者の問題では「AIとは人工知能のことで……」というのを書かないとダメってことですか。
そのとおり。「概要を記せ」と言われている以上、概要を記さないと間違いなんだ。
後者の問題は何も書いてないですけど、概要は書かなくても良いってことですね?まぁ、問題文に書いてますから、わざわざ書くこともないと思いますし。
書かなくていい……というよりは、書かない方がいい。
何故なら「訊かれていないから」。
文字数は、訊かれたことに答えるためにフルに活用すべきであって、答えるにあたって不要な、余計な飾りを入れていると「文字数の水増し感」がすごくなる。
やっぱり、そういうのってバレます?
もちろん!
なんて言ったって、採点している幹部自衛官自身、そういう水増し文を書いては指摘されっていうのをくり返してきているからね!必要ない文を入れるとすぐにバレるよ!
すごく嫌な理由だった……
海上自衛隊では、事ある毎に「所感文」というヤツを書かされます。これは型式も長さも、まさしく「小論文」のようなもので、学校に入校したら所信表明の所感文、1術校の教育参考館を見学したら先人達に思いを馳せる所感文、修業したら学校内での反省と部隊に戻った後の所信表明の所感文……と、盛りだくさん。特に、学校への入校機会の多い幹部は、1尉昇任までの数年間の間に平均して年3~4回は所感文を書くハメに。多くの幹部は最早、教育参考館に一切足を踏み入れることなく、見学所感を書けることでしょう。
「まるで内実を伴わない所感文に意味があるのか……」という声は根強いのですが、筆者は「中身のない文を見分ける力」を育てるため、結構有用なのではないかと考えています。
なにせ、こういう機会でもないと、皆さんが書く文は一般命令と服務事故発生報告と安全第1報ばかりになってしまいますからね!
あとはそのテーマについて知識があるからって、それをひけらかそうとして、聞かれてもいないことをくどくど書く人もいるけど、それもNG!
あー、気をつけないといけませんね。
……お互いに。
ちなみに、以前の問題にあった「あなたの思うところを述べなさい」っていうのは、実のところ「課題と解決策を述べなさい」と全く同義、という暗黙の了解があったんだ。「思うところを」って言うから「ボクは○○は素晴らしいと思います!これからも頑張ってほしいです!」なんて書いたら一発アウト。
理不尽な……
というわけで、小論文で訊かれるのは、ほとんどの場合「課題と解決策」になる。この問題の場合「AI技術の進展に伴い生起すると考えられる課題と解決策」だね。
オーソドックスなところでいくと「人間の仕事が奪われる」とか、そのあたりですね。資料の「導入効果」に「熟練者のノウハウ継承」って書いてますし。それまで必要とされてきた熟練者がお払い箱になって、失業する恐れがありますね。
まさに、そういう考え方で取り組むと良いね。令和4年以降の問題に添付されている資料には必ずヒントが書いてある。
資料にない話はやっぱり避けた方がいいですか?例えば、電力消費量の増大とか。
もちろん、そこで論理をしっかり通せるならダメって事は無い。
でも資料に全く登場しないような話を書いても、正直、得るものは無いよ。採点者が想定もしなかったような、超独創的なアイデアはここでは求められてないからね。
あくまで、与えられたテーマに対して論理的な解答を返せるかを問われているんだ。
あとは「進展に伴い生起すると考えられる」とある以上、もとから顕在化しているような課題を書くのも避けた方がいいね。
例えば「思考のプロセスが見えない」なんて事を課題に据えると、ちょっと変な感じになる。どうしてもそのネタで書きたい場合「思考プロセスの見えないAI同士の業務調整に基づき社会が動くようになり、社会全体の意思決定が不透明化していく」くらい、将来像が欲しいところ。
……で、忘れてはいけないのがもう一つ、「解決策」を書かないといけないこと。
今の例だと「人間の仕事が奪われる」の解決策ですよね。
AIに学習データを提供するスペシャリストに転換させる……いや、失業者に新しい分野の職業訓練を施す……、いや、そもそもそんな急に導入して業態を転換させないようにする……・?
ひとつの課題に対しても、解決策はひとつではないでしょ?
だからと言って、思いついたのを全部並べると全部中途半端になってしまうから、特に有力なのを1つ2つ、多くても3つくらいに絞って書くんだ。
それから、解決策は、ただ書くんじゃなくて、どうやったらそれを実現出来るのかも検討されていると、なおよろしい。
そして、解決策について、気をつけないといけないのはきちんと課題と対応させること。
「人間の仕事が奪われる」に対して「著作権法上の位置づけを再整理する」なんて解決策を書いていたら、どうなるかな?
それは、生成AIが既存の著作物の権利を侵害する/しないの話ですよね。
あれ?でも、熟練者の作業要領をAIがコピることを制限するっていう話に持っていけば使える……のか?
それはちょっと無理筋だと思うけど。
仮に論理さえ通るなら、それを押し通すのもアリだよ。ただ、パッと聞いて違和感があるなら止めた方が無難。採点官も全く同じ事を考えるから「コイツ、表層的な言葉を並べてるだけじゃねぇか!」と思われたらそれでおしまい。わざわざそんな危険な橋を渡る必要はないね。
確かにそうですね。
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コツ② 序論・本論・結論の構成を守る。
一応アドバイスしておくと、序論・本論・結論の3段構成は死守した方が良いよ。
あー、まぁ今更感はありますが、一応聞いておきますか。
「その論文で何を論ずるか」を書く。
文量によっては、なぜそれを論ずる必要があるのか、その論文で導き出す結論の概要は何か、まで記載する。
実際にテーマについて論ずる。何故その結論を導き出すのかが分かるように、根拠を踏まえて主張する。
論文全体について振り返り、まとめる。序論とほぼ同じ内容を記載することもある。
※ 序論:本論:結論=「1」:「5~8」:「1」 くらいの文量が妥当
まず、序論。
この手の文書は「結論から書け」とよく言われるように、文意としての「結論」は文章構成上の「序論」に記載しておいた方が吉と出ることが多い。
学術論文だと「この論文では○○が××であることを、△△の実験によって証明する」なんて出だしでスタートしますね。
そこまでガッチガチに固めていくかは、個人の好みによるかな?
ボクはそういうテンプレートに従うのが好みだね。もう、序論さえ読んどけばそれ以降読む必要が無いくらいに固めておけばいいと思ってる。
だけど、人によっては、小論文はもっと自由に書いた方が良いって人もいる。自然科学と社会科学の考え方の違いも多少あるのかな?
で、本論。
これはもう説明の必要が無いと思う。具体的な内容はここに全て書く。
そして結論。
ボクは、序論をコピペして、ちょっとだけ言葉を換えるのが好み。
まあ、そうですね。
この構成が大事なのは「構成を守っていた方が読み手に分かりやすいから」なんだけど、それ以上に「ブレない文が書けるようになるから」なんだよね。
だから、序論・本論・結論の骨組みを作って、そこから文を肉付けすると良い感じになるよ。
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実際に書いてみよう!
ここは一つ、例題を出してみよう。
島嶼防衛について、我が国が抱えている課題と解決策を述べよ。
あれ?今はこういう問題は出ないんじゃ?
あくまで文の作り方を学ぶための例題だから、この際、問題としての蓋然性はナシ!
まず、一番核になる、課題と解決策が何かを明らかにするんだ。ぶっちゃけ、それを決めてしまえばあとはおまけ!そう言っても過言ではない!
島嶼防衛について……って、何を書くんですか?
このテーマにおける課題は「対象国艦艇が島に接近することを阻止できないこと」で、その解決策として「スタンドオフミサイル(=敵防空圏外から攻撃可能なミサイル)を保有すること」とするよ。
さらっと流してしまったけど、ここの課題が何かを決めるというのは本当に重要で、課題設定をミスると後が全部台無しになるから、実際の問題を解くときには、落ち着いてよく練らないとダメだよ!
あくまで今は書き方の解説だから、結論ありきで書いてるだけ!
課題:対象国艦艇が島に接近することを阻止できないこと
解決策:スタンドオフミサイルを保有すること
次に、さっきの課題と解決策をどうやって主張するか考えよう。
まず、与えられたテーマと課題を結びつけるもの……つまり課題が課題になる理由を明確にする。これはそんなに難しくないはずだよ。
わざわざそれを課題に挙げようとするくらいですから。自分でその理由が分かっていなければ、課題にしようとは思わないですね。
そういうこと。ただ、それを明文化しようと思うと、また話は別なんだ。枝葉末節を取り払って、何が本当の理由なのかを見極める。
この場合、「対象国艦艇の対空ミサイル射程が、自衛隊の対艦ミサイル射程より長く、有効なダメージを与えられないから」が理由になる。
……そうなんですか?
そうだよ。
それから、解決策については「何故その策によって解決出来るのか」を書く。
この場合だと……ミサイルの射程が長ければダメージを与えられるようになるから、ですか?課題の理由は射程が短いからダメって言ってるんですよね。なんか、安直じゃありません?
いや、それこそが大事なんだ。「射程の短さが問題になるんだから、射程を長くしてしまえ」ここには、論理の矛盾が一切存在しない。だから、論文としてケチの付けようが無いんだ。
世の中、これほど単純な解決策のある問題なんてそうそうないから、課題たる理由と解決策たる理由が一致しないことも珍しくはない。でも、その乖離が大きくなるほど、論理に矛盾が生じやすいのには注意が要るね。
うーん。そうしたら、課題たる理由と解決策たる理由がキレイに一致しないなら、課題や解決策の設定を見直した方がいいんでしょうか。
それも一つの手だと思う。なにせ小論文は短い紙面でキレイにまとめないといけないから、論証に手数が要るような方向に持っていくのは危険だよ。
そしてもうひとつ。解決策を提言するなら「それを実行するには何をするべきか(何が必要になるのか)」も述べた方が良いんだ。より具体性が増すからね。
いわゆる方策というヤツなんだけど、「解決策を実施する上で障害になっていること」を書いても良いし、「解決策自体は実行できるんだけど、より効果的に実施するには、併せてやったほうが良いこと」を書いても良い。ただし、これらを混同しないことね。
この場合、とりあえずいくつかあげておくと、ターゲッティング能力の強化、陸海空の連携強化、ミサイル生産能力の強化、弾薬庫の拡充、輸送能力の強化……なんてのが思いつく。
こういうパーツは文字数を見ながら後で組み合わせていく。
- 課題
- 対象国艦艇が島に接近することを阻止できないこと
- 課題たる理由
- 対象国艦艇の対空ミサイル射程が、自衛隊の対艦ミサイル射程より長く、有効なダメージを与えられないから。
- 解決策
- スタンドオフミサイルを保有すること
- 解決策たる理由
- 射程の長いミサイルにより有効なダメージを与えられるようになれば、対象国艦艇の接近を阻止できるようになるから。
- 解決策に必要なこと
- ターゲッティング能力の強化、陸海空の連携強化、弾薬庫の拡充、輸送能力の強化など
もうこの時点で、どんな文章になるのかが見えてきたね。
さあ、これまで作った骨組みを基に、文を組み立てよう。
本論から作って、あとから要約して序論を書く人もいるけど、ボクは序論・結論を先に書いてしまう派。本論はいくらでも肉付け出来るから、文字数に合わせて調整すべき。
入隊後の所感文では、項目番号を割り当てて、章立てしていく必要もあるんだけど、この小論文では特に要らないから、そのまま序論を書いていくよ。
(序論)
島嶼防衛における我が国の抱える課題として、彼我のミサイル射程の差から、対象国艦艇の島嶼への接近を阻止できないことを挙げる。解決策としてスタンドオフミサイルの取得により対艦ミサイル射程を延伸することを述べ、併せて行うべき方策としてターゲッティング能力及びミサイル生産・保管・輸送能力の強化を提言する。
(149字:6行)
本当に骨組みのまんまですね。
そう。要旨は全てここで述べてしまうんだ。こうすれば、何と言っても書いているボク自身、何を書いてるのかワケ分からなくならない。
長さはどうでしょう?
ここでは全58行の紙面に対して6行を使ってる。約10%で、だいたいこんなものかな。20%までいってたら、ちょっと長すぎるよ!
併せて、ここで結論も書いてしまおう。
結論は本論の後に書いても良いけど、基本的には序論と大体同じ内容になるはず。だから、序論の後ですぐに考えた方がボクは楽だと思う。
(結論)
敵艦艇を離島周辺から排除することは、島嶼防衛を成功させる上で極めて重要である。したがって、スタンドオフミサイルの取得により対艦ミサイル射程を延伸することで、対象国艦艇と自衛隊のミサイル射程の差を埋め、離島への接近を阻止できない現状を改善する事が必要である。また、そのためには併せて、ターゲッティング能力及びミサイル生産・保管・輸送能力を強化することが必要である。
(181字:7行)
こっちが序論でもいい気がしてきました。
そして、これらの内容を基に、肉付けした本論を作る。
(課題の説明)
我が国の抱える課題は、対象国艦艇が離島に接近することを阻止出来ないことである。島嶼防衛に際しては、我が部隊を離島に展開して、敵部隊の上陸阻止又は上陸した敵部隊の排除を行う必要がある。この時、輸送艦は部隊の上陸や補給に重要な役割を果たすため、離島周辺に艦艇を展開出来るか否かは島嶼防衛の成否を大きく左右する。しかしながら、対象国艦艇の対空ミサイルは自衛隊の対艦ミサイルよりも長射程であるため、航空機や艦艇は対象国艦艇をミサイル射程に収めるより前に攻撃を受けてしまい、有効なダメージを与えることが出来ない。したがって、対象国は艦艇を離島へ展開して我が部隊を排除することが可能であり、この状況を改善しなければ島嶼防衛することができない。
(315字:12行)
ここは、まず課題が課題たる理由を説明するところ。
結論から説明していくか、理由から説明していくかが悩ましいところだけど、今回は理由から順を追って説明することにしたよ。
赤ラインは「離島の周辺に艦艇を展開できた側が勝つ」っていう背景の説明ですね。
で、黄ラインは今回「課題たる理由」にしている「敵の方が射程が長くてダメージを与えられない」って話ですね。
その結果、緑ラインの「敵は艦艇を展開できるけど、我々は出来なくなる」つまり「課題」が発生してしまうぞ、という流れですね。
そういうこと。背景の説明をどの程度入れるかはその時次第だけど、そもそも何で艦を送らないといけないのか、艦を排除しないといけないのかっていう前提条件の共有は、どこかで必要になってくると思う。
だから、赤ラインが最初に来るのはほぼ必須。その次に緑ライン、黄ラインの順に置いて、「敵は展開できるが我々は出来ないぞ。何故ならば~」と説明するのはアリじゃないかな。
(解決策の説明)
その解決策となるのがスタンドオフミサイルの取得により対艦ミサイルの射程を延伸することである。スタンドオフミサイルは敵防空圏外から攻撃することの可能な長射程ミサイルのことであり、射程距離のギャップを埋め、対象国艦艇が一方的に攻撃可能な現状を改善する。したがってスタンドオフミサイルを取得することにより、島嶼防衛の課題である、対象国艦艇の離島への接近を阻止することが出来るようになると言える。
(194字:7行)
これ、最後の一文がミソですね。
そのとおり。実はさっきの課題説明でもそうだったんだけど、「なんでその課題が課題たり得るのか」「なんでその解決策が解決策たり得るのか」の説明が終わったら、「説明しましたよ?今ので証明できましたね!?文句ありませんね!?」ていう確認の一文を入れると良いんだ。これを入れてやるだけで、文の説得力が格段に上がるし、読む人は「この話はここで終わりだな」と頭を整理することが出来る。
(解決策の補足)
次に、スタンドオフミサイルを取得し運用するにあたって、併せて行うべき方策を2つ述べる。第1に、ターゲッティング能力を強化することである。何故ならば、どこに発射すべきか意思決定できて、初めてミサイルは有効に機能するからである。従来の射程距離よりも遥かに遠距離に所在する敵艦艇を攻撃するには、人工衛星や無人航空機のような情報収集アセットに加え、それらが収集した膨大な情報を集約し処理する組織の整備が必要である。これにより、敵艦艇の所在を明らかにすることで、適切な攻撃の意思決定が可能になる。第2に、国内のミサイル生産・保管・輸送能力を強化することである。何故ならば、発射すべき現場の部隊に十分な数量のミサイルが行き渡らなければ、効果を発揮しないからである。ミサイルは海外から購入することも可能であるが、有事に際しては大量に使用されることから安定的なミサイル供給のためには国内の生産態勢を確立することが必要である。我が国の防衛産業は工場数を含め年々縮小傾向にあり、有事に際して増産に応えるための余地を失ってしまっている。弾薬調達のあり方を見直したり、向上の維持費用を国が負担するなどして、生産力を維持・向上させていくべきである。また、生産したミサイルを貯蔵する火薬庫も不足しているため、増設するとともに、不要になった古い弾薬の廃棄を進めるべきである。さらに、これらのミサイルを現場の部隊に届ける輸送能力を強化するため、車両や船舶のような輸送手段の増強に加え、貴重なミサイルをいつどこへどのように届けるのかを調整する仕組みを強化することが必要である。以上から、スタンドオフミサイルの取得・運用に際しては、ターゲッティング能力及びミサイル生産・保管・輸送能力の強化を併せて行うべきである。
(739字:27行)
ここで重要になるのは、箇条書きに出来るような書き方にする……つまり、第1に○○、第2に○○、という書き方をすることだね。そして、その説明をする前に、話をいくつ述べるのかも明示しておいた方が良い。
これも、読んでる人に分かりやすくするためですね。
そういうこと。
ちなみに、ここの方策は一番独創性が出やすいところなんだけど、それ故に脱線しやすいから気をつけてね。
さあ、清書してみよう。
島嶼防衛における我が国の抱える課題として、彼我のミサイル射程の差から、対象国艦艇の離島への接近を阻止できないことを挙げる。解決策としてスタンドオフミサイルの取得により対艦ミサイル射程を延伸することを述べ、併せて行うべき方策としてターゲッティング能力及びミサイル生産・保管・輸送能力の強化を提言する。
我が国の抱える課題は、対象国艦艇が離島に接近することを阻止出来ないことである。島嶼防衛に際しては、我が部隊を離島に展開して、敵部隊の上陸阻止又は上陸した敵部隊の排除を行う必要がある。この時、輸送艦は部隊の上陸や補給に重要な役割を果たすため、離島周辺に艦艇を展開出来るか否かは島嶼防衛の成否を大きく左右する。しかしながら、対象国艦艇の対空ミサイルは自衛隊の対艦ミサイルよりも長射程であるため、航空機や艦艇は対象国艦艇をミサイル射程に収めるより前に攻撃を受けてしまい、有効なダメージを与えることが出来ない。したがって、対象国は艦艇を離島へ展開して我が部隊を排除することが可能であり、この状況を改善しなければ島嶼防衛することができない。その解決策となるのがスタンドオフミサイルの取得により対艦ミサイルの射程を延伸することである。スタンドオフミサイルは敵防空圏外から攻撃することの可能な長射程ミサイルのことであり、射程距離のギャップを埋め、対象国艦艇が一方的に攻撃可能な現状を改善する。したがってスタンドオフミサイルを取得することにより、島嶼防衛の課題である、対象国艦艇の離島への接近を阻止することが出来るようになると言える。次に、スタンドオフミサイルを取得し運用するにあたって、併せて行うべき方策を2つ述べる。第1に、ターゲッティング能力を強化することである。何故ならば、どこに発射すべきか意思決定できて、初めてミサイルは有効に機能するからである。従来の射程距離よりも遥かに遠距離に所在する敵艦艇を攻撃するには、人工衛星や無人航空機のような情報収集アセットに加え、それらが収集した膨大な情報を集約し処理する組織の整備が必要である。これにより、敵艦艇の所在を明らかにすることで、適切な攻撃の意思決定が可能になる。第2に、国内のミサイル生産・保管・輸送能力を強化することである。何故ならば、発射すべき現場の部隊に十分な数量のミサイルが行き渡らなければ、効果を発揮しないからである。ミサイルは海外から購入することも可能であるが、有事に際しては大量に使用されることから安定的なミサイル供給のためには国内の生産態勢を確立することが必要である。我が国の防衛産業は工場数を含め年々縮小傾向にあり、有事に際して増産に応えるための余地を失ってしまっている。弾薬調達のあり方を見直したり、向上の維持費用を国が負担するなどして、生産力を維持・向上させていくべきである。また、生産したミサイルを貯蔵する火薬庫も不足しているため、増設するとともに、不要になった古い弾薬の廃棄を進めるべきである。さらに、これらのミサイルを現場の部隊に届ける輸送能力を強化するため、車両や船舶のような輸送手段の増強に加え、貴重なミサイルをいつどこへどのように届けるのかを調整する仕組みを強化することが必要である。以上から、スタンドオフミサイルの取得・運用に際しては、ターゲッティング能力及びミサイル生産・保管・輸送能力の強化を併せて行うべきである。
敵艦艇を離島周辺から排除することは、島嶼防衛を成功させる上で極めて重要である。したがって、スタンドオフミサイルの取得により対艦ミサイル射程を延伸することで、対象国艦艇と自衛隊のミサイル射程の差を埋め、離島への接近を阻止できない現状を改善する事が必要である。また、そのためには併せて、ターゲッティング能力及びミサイル生産・保管・輸送能力を強化することが必要である。
(1578字:58行)
おお、確かにそれらしく仕上がってますね。
本論の段落を途中で変える/変えないは自由だよ。この場合だと、解決策の補足に入るところで改行しても良かったかな?ただ、行数が足りないからちょっと削らないといけない。
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いや、改めて聞いてみると、普通の論文と似ているけど、ちょっとずつ違いますね。
2、3本も書けば、だいたいお作法は覚えるはずだから。
あとは、まともな文が書けるか否かは人間力次第!頑張ってね!
コメント
コメント一覧 (2件)
今年防衛大学校を受験しようと思っている高3生です。
いつも受験勉強の合間にこれをモチベーションの維持に使ってます。
質問なのですが、防衛大学校の小論文もここに書いてあるものと同じような内容でなのでしょうか。防大のホームページを見ても著作権の都合で内容がわかりません。
部活と勉強ばかりであまりニュースを見てこなかったのでよければ今からできる対策も有れば知りたいです。
ご質問ありがとうございます!
防衛大学校の小論文試験は、一般幹部候補生のものとは少し異なります。ただ、小論文のお作法自体は変わりませんから、この記事の内容も決して無駄にはなりません。
小論文の話をする前に、まず防衛大学校の採用制度は他の自衛隊の採用制度に比べ種類が多く分かりづらいので、念のため、公式サイトの受験要項をしっかり確認しましょう。
試験には2種類の区分があります。入校後に文理どちらを専門的に勉強するかを決める「人文・社会科学専攻」「理工学専攻」の選択が一つ目。そして試験の趣旨を分ける「一般」「推薦」「総合選抜」の選択が二つ目です。
この中で小論文の試験が登場するのは、「一般」(文理両方とも)、「推薦」の「人文・社会科学専攻」、「総合選抜」の「人文・社会科学専攻」ですね。
そして、「推薦」と「総合選抜」の小論文試験は、全く同じ問題が出題されます。
「一般」の小論文は近年の一般幹部候補生2次試験に近く、グラフや図表を示され、①そこから読み取れることを図を見てない人にも分かるように説明すること、②それを踏まえての問題点や解決策を述べることを求められてきました。よって①図を正しく読み取ること、②問題点を導出し解決策を述べること、の2点が必要です。
図の読み取りは人により向き・不向きがあるので、得意な人は対策不要です。苦手な人は、公務員試験の「資料解釈」を重点的に学習しましょう。
いずれの場合も、論理的な飛躍が起きないように注意しましょう。人口推移やエネルギー問題など、普段接することの多い情報を用いるため、実際には資料からは読み取れない「一般常識」を書いてしまう人が多いです。また、前半で読み取った内容と後半の問題点・解決策がリンクしない人も少なくありません。図⇒読み取った情報⇒問題点⇒解決策がきちんと繋がらないとダメです。
ただし、72期(令和6年度入校)「一般」の小論文の問題は、従来と出題形式が大きく異なるものでした。
「防衛大学校は、将来の自衛隊における幹部自衛官を養成する学校です。自衛隊の任務を考え、自衛隊の幹部が一般の会社の幹部と何が違うかを述べて、将来自衛隊の幹部になるために、これから防衛大学校で何を学んで行かなければならないかについて述べよ。」
この出題方式が恒久的に続くかは不明ですが、少なくともむこう1、2年くらいは継続されると思われます。一般幹部候補生の問題がデータの読み取りをさせる方向に変化したのに、何故防大入試がそこから離れたのかは分かりません。ただ、知識を問うのではなく思考力を問うという点では同じなので、対策はそう大きく変わるものではありません。
この問題の場合でも、任務に由来する一般企業の幹部との違い⇒それを得るために学ぶべきこと、と論理が通るように心がけましょう。
一方、「推薦」「総合選抜」の「人文・社会科学専攻」における小論文は、既存の論説文を示されて、①提示論説文の要約を行い、②その主張に対する自分の考えを述べます。
「著作権の都合で内容が分からない」というのは、こちらの試験のことですね。成山堂の過去問も収録されているのは「一般」のみなので、どのような文が出題されているのかは不明です。
が、ある程度想像は付くので、コツを述べます。
①提示論説文の重要なところは、最初か最後の方に書いてある。
論説文は序論・本論・結論からなり、序論・結論はその文章で述べたいことを端的に表現していることがほとんどです。
出題文は原文の一部を切り取っているので、切り取り方に影響されます。また、CS試験での要約問題ともなると、そういったお作法をガン無視した悪文を敢えて出題し、その真意を読み解けるかを試したりします。とはいえ、高校生相手に出す入試であることを考えれば、論説文のお作法をきちんと理解して、それを読み解ける人を選抜したいはずです。というわけで、序論か結論のどちらかは提示されている可能性が高いでしょう。
まずは、最初の段落と最後の段落をしっかり読んで、他の部分を端的に表現する内容になっていないか、確認するようにしましょう。
また、文をよく読むと、それ無くして主張を成り立たせることができない、キーワードとなる単語があるはずです。それを見つけ出して取り入れるのも要約のポイントです。
②考えを述べるときは、作者の主張に対する賛否を明らかにした方が楽
「自分の考えを述べる」と言ってもなかなか難しいもので、気をつけないと、提示文と全く関係ないことを述べてしまったり、作者が述べた内容をそのまま丸写しするだけになってしまったりします。
提示文に関係させつつ、自分のオリジナリティを出す、という難題を解決するためには、最初に作者の主張に対する賛否を書いてしまうのが良いでしょう。そうすれば、その後で賛同(反対)する理由を述べるだけで自分の意見を表すことが出来るからです。
いずれの小論文の場合も、とにかく時間内に、お作法通りに書き上げるトレーニングをしておかないことには、話になりません。
不安があるようでしたら、防大の過去問でなくてもよいので、公務員試験系の小論文参考書を使って数をこなしておきましょう。
学校の先生や、地本の広報官(幹部)に頼んで、自分の書いた文が論理的に通っているか、分かりやすい内容になっているか、添削してもらうことをお奨めします。
引き続き、当ブログをご愛読いただけますと幸いです。
採用試験の合格をお祈りしております。