この記事では、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)戦略について、次の内容を説明します。
第1回
- 概要
- 「自由で開かれたインド太平洋」は、太平洋とインド洋を、アジアとアフリカを繋ぐ国際公共財として捉え、自由なアクセスを維持することで地域全体の繁栄を目指す戦略・構想
- キーワード
- 法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着
- 沿岸国による不当な海洋アクセス制限を防止
- 経済的繁栄の追求
- 物理的・人的・制度的連結性を確保し、インド太平洋をより「使える海」に。
- 平和と安定の確保
- 沿岸国の法執行能力・防衛力強化に協力
- 海洋の治安を維持
- 法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着
第2回
- 背景
- 紛争の増大
- 東南アジア~アフリカは経済成長著しいが、海賊・テロ等の治安問題を抱え、政治的にも不安定
- 国家間紛争も根絶できていない状態
- アメリカの影響力低下
- 「テロとの戦い」に最適化してしまったアメリカ
- 国内での分断が進み、世界への関心を徐々に失うアメリカ
- 中国の台頭
- 爆発的な経済成長と軍事力整備
- 国際法と相容れない伝統的思想
- 独り勝ちを狙い、増えていく「辺疆」
- 紛争の増大
第3回
- 経緯
- 第1次安倍内閣における「自由と繁栄の弧」
- 価値観外交のはじまり
- 対中封じ込め策と認識されやすく、安全保障に十分踏み込めなかった。
- 第2次安倍内閣における「自由で開かれたインド太平洋」
- 防衛にも踏み込んだ、安全保障戦略として登場
- 軍事色を抑えるため、戦略は構想に
- アメリカの同調
- トランプ大統領が支持し、米国の国家戦略に採用
- 米太平洋軍がインド太平洋軍に改称
- 沿岸国・欧州の賛同
- 各国と安全保障に関する協定を締結
- 日本周辺への艦艇等の派遣が活発化
- 第1次安倍内閣における「自由と繁栄の弧」
第4回
- 意義
- 望ましい安全保障環境の創出
- 「力による一方的な現状変更」を否定する風潮が醸成されている
- 国際社会は日本の防衛力強化を容認
- アメリカ以外の「同志国」を獲得
- 対中封じ込め策ではない。
- 地域全体の繁栄を尊重すれば、中国も利益を得られる。
- 独り勝ちの断念を促す戦略
- 望ましい安全保障環境の創出
- 評価
- 「場」を創出する思想を明示した、戦後初「本物」の安全保障戦略
- アメリカを孤立と迷走から救い出した立役者
- 効果を得られるかは日本次第
- 新興国は、日本が本気か否か値踏みしている。
- 欧米諸国にも右傾化の兆し。国際協調への関心は徐々に損なわれつつある。
- 斜陽国家日本が世界を動かす。
それでは、FOIPが登場した経緯について説明するわね。
よろしくお願いします。
経緯
第1次安倍内閣における「自由と繁栄の弧」
FOIPが明確に語られるようになったのは第2次安倍内閣に入ってからだけれど、実際には同じような考え方は第1次安倍内閣の頃から語られていたわ。
第1次安倍内閣では、価値観外交を推進したの。
これは、法の支配や基本的人権の尊重、民主主義といった、日本と価値観を共有する国との関係を深めて、同時にまだそういう概念が行き渡っていない国にも広めていこうという外交ね。
へぇ、そんな前からFOIPみたいなことをやってたんですね。
ええ。この時、キャッチフレーズとして用いられたのが「自由と繁栄の弧」よ。
自由と繁栄の弧……、あれ?そんなタイトルの本をどこかで読んだような?
それは、当時の外務大臣 麻生太郎の著書ね。
麻生外務大臣は価値観外交を推進する閣僚の代表格で、その考え方について述べる本のタイトルとして採用されたの。
自由と繁栄の弧は、日本から東南アジア、インド、中東を通り、ヨーロッパに至る「弧」について価値観の共有と関係の強化を進めて、地域の繁栄を目指す考え方よ。
ほとんどFOIPと同じように聞こえるんですけど、何か違うんですか?
基本的な考え方は同じだけれど、細部が少し違うわね。
まず、安全保障について全面には押し出されていなかったわ。
当時の自衛隊はまだまだそれほど活動していなかった頃よ。
今みたいに、あちこちに派遣されるようになったのは、民主党政権に変わってからの動的防衛力構想によるところが大きいわ。
だから、自衛隊を積極的に活用して自由と繁栄の弧を実現しようということにはならなかったのよ。
もちろん、安倍総理や麻生外務大臣には、そういう構想もあったのでしょうけど。
でも、当時は国内外から対中封じ込め策ではないか、という見方が強かったの。だから、安全保障について強くは踏み込めなかったのだと思うわ。
でも、全く何もしていなかったわけではないのよ?
実際、東南アジアやインドとは、安全保障についても協力を深めていく方向で話し合いが進められていたわ。ただ、その意味するところを政府が十分に説明していなかったこともあって、ほとんど認知されていなかったと思うわね。
なるほど、今ほど本格的でなかったとしても、FOIPの素地になったということですね。
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第2次安倍内閣における「自由で開かれたインド太平洋」
その後、第1次安倍内閣は安倍総理の体調不良により総辞職、続く福田・麻生内閣は価値観外交の方針を維持するけれど、閣僚の不祥事やリーマンショックの影響を受けて短命政権に終わり、民主党政権へ政権交代することになるわ。
鳩山・菅・野田の民主党政権は中国との関係改善を目指し、対中封じ込め策と見做されていた価値観外交を止める方向へ方針転換したけれど、尖閣諸島問題が激化して対中関係の改善には繋がらなかったわね。
そして、民主党政権が崩壊して再度政権交代。2012年の年末に第2次安倍政権が誕生するわ。
FOIPが明確に国際社会に向けて発表されたのは2016年のことだけれど、政権誕生直後から、FOIPに近いメッセージは次々と発信されていたわ。
ここで大きなポイントとなるのは、安全保障についてのメッセージが以前よりも明確に打ち出されていたことよ。
この間に色々ありましたからね……。
そうね。それまで外洋へ出ることのなかった中国艦艇が、太平洋へと進出するようになったのはこの頃からね。
そして、海上保安庁巡視船への中国漁船衝突事件、中国公船の度重なる領海進入、そして空母「遼寧」の就役と、少しずつ中国は影響力を拡大させていったわ。第2次安倍政権誕生直後には、海自のヘリコプターや護衛艦に対して火器管制レーダーの照射を行うなど、どんどんアグレッシブになっていったわね。
北朝鮮に目を向ければ、日本列島を超える弾道ミサイルの発射、日本海への弾道ミサイル7発連続発射、韓国艦艇との銃撃戦、北朝鮮潜水艇による韓国哨戒艦の撃沈、韓国延坪島への砲撃、そして地下核実験の再開と、日本周辺地域の緊張はどんどん高まっていったわ。
さらに言えば、中東もそうね。
ソマリア沖での海賊問題の激化、そしてイランがホルムズ海峡封鎖を仄めかして周辺国を恫喝するなど、インド太平洋地域が全体的に緊迫していたのは間違いないわね。
当時はそんなに急激に世界の情勢が悪くなってるって認識がなかったんですけど、こうして整理してみると、この頃から急速に変わっていってますね。
このまま第3次世界大戦でも起きようものなら、歴史の教科書にはこの頃がターニングポイントだったって書かれそうです。
ええ。第1次安倍政権から第2次安倍政権までのこの時期は、ちょうどアメリカが対テロ戦争に傾注していった結果、軍の弱体化が表面化し始めた頃であり、中国が北京オリンピックを起爆剤に急速な経済成長をとげ、それが軍事力整備を後押ししていた時期なのよ。
民主党政権の対応が良くなかったと評価する人も多いけれど、中国は日本の対応なんてお構いなしにどんどん拡張していっただろうから、どの政権が担当しても、同じように緊張が高まっていったんじゃないかしら。
でも、そうして緊張が高まっていったからこそ、安全保障についても踏み込んでいけたということですね。
ええ。踏み込んでいけたのか、踏み込まざるを得なかったのかは分からないけれど、第2次安倍政権はその発足直後から安全保障について対外的な発信を積極的に行ったわ。
就任翌日には、日米豪印による集団安全保障の構想を提案、その2か月後の施政方針演説では日米豪印に加えてASEAN諸国との連携強化を掲げていたわ。
こうした連携強化の意見発信はその後も続いたけれど、FOIPとして明確に対外発表されたのは2016年8月のアフリカ開発会議でのことよ。
私が評価しているポイントの一つが、最初にアフリカを相手に発表したことね。
なるほど、日米豪印でやっている取り組みに、ついでにアフリカも混ぜてやるよ、というスタンスではなくて、アフリカこそが重要な参加者だと示したわけですね。
ええ。「自由と繁栄の弧」では、アフリカが結びつく相手としてカウントされていたかが明確ではなかったから、対象地域の認識は人それぞれだったわ。
そうでした。第1次安倍政権の頃は、これからはアメリカだけではなくイギリスとも仲良くしていくんだな~、くらいにしか思ってなかったですね。
アフリカは歴史的背景から欧米の主導する国際的な枠組みに反発しがちなところがあるわ。戦後すぐの頃からしてそうだったけれど、昨今「グローバルサウス」という言い回しで先進国と緩やかな対立をしているのは、まさにそれね。
でも、だからと言ってアフリカを放っておくことは出来ないわ。インド太平洋地域の海洋アクセスを維持するためには、アフリカ諸国の協力が不可欠だもの。彼らの発展が既存の国際法秩序を脅かさない形になるように努力するのは当然のことよ。
もう一つのポイントは、安全保障戦略として登場しながらも、軍事的イメージを途中から抑えるようにしたことよ。
その代表例が当初「戦略(Strategy)」とされていたFOIPが、途中から「構想(Vision)」に変化したことね。
これは、中国に配慮する国でも参加しやすいようにしたものだと言われているわ。2013年には中国が「一帯一路」を打ち出して、新興国への経済援助を強力に推進していたから、日本との安全保障強力を進めることには消極的な国も少なくなかったの。
もともと、「自由と繁栄の弧」が対中封じ込め策だと言われ良いイメージがなかったことを踏まえた対応策とも言えるわね。
うーん、結局安全保障面では踏み込めないってことになるんですかね?
いえ、そんなことはないわ。
日本との安全保障協力を進めるか否かは、国それぞれ。進める国とはかなり具体的に進めるようになっているわ。そして積極的でない国でも、一応の協力が出来るように裾野を広げたというのが実情ね。
やることは変わらないのに、言葉でそんなに変わるものなんですかね。
ええ。言葉の力は偉大よ。その後のFOIPの成功は、日本が国際的なイメージを上手くコントロールできていることによるところが大きいのだもの。
新興国への配慮という点では、オーナーシップを尊重するとした点も大きいわね。かつての日本の価値観外交も含めて、先進国によるアジアやアフリカへの関与は啓蒙主義的な側面がかなり強かったわ。
人権や民主主義の後進国に、正しいやり方を教えてやろうってことですよね。
ええ。FOIPはそういう押しつけがましい態度を極力抑え、あくまでその国のやり方を尊重することを明言したの。
……うーん、本当にそんなこと出来るんですか?
そうは言いつつ、法の支配や民主主義自体は広めていこうとしてるんですよね。
彼らの自発的な変化を待つ、ということね。
実際にそれが出来るかどうかは、我々次第ということではないかしら。
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アメリカの同調
このFOIPの発表に対して、対応が早かったのがアメリカね。
トランプ大統領が2017年11月に訪日、安倍総理との首脳会談をした際、FOIP実現のため日米が協力することで一致したの。
やっぱり、こういうところでサポートしてくれるあたり、アメリカは頼りになりますね。
いえ、それだけではないわ。トランプ政権はその直後に発表した国家安全保障戦略や国家防衛戦略において、FOIPをアジア政策として採用したの。
?
つまり、アメリカが日本の提案したFOIPを国家戦略として採用したということよ。
えっ、そうだったんですか!?
戦後の日米関係といえば、基本的にはアメリカが戦略を立てて、それに日本が追従するというのが常だったわ。
ところが、初めてそれが逆転することが起きたのよ。
そんなことになっていたとは……。
当時のトランプ政権は、対アジア戦略を十分に持ち合わせないまま発足し、徒にTPP(環太平洋パートナーシップ)から離脱するなどして、孤立を深めていたわ。さすがのトランプ大統領も危機感を持ったようで、FOIPを採用することによって地域への影響力を維持しようと考えたのね。
その意気込みが表れているのが米太平洋軍(PACOM)のインド太平洋軍(INDOPACOM)への改称ね。
もともと太平洋軍はインド洋まで担当していたから、名前が変わっただけには違いないのだけど、FOIP実現に向けて米軍が地域に積極的に関与していく方針であることが明確に示されたのよ。
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沿岸国・欧州の賛同
反応したのはアメリカだけではないわ。インド太平洋地域の沿岸諸国やヨーロッパ諸国も、概ね好意的な反応を見せてくれたわ。
FOIPの発表前から日米豪印の安全保障協力は進められていったけど、他の国も防衛協力を進めてくれるようになったの。
「防衛協力」ってよく耳にはするんですが、具体的には何をやってるんです?
形態は様々よ。大臣の会談をするのも、共同訓練をするのも、交換留学生を出すのも、装備品の輸出入をするのも、防衛協力の一種ね。
各種協定の締結
中でも大きいのが各種協定の締結よ。
ACSAとか、聞いたことはない?
アクサ、ですか?
言っておくけれど、自動車保険ではないわよ。
ACSAとは、物品役務相互提供協定のことで、これを締結している国とは、複雑な事前調整なしに、燃料や食料、弾薬などの補給品を融通しあったり、基地での岸壁利用や整備などの役務(サービス)を受けたりすることが出来るわ。
ほら、少し前にアメリカの補給艦から洋上補給を受けたことがあったでしょう?あれはACSAに基づいて燃料をもらっているのよ。
あ、なるほど。
そういえば、練習艦隊の遠洋練習航海では、アメリカは軍の岸壁に入港させてくれて、岸壁の設備で燃料搭載させてくれるのに、どうして他の国は民間の岸壁に入港して、燃料も民間の会社から買ってきているんだろうと思ってたんです。
あれは、ACSAを結んでいなかったからなんですね。
ええ。もちろん、相手国との交渉次第では、軍からそうしたサービスを受けることも不可能ではないわ。でも、向こうは向こうで、国費で基地を運営しているから、こちらに便宜を図る法的根拠がないことには何も出来ないのが普通ね。
だから、ACSAを結んでる国で受けるサービスは、利用実績に応じて国同士で支払いを済ませてくれるけれど、ACSAを結んでいない国にお世話になるときには、その都度民間の業者と契約を結んで、その場で支払いしているのよ。
えっ、その場で支払いですか!
ええ。取り決めのない相手とはツケ払いには出来ないもの。
基本はその場で現金払いよ。だから練習艦「かしま」は、海上自衛隊でも有数の現金輸送艦ってことになるわね。
- 円滑化協定(RAA)
- 駐留軍の地位について事前調整し、出入国管理などの手続きを簡素化することで、共同作戦・訓練などを実施する際の準備所要時間を短縮する。
- アメリカ(日米地位協定)、オーストラリア、イギリスと締結済み。
- 防衛装備品・技術移転協定
- 防衛装備品やその技術について、取り扱いや秘密保護の方法について合意することで、輸出入や共同開発が適切に行われるようにする。
- アメリカ、イギリス、オーストラリア、インド、フィリピン、フランス、ドイツ、マレーシア、イタリア、インドネシア、ベトナム、タイ、スウェーデン、アラブ首長国連邦と締結済み。
- 物品役務相互提供協定(ACSA)
- 補給物資などの物品や、機器整備などの役務を、締結国同士で融通し合えるようにする。
- アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス、カナダ、インドと締結済み。
- 韓国、ニュージーランド、ドイツと検討中。
- 情報保護協定
- 秘密保全に関する規則の摺り合わせを行い、外国政府から提供された秘密情報が適切に保護されるようにする。
- アメリカ、NATO、フランス、オーストラリア、イギリス、イタリア、インド、韓国、ドイツと締結済み。
- ニュージーランド、カナダ、ウクライナと検討中。
(締結国一覧は、令和5年版 防衛白書による。)
こうした協定を締結するのは各種手続きが円滑に進むようになって、負担が減るという実務上のメリットも大きいけれど、それ以上に締結国間の親密さを内外にアピールする効果があるわ。
同盟国ではないけれど、結ぼうと思えばいつでも手を結べるくらいの関係。これは生き残りを考える上で、大きなポイントになるわね。
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艦艇等の派遣活発化
もうひとつ、沿岸国や欧州の反応が好意的だったと言えるのは、艦艇や航空機などの部隊派遣が活発化したことよ。
瀬取り監視なんかも、結構来てくれてますもんね。
国連安保理決議により禁止された、北朝鮮による瀬取り(船舶間移転)行為を監視するため、部隊を日本周辺に派遣した国は、日米韓以外では次のとおりとされている。(令和6年6月末日現在、防衛省発表による。)
- イギリス
- フリゲート「サザーランド」
- 2018年5月
- 揚陸艦「アルビオン」
- 2018年5月~6月
- フリゲート「アーガイル」
- 2018年12月~1月
- フリゲート「モントローズ」
- 2019年2月~3月
- フリゲート「リッチモンド」
- 2021年9月
- 哨戒艦「テイマー」
- 2022年1月
- 2022年2月
- 2922年9月
- 哨戒艦「スペイ」
- 2023年1月
- 2024年3月~4月
- 2024年6月
- フリゲート「サザーランド」
- カナダ
- フルゲート「カルガリー」
- 2018年10月
- 補給艦「アステリックス」
- 2018年10月
- 2019年6月
- フリゲート「レジーナ」
- 2019年6月
- フリゲート「オタワ」
- 2019年8月
- フリゲート「ウィニペグ」
- 2020年10月
- 2021年9月
- フリゲート「バンクーバー」
- 2022年9月
- 2023年9月~11月
- フリゲート「モントリオール」
- 2023年5月
- 航空部隊
- 2018年4月~5月
- 2018年9月~10月
- 2019年6月
- 2019年10月
- 2020年11月~12月
- 2021年10月~11月
- 2022年4月~5月
- 2022年10月~11月
- 2023年4月~5月
- 2023年10月~11月
- 2024年5月~6月
- フルゲート「カルガリー」
- オーストラリア
- フリゲート「メルボルン」
- 2018年10月
- 2019年5月
- フリゲート「アランタ」
- 2020年10月
- 2022年10月
- フリゲート「バララット」
- 2021年5月
- フリゲート「ワラマンガ」
- 2021年10月
- フリゲート「パラマッタ」
- 2022年6月
- フリゲート「アンザック」
- 2023年5月
- フリゲート「トゥーンバ」
- 2023年10月~11月
- 駆逐艦「ホバート」
- 2024年5月
- 航空部隊
- 2018年4月~5月
- 2018年9月~10月
- 2019年5月
- 2019年9月
- 2020年2月
- 2020年9月~10月
- 2021年3月
- 2021年8月~9月
- 2022年2月~3月
- 2023年2月~3月
- 2023年8月~9月
- 2024年2月
- フリゲート「メルボルン」
- ニュージーランド
- 航空部隊
- 2018年9月~10月
- 2019年10月
- 2020年10月~11月
- 2021年4月~5月
- 2021年11月
- 2024年4月~5月
- 航空部隊
- フランス
- フリゲート「ヴァンデミエール」
- 2019年3月
- 2019年春
- 2022年3月
- フリゲート「プレリアル」
- 2021年2月~3月
- 2023年4月
- 強襲揚陸艦「トネール」
- 2021年5月
- フリゲート「シュルクーフ」
- 2021年5月
- 航空部隊
- 2019年3月
- 2021年10月~11月
- 2022年10月~11月
- 2023年10月
- フリゲート「ヴァンデミエール」
- ドイツ
- フリゲート「バイエルン」
- 2021年11月
- フリゲート「バイエルン」
- オランダ
- フリゲート「トロンプ」
- 2024年5月~6月
- フリゲート「トロンプ」
今回、ちょっとした思いつきで瀬取り監視に派遣された部隊をリストアップしてみたのですが、まさかこれほど多かったとは……!正直、ここまで多くなると見づらいし、一つ一つの部隊がいつ派遣されたかは本質的ではないので省略しようかなとも考えましたが、この驚きを体感してもらうために敢えて全て掲載することにしました。
ともすれば冷笑の対象になることすらある国際法秩序ですが、それを守るために、これほど多くの人たちが大洋を越えて汗を流してくれていることに、改めて感服しました。
瀬取り監視以外にも、日本に派遣される艦艇はどんどん増えたわね。
そうですね。最近だと、2021年にイギリスの空母「クイーン・エリザベス」やオランダのフリゲート「エファーツェン」からなるEU軍の空母打撃群が日米英蘭加共同訓練「Pacific Crown21」のために来日したのが印象的でした。あの時、艦を一目見ようとした人たちが押しかけて、横須賀が凄い騒ぎになったんですよ。
派遣されているのは海軍だけではないわ。
水陸両用戦などの共同訓練も活発に行われるようになったから、向こうの海兵隊や陸軍と、日本の陸上自衛隊が一緒に訓練することも増えたし、空自も同様ね。
下手をすると日本より兵力不足に苦しんでいる国も珍しくないけれど、法の支配や民主主義を守る目的なら努力を惜しまないのは、流石は民主主義の本場ね。
ありがたい限りですね。
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さて、これでFOIPが登場した経緯と、それに対する各国からの反応についての説明はおしまいよ。
次回はいよいよ、FOIPの意義について説明していくわね。
ありがとうございます。
それにしても、こんなに凄いことになっていたとは思いませんでした。
そうでしょう?
日本では、FOIPが持つ意味や、世界各国の期待が十分に理解されていないと思うわ。
でも、知ってか知らずかはともかく、これだけ世界を巻き込んだのだから、今更旗振り役を降りるわけにはいかないわね。
ええ。そうですね!
……あのなぁ、水雷長。
機関長が言ってることの意味、本当に分かってるか?
え?日本の戦略にいろんな国が賛同してくれて、サポートしてくれてるんだから、この勢いに乗っていこうって話ですよね?
やっぱ分かってないわ。
……機関長がおっしゃってるのは、事ここに至った以上、FOIP実現のための努力を止めるわけにはいかない。つまり、外国との共同訓練や、海外派遣してプレゼンスオペレーションというのは、もう止められないってことですよ。
……。
えっ!?そうなんですか!?
当たり前よ。今まで何を聞いていたの?
増える事はあっても、減ることなんて無いわ。
いや、だって……。そんなこと言われても、監視に、訓練に、もういっぱいいっぱいですよ。これ以上、海外派遣なんて出来るわけ無いじゃ無いですか!
全くだな……。
もう、諦めて我慢してやるから、年収2000万にしてくれ。
40歳までは我慢してやるからさ……。
この記事では、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)戦略について、次の内容を説明します。
第1回
- 概要
- 「自由で開かれたインド太平洋」は、太平洋とインド洋を、アジアとアフリカを繋ぐ国際公共財として捉え、自由なアクセスを維持することで地域全体の繁栄を目指す戦略・構想
- キーワード
- 法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着
- 沿岸国による不当な海洋アクセス制限を防止
- 経済的繁栄の追求
- 物理的・人的・制度的連結性を確保し、インド太平洋をより「使える海」に。
- 平和と安定の確保
- 沿岸国の法執行能力・防衛力強化に協力
- 海洋の治安を維持
- 法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着
第2回
- 背景
- 紛争の増大
- 東南アジア~アフリカは経済成長著しいが、海賊・テロ等の治安問題を抱え、政治的にも不安定
- 国家間紛争も根絶できていない状態
- アメリカの影響力低下
- 「テロとの戦い」に最適化してしまったアメリカ
- 国内での分断が進み、世界への関心を徐々に失うアメリカ
- 中国の台頭
- 爆発的な経済成長と軍事力整備
- 国際法と相容れない伝統的思想
- 独り勝ちを狙い、増えていく「辺疆」
- 紛争の増大
第3回
- 経緯
- 第1次安倍内閣における「自由と繁栄の弧」
- 価値観外交のはじまり
- 対中封じ込め策と認識されやすく、安全保障に十分踏み込めなかった。
- 第2次安倍内閣における「自由で開かれたインド太平洋」
- 防衛にも踏み込んだ、安全保障戦略として登場
- 軍事色を抑えるため、戦略は構想に
- アメリカの同調
- トランプ大統領が支持し、米国の国家戦略に採用
- 米太平洋軍がインド太平洋軍に改称
- 沿岸国・欧州の賛同
- 各国と安全保障に関する協定を締結
- 日本周辺への艦艇等の派遣が活発化
- 第1次安倍内閣における「自由と繁栄の弧」
第4回
- 意義
- 望ましい安全保障環境の創出
- 「力による一方的な現状変更」を否定する風潮が醸成されている
- 国際社会は日本の防衛力強化を容認
- アメリカ以外の「同志国」を獲得
- 対中封じ込め策ではない。
- 地域全体の繁栄を尊重すれば、中国も利益を得られる。
- 独り勝ちの断念を促す戦略
- 望ましい安全保障環境の創出
- 評価
- 「場」を創出する思想を明示した、戦後初「本物」の安全保障戦略
- アメリカを孤立と迷走から救い出した立役者
- 効果を得られるかは日本次第
- 新興国は、日本が本気か否か値踏みしている。
- 欧米諸国にも右傾化の兆し。国際協調への関心は徐々に損なわれつつある。
- 斜陽国家日本が世界を動かす。
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コメント
コメント一覧 (2件)
第1回の目次を見た時点で、非常に良い記事になることは容易に想像できましたが、やはり中身の濃い良記事ばかりですね。
FOIPの意義は計り知れないにも関わらず、国内ではあまり理解が進んでおらず、残念なのですが、本記事は、様々な文献などを踏まえ、丁寧に記載されていることが非常に伝わります。
「斜陽国家日本が世界を動かす」という締めは、まさに我が意を得たり。第4回も楽しみにしています。
ご感想ありがとうございます。
お褒めに与り、大変光栄です。
おっしゃるとおり、FOIPはわが国にとって、おそらくこれ以上のものはない構想だと思います。
が、同時に、あまりに壮大すぎて、果たしてこんなことが本当に日本に出来るのだろうか……、却って裏目に出ないか……、と不安に思っているのも事実です。
いずれにせよ、海上自衛官の方のみならず、国民みながその意義を知って、一人一人出来ることをするべきだと考え、筆を執りました。
第4回まで、お楽しみ戴ければ何よりです。
引き続きのご愛読をよろしくお願いします!