この記事では、護衛艦のパートについて次の内容を説明します。
- 「航空管制」は航空機の発着艦に際し、パイロットと無線交話を行い誘導するパート
- オペレーションを行うために、在空中の航空機に対し戦術的な指示を出すのは電測員が行う。
- 飛行甲板上での発着艦指示はLSO(飛行長)が行う。
- 航空管制員はこれらの間を繋ぎ、自艦周辺にいる航空機について、待機や飛行甲板上への進入指示を出したりして、安全・円滑な発着艦を実現する。
- DDでは1人のみであることがほとんど。DDGやDEには配置されない。
- DDGやDEでは、電測員が代行する。
- 艦艇で働く航空管制員は陸上の飛行場で経験を積んだ海曹のみ。
- 航海中のワッチが無い代わりに、発着艦の必要があれば昼夜を問わず対応する。
- 何機ものヘリが次々と発着艦する「HS集合訓練」ともなると、数時間にわたり管制し続けることになる。
- DDの場合、管制対象が1機のみで飛行甲板も1機分しかないが、DDHは、複数機を複数スポットで運用するため業務の難易度が大きく変わる。
- 航空管制員になる隊員は入隊初期の段階で空自5術校に入校する。海自以外の学校に行くことが確定している数少ないパート。
さて、船務科も終わったことだから、機関科の説明を聞きに行こうか
ちょっと待ってください。船務科はまだ終わってません。
え?そう?電測も通信もETも聞き終わったけど……?
何を言ってるんです、航空管制があるじゃないですか……
……完全に忘れてた……。
洋上の航空管制官
「航空管制」は、航空機の発着艦に際し、パイロットと無線交話を行い誘導するパートです。
まるで空港の管制塔の人みたいですね。
まるで、と言うか、そのものですね。
航空管制官の国家資格を取得した隊員が配置されています。
へぇ~。そんな隊員がいるんですね~。
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電測員と飛行長を繋ぐ
そう言えば、先パイは前、対潜戦や対水上戦をやるのにヘリをセンサーとして使うって言ってましたよね。
あっちを捜せとかこっちを捜せとか、そういう指示を航空管制の人が出すんですか?
いや、それは電測員の仕事だね。ヘリとリンクを繋いで、無線電話で話しながらヘリが掴んでいるセンサー情報を艦上でも確認したりできるんだ。そのとき、哨戒長や水雷長の指示を受けた電測員が、ヘリに対して戦術的な指示を出すんだ。
あら、そうすると航空管制の人の仕事は発着艦の指示をすることですか。
そこも厳密には違います。飛行甲板の上まで進入してきたヘリに対して、もう少し左に行けとか、高度を下げろとか、発着艦に対する具体的な指示をするのはLSOという配置、具体的には飛行長が担当します。
ん?そうすると航空管制員は何をするんですか?
誘導ですね。
電測員は「ミッション終了、艦に戻れ」とは言いますが、その配置の人はあくまで戦術的な指示をするだけで着艦までは面倒を見ません。
一方で飛行長も既に目の前にいるヘリを着艦させるためのテクニカルな指示はしますが、飛行甲板にたどり着くまでの誘導はしません。
航空管制員の仕事はこの間を埋めることです。つまり、ある程度近くにいるヘリを艦の目の前に連れてくることと、飛行甲板上空への進入や発艦の許可を出すことです。艦が変針する場合や他の航空機が飛行甲板上にある場合など、飛行甲板に進入すると危険な場合は待機を命じたりもします。
そうやって、安全で円滑な発着艦を実現するんです。
そう聞くと、本当に航空管制官なんですね~
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1人配置の難しさ……
この艦に航空管制員は何人乗っているんですか?
ひとりです。
これはうちの艦に限った話ではなく、DDだとほぼ間違いなく1人ですね。
え、それしかいないんですか……
ヘリを載せないDDGやDEでは、そもそも一人も乗っていないので電測員が代行してると聞きます。
ひとりしかいないとなると、どうやって育成するんですか?
そこは大丈夫。艦艇で働く航空管制員はもともと陸上の飛行場で航空管制をしていた人たちで、経験を積んだ人が配置されるようになっているんだ。
なるほど~
とはいえ、1人配置というのはなかなか大変だね。出港するとき、他の乗員はやむを得ないなら休暇扱いにして乗せずに出港することもできるけど、1人配置となるとなかなかそういうわけにもいかないし。
航海中のワッチが無いっていうメリットはあるよ。ただ、その代わり発着艦があると昼夜を問わず配置につかないといけないんだ。
やっぱりそうなりますよね……
先日、うちの艦はHS集合訓練という、たくさんのヘリが次々と発着艦を繰り返す訓練に参加したんですが、1日中配置についてたんで流石に辛かったようです。
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DDとDDHで異なる航空管制員
ちなみに、ヘリコプターの運用を専門にするDDHだと、3人くらい配置されるらしいと聞いたことがあります。船務科ではなく、飛行科の扱いらしいですが。
3人もいれば、交代で休んだりできますね。
うーん。でもどうだろう?
DDHの売りは複数機同時運用だからね……。
DDの航空管制は基本的に1艦1機で、待機を命じないといけないようなことなんてそうそう起きないけど……。DDHの飛行甲板がいくら広いとは言っても、発艦の瞬間に飛行甲板に他の機体が進入するようなことは非常に危険だから時期を調整したりしないといけない。それに、そういう取り回しを踏まえて複数あるスポットのどこに誘導するかを切り替えていかないといけないからね。業務の難易度は全然違うと思うよ。
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空自の教育を受ける
他に変わったことってあります?
そうですね……。
航空管制員の変わったところといえば、必ず空自の教育を受けることですね。
入隊して部隊実習が終わると、空自の第5術科学校で10か月程度の教育を受けることになります。
そうか、空のことだと空自になるんですね~
いえ、搭乗員や整備員だって、海自の中で教育しています。空自の教育を受けることが決まっているパートは航空管制員くらいなものだと思います。
搭乗員や整備員は海自独特の装備品を扱いますが、航空管制で海自独特の文化を作られても困りますからね……。
なるほど~。よくわかりました。
ありがとうございます。
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