この記事では、護衛艦のパートについて次の内容を説明します。
- 「水測」は、ソーナーシステムの操作・整備を行うパート
- ソーナーシステムは潜水艦を探知しうる数少ないセンサー。
- ソーナーは水中音響センサーであり、アクティブソーナーとパッシブソーナーに大別できる。
- アクティブソーナーは自艦から送信した音の反響音を受信し、方位・距離を推定する。
- パッシブソーナーは目標が放射した雑音を受信することで、方位や目標の艦種などを推定する。
- ソーナーは水中音響センサーであり、アクティブソーナーとパッシブソーナーに大別できる。
- レーダーと異なり、捜索用と射撃管制用の区別が無く、捜索に使用するソーナーで発射諸元の算出まで行う。
- したがって、2分隊の対空レーダーと1分隊の方位盤、といった役割分担は無い。
- 砲雷科の中でも有数のインテリ系パート。
- 水中環境(音波伝搬)が捜索に与える影響が凄まじく、水中音響理論への習熟が必須となる。
- パッシブ戦では外国潜水艦の音響情報を頭に叩き込み、信号の現れ方から目標の速力や機器の使用状況すらも割り出すことが求められる。
- 魚雷の発射を行うのも水測員であり、魚雷の特性を考慮して最適な調定を行う必要がある。
- 他の砲雷科員と異なり、若手の頃からソーナー室でワッチを行うため、羨ましがられる。
- 一方、対潜訓練や実潜水艦の捜索が始まると、数日間にわたってほとんどの隊員が配置に就くことになる。
- 甲板作業では中部甲板での作業を行うのが通例。搭載艇の揚げ降ろしや桟橋の設置を行う。
- ソーナーシステムは潜水艦を探知しうる数少ないセンサー。
水中音響を操るということ。
さてさて、こっからが本番ですからね!
次にご紹介するのがこちら!水測員です!わーいドンドンパフパフ!
よし来た!ついに来た!
なんなんだ、この人たち……。
「水測」はソーナーシステムの操作・整備を行うパートです。
ソーナーシステムとは、潜水艦を捜索するための水中音響センサー!電波の届かない水中にあって、潜水艦を探知しうる数少ないセンサーなのです!
よく、映画とかで潜水艦がコーン……コーンって鳴ってるアレですよね?
Yes! That’s right! まあ、あの描写には色々思うところはありますが、だいたいその通りです!
ただ、ソーナーと一口に言ってもアクティブソーナーとパッシブソーナーの2種類に大別できます。アクティブソーナーとは、自分が送信した信号の反響音を受信して、目標の方位・距離を推定する装置のこと。今おっしゃった、潜水艦がコーンコーンいってるのはソレです!
じゃあパッシブというのは?
自分からは音を出さないってことです!
潜水艦がうかつにも水中に放射した雑音、これを受信して目標の方位や目標の種別を推定する装置、それがパッシブソーナーです!
そうか、受信する一方だと、距離までは計算できないんですね。
よくお分かりで!
アクティブソーナーの場合、送信してから受信するまでの時間差を測定することで距離が測れるんですが、パッシブソーナーだとそうもいかないんです。
ただ、パッシブは潜水艦自体が放射した音を読みとりますから、相手がナニモノなのかを見抜くことができます!
アクティブソーナーはレーダーみたいなものなんですね。
はい。ただ、電波に比べてスピードが遅く屈折しやすいのが音波です。それを使う都合上、レーダーとはいろんなところで違いが出てきます。
たとえば、レーダーだと捜索用のレーダーと射撃管制用のレーダーが分かれてますね。広域を見るけど測的精度の悪い捜索用レーダーで探して、見つけたらピンポイントでしか見られないけど測的精度の高い射撃管制用レーダーで追尾します。
でも、ソーナーの場合、音速の都合で送受信できるのは数秒から数十秒に1回。そうなると捜索用と射撃管制用を分ける必要がありませんので、全てひとつのソーナーでやります。
……?
水雷士が言ってるのは、対空戦の場合、捜索と射撃管制はハードウェアも違えば扱う科も違うけど、対潜戦の場合は全部水測員がやるってこと。2分隊が捜索して1分隊に移管するって作業が起こらないんだ。
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砲雷科随一のインテリ系パート
水測は砲雷科の中ではかなり頭の良さを求められるパートだと、ボクは思うんだ。
いやいやご謙遜を!はっきり言います、砲雷科で一番頭が良いパートはどこか、間違いなく水測員です!水測員が言うんだから間違いありません!
この人、何を言ってるんだろう……
さて、冗談はこのくらいにしておいて、実際、水測員というのは頭が良くないと勤まりません。
どうしてですか?
それは、商売道具である音波の特性のせいです。ソーナーはアクティブにしてもパッシブにしても、音波を使うことで潜水艦を捜索する道具です。が!肝心の音波が海中で直進しないのです。
波動が屈折してしまうってことですか?
ご明察!海水中での音速は一定ではありません!
水温や塩分や圧力――正確にはそれらにより変動する弾性率の違いから音速の勾配が生じます。そのために音波は遅い方に引っ張られ、向きを変えてしまうのです!
次にお前は「でも、光や電波だって屈折するのは同じじゃないですか?」と言う
でも、光や電波だって屈折するのは同じじゃないですか?
――はっ?
ノッてくれてありがとう!
光やレーダーとの最大の違いは屈折の起きる度合いがハンパないこと!
前に向かって送信した音波がそのままストンと下に曲がって1kmすら進まないこともあれば、1回深海まで落ち込んだ音が上へ向きを変えて数十キロ先で海面付近にまで届くことすらある。そのくらい音波の進み方は水中環境に左右されてしまうのです!
それって、捜索能力自体が周辺の環境に左右されてしまうってことですよね?そうなるとソーナーやその操作員の能力が高くても、環境がダメならダメってことになりません?
……え、なんか変なこと言いました?
……水雷長……!ワタクシはいま猛烈に感動しています!ファーストコンタクトでここまで分かる人はなかなかいないですよ!
うん、正直ボクも驚いてる……。
京井さん、悪いようにはしません!今すぐ入隊してください!アナタには水雷の素質がある!
えー、そうですか?
話を続けましょう。環境がダメならダメ。それは本当にその通りです。でも、だからこそ水測員の能力が大事なのです!
というのも、この先環境が大丈夫なのかダメなのかを見通す必要もあるし、ダメにしたってどのくらいダメなのかを把握しないといけないからです!
それが分かれば、ダメなところには行かないって選択ができるでしょ?
環境条件は結局のところ天候や海流の循環によって変動するものだから、事前に予想を立てることができるんだ。
いつどの海域を通るべきか、どのセンサーを使うべきか、味方の艦とはどのくらい距離をあけるべきか、作戦を大きく左右する検討は水中環境の予想があって初めて成り立つんだね。
その予想をするのは誰か!?水測員をおいて他にはいません!
なので、水測員は水中音響理論への習熟が必須というわけです!
で、これを理解しようとすれば物理学や海洋学にも多少は手を付けなければならないですからね。頭が良くないと難しいんです。
なるほど……確かに、これまでのパートにはなかった傾向ですね。
それから、パッシブ戦をやる場合も、受信した信号を解析して送信元を特定しないといけません。そのために水測員たちは外国潜水艦が発する音響情報を徹底的に頭に叩き込んでます。
あっ、そういうのってやっぱり分かるんですね。
ええ。でも、単に一致する信号を探すってわけじゃありません。そのときの相手の態勢によって、信号の現れ方は変わってきますからね。そういうのも見て、目標の速力や使用中の機器を推定するのも水測員の仕事になってきます。
これまた、計算が必要ですから頭が良くないとできないでしょう?
確かにそうですね……。
だめ押しでもう一つ言っておくと、魚雷を発射するのも水測員です。射撃員・射管員の関係と同じですね。
水の中で魚雷がどういう動きをするのかを理解した上で、最適な調定をしないといけませんから、やっぱりバカには務まらない仕事ですよ。
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若手の頃からソーナー室ワッチ、しかし……。
水測員が特別なのは、若手の海士の頃からソーナー室ワッチについてて、艦橋ワッチに立たないことだね。
あら、ソーナー室では何をするんですか?
雑用が中心だけど、時々実施する水温測定は若手海士の出番だよ!ここで測った水温が探知距離予察の礎になるんだ。
他のパートだと偉くならないとできないことを水測は最初から出来るんですよね。他のパートからは羨ましがられませんか?
そりゃあもう!艦橋ウィングで暑さ寒さに堪えている射撃員を尻目にエアコンの利いたソーナー室に座ってられますから、やっかみを受けない訳がないですね。
ただ、そんな楽勝決め込んでられるのは対潜捜索をしてないときだけです。いざ捜索をするとなれば、昼間でも夜中でもTASS(曳航式パッシブソーナー)の投入作業に使われますし、水温測定と予察結果の報告を短いインターバルでやらないといけなくなります。
それに、何よりも上級海曹はなかなかソーナー室を離れられませんから、5日でも1週間でも、ほぼ徹夜で立ち続けることになります。他の水測員もソーナー室の配員を増員することになるから、ほとんどの隊員は最低限の睡眠や食事以外はソーナー室に籠もることになります。
おう……やっぱりそういう点では大変そうですね……。
最近は、特定秘密漏えい事案に鑑みて、適性評価未取得の隊員をソーナー室にも入室させないようにする艦が多いと聞きます。そのため、入隊間もない水測員は従来の慣習とは異なり、艦橋ワッチに立つこともあるようです。
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中部甲板の中核
あと、甲板作業では魚雷員と一緒に中部甲板に立つのが通例です。
中部甲板には搭載艇が収められてますから、出入港時に揚げ下ろしをします。
それから、桟橋を書けるのも中部甲板がおこないます。つまり、水測員がしっかり働かないと、みんなが上陸できないってことですよ!
いろんなことをやるんですねぇ……。
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