この記事では、海上自衛隊の一般幹部候補生採用者が受ける待遇について、次の内容を説明します。
- 勤務地
- 広島県江田島市の海上自衛隊幹部候補生学校
- 旧海軍兵学校の建物がそのまま残る、歴史的地域。
- 広島県江田島市の海上自衛隊幹部候補生学校
- 賃金
- 月に約23万円。
- ボーナスは別に出る。
- 勤務時間
- 朝6時から夜22時まで慌ただしく過ごす。
- ただし、その全ての時間で身体を動かしたり、緊張を強いられるわけではない。
- 住居
- 平日は校内の学生館に住む。
- 土日は外出し、下宿に泊まることが出来る。
それではお待ちかね!待遇の話をしよう!
勤務地
まず、勤務地から。採用されると、広島県江田島市にある海上自衛隊幹部候補生学校に行くんだ。
江田島……どこでしたっけ?
広島市の南だよ。JR呉線で呉まで行って、そこからフェリーに乗って行くことが多いかな?
一応、本土とは橋で繋がっているんだけど、大きく回り道をしないといけないから、呉から車で1時間くらいかかってしまう。
海上自衛隊幹部候補生学校は、海上自衛隊第1術科学校と同じ敷地にある士官学校で、旧軍の海軍兵学校の建物がそのまま残る、歴史的な地でもあるんだ。
綺麗なもんですね。
外から見るとね?この赤レンガの中はよく手入れしてある方だけど、もともと明治時代の建物だから、決して快適とはいえないんだよなぁ。
ただ、赤レンガは昼間教務を受けるのに使うスペースで、実際に寝泊まりする学生館は平成になってから建った建物だから、そこまで酷くはないよ。
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賃金
月給は23万円
ズバリ言います、一般幹部候補生の月給は230,300円です!
ふーん、採用試験の成績で変わったりはしないんですか?
原則として、しない!
何故なら、幹部候補生の俸給は金額まで法令で定められているからです!
自衛官の給与は、原則として「階級」+「号俸」で決まるんだけど、幹部候補生には「X号俸」という概念がないということなんだ。
(三等陸尉、三等海尉又は三等空尉以上の自衛官の候補者として採用された者のその候補者である間の俸給月額)
第一条 防衛省の職員の給与等に関する法律(以下「法」という。)第四条第四項ただし書に規定する防衛省令で定める額は、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
一 次に掲げる者 二十三万三百円
イ 防衛大学校を卒業した者
ロ 防衛医科大学校医学教育部看護学科を卒業した者
ハ 一般幹部候補生試験(大卒程度試験)(自衛隊法施行規則(昭和二十九年総理府令第四十号)第三十六条の規定に基づく防衛大臣の定めにより大学(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学(短期大学を除く。)をいう。以下この項において同じ。)を卒業した者又はこれに相当すると認められる者を対象とした採用試験をいう。)に合格した者
ニ 貸費学生(自衛隊法施行令(昭和二十九年政令第百七十九号)第百二十条の三第一項に規定する貸費学生をいう。次号ハにおいて同じ。)のうち大学を卒業した者
防衛省職員給与施行規則
ここで言う「イ」が1課程、「ハ」「ニ」が2課程になるよ。
「ニ」の貸費学生ってなんです?
大学生に奨学金を出す代わりに、卒業後入隊してもらう制度だよ。
これはまた別に説明してあげるね。
ちなみに、大学院卒者向けの試験もあるんだけど、これで採用された人の月給は251,300円になるよ。
採用要項によれば、大卒者向けの試験で採用された人の修士/博士の月給は247,300円とあります。
この金額は上記の規則に記載が無いので、何故そうなるのかは今調べています。おそらく、特別な技能を有する人に対する増額規定を適用しているのではないかと思います。
まぁ、わざわざ学士向けの試験で採用されに行く院卒者はあまりいないと思いますが……。
それからボーナス!期末手当・勤勉手当もしっかり出るよ!
素晴らしい!
ただ、6月のボーナス金額は月給の半分くらいかな……?
期末手当・勤勉手当は、基準となる期間の中で、実際に勤務していた期間を算入するので、4月から入隊する新入隊員はあんまり大きな金額はもらえないんだ。
1課程や、現職の隊員から受験して候補生になった人は満額もらえるんだ。
……まぁ、それはしょうがないですね。
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残業(代)ありません!
月給23万ってことは、超過勤務手当が付けば、30万には行かずとも20万円台後半には持って行けますね。
えっとね……それなんだけど。
うん。残念だけど、自衛官には超過勤務手当が無いんだ。
……は?
超過勤務手当が、無いんだ。
……公務員なのに?
うん。
労働基準法はどうなってるんですか!
自衛官は労働基準法の適用外でね……。
(労働組合法等の適用除外)
第百八条 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)、労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、船員法(昭和二十二年法律第百号)(第一条、第二条、第七条から第十八条まで、第二十条、第二十五条から第二十七条まで、第百二十二条から第百二十五条まで、第百二十六条(第六号及び第七号を除く。)、第百二十七条、第百二十八条(第三号を除く。)、第百二十八条の二及び第百三十四条並びにこれらに関する第百二十条の規定を除く。)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)、船員災害防止活動の促進に関する法律(昭和四十二年法律第六十一号)及び労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)並びにこれらに基づく命令の規定は、隊員については、適用しない。
自衛隊法
えぇ……
いや、でもね。
超過勤務分は事前に上乗せされているって建前にはなっているんだ。
うーん……。10%ですか。
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勤務時間
候補生の洗礼
で、勤務時間はどれくらいなんです?
うーんとね……。候補生の時ってどれくらい働くんだっけ……。
朝6時に起きる前からベッドの整理を行い、起きたらグラウンドに集合、乾布摩擦、体操、掃除……、朝飯をすっとばして教官室へ走り……
……
えっとね。実労働は、6時から22時、食事時間以外だと間に合計1~2時間くらい休憩できるタイミングがちょっとずつあるかな!
……食事にどれくらいの時間をかけるのか知りませんが、1日に12~14時間くらいってことですね。
一応理解してもらいたいんだけど、勤務時間は確かに長い。でも、常に身体を動かしたり、緊張を強いられるようなものでは無いよ。
みんなが集合するための待ち時間だったり、掃除だったり、荷物の整理だったり、自習だったり。
どれくらい一生懸命にやるか、自分でコントロールできる時間が何時間かはあるから、辛いときにはそこで少し気を緩めることもできる。もちろん、そこも一生懸命に取り組むに越したことは無いんだけどね。
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【参考】生活風景と時間が失われる原因
そうそう。この動画はね、なかなか良いよ!
そんなに実際と大きな差はない!
みんな、慌ただしいですね。
校内は無駄に広くてね……。移動するだけで5分10分くらい軽く掛かってしまうんだ。
それに、待ち時間が結構あって。例えば動画の2分20秒のあたり。8時の国旗掲揚時に整列している必要があって移動しているんだけど、時間は7時45分。
なんで15分も早く?
移動した先で、教官や学生隊長・教育部長・学校長みたいなえらい人に挨拶をするためだね。これは毎朝の儀式みたいなもので、これをしている最中に飛び込むわけにはいかないから、教官が来るより早く進出しておかないといけないの。
なるほど…
加えて、7時45分には前進を開始しないといけない以上、7時40分くらいには全員が揃ってることを確認しないといけない。そうなると、7時35分くらいには出発地点にいないと、自分を捜索する人が派遣されるかもしれない。じゃあ、7時30分くらいには出発地点のあたりにいるようにしないと……って感じで、みんなと行動のタイミングを合わせようとすると、無限に時間が失われていくんだ……。
大変ですね……
学生同士の信頼関係が築かれていく中で「コイツはこのくらいの時間には必ず来るな?」っていう認識が出来上がると、時間ギリギリまで他の場所にいても大丈夫になる。そういうことを肌で覚えるのがこの学生生活なんだ。
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部隊に行けば変わる?
正直、幹部候補生の労働時間はメチャクチャ長い!
ただ、これは本当に候補生の間だけの洗礼だというのは理解してもらいたい!
本当ですか~?
少なくとも、陸上部隊に行けば……。
艦艇は……うん、微妙だ。。。
……なんとも釈然としませんが、まぁいいでしょう。
艦艇には別に手当がつくと、前に先パイは言ってましたからね。
艦艇勤務の忙しさは、候補生の忙しさとはまた違ったものです。また別の機会に説明しましょう。
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住居
平日は学校内で過ごす
住む場所はどうなるんです?
平日は学校の中の「学生館」っていう建物の中に住むよ。
4階建てで、1部屋に4人の候補生が住むのが通例。
1部屋は12畳か16畳くらいの広さかな?そこに4人相部屋で住むんだ。
ちょっと狭くないですか?
相部屋とは言っても、部屋の中に置いてあるのはベッドとベッド下のコンテナと衣装ロッカーが1人1つずつ。あとは共用の円卓(アイロンがけに使う)くらいだから、そんなに手狭ではないよ。
それしかモノがないんですか……
学習用の机椅子は別に用意された自習室にあるし、冷蔵庫は分隊(30名程度のグループ)に1つ与えられた娯楽室に設置されてるからね。生活するだけなら、ひとまずは十分。
風呂・トイレはどうです?
風呂は学生館に大浴場があるから、そこまで歩いて行くよ。
各階にシャワールームもあるけど、居室から遠かったもんだから、ボクは修業直前まで存在にすら気付かなかったよ。使うと掃除が大変だから、学生間の協定で使わないようにする期も珍しくないみたいだね。
トイレも共同のところがあるよ。大便器もほとんどは洋式だから安心して。海上自衛隊の良いところは、だいたいどこに行っても洋式便器が用意されてることだからね!
そ、そうですか……。まあ、そこは結構重要ですね。
そして、個室は消灯後、こっそり当直日誌を書くスペースに……いや、なんでもない。
……。
1か所につき1台くらい、ウォシュレットが付いてるかな?
ただ、大体の場合は故障してるんだよなぁ……。どこかのバカがボタン陥没させたりして、そのまま二度と復活しないの。
これは学校に限らずだね。基地内のウォシュレットは普通の商業施設では起きない頻度で壊れるんだよね。腹立たしい……!
商業施設では、壊れたら修理しているからでは?
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週末は外出!
そんな候補生も、週末は外出できるよ!
おぉ~
江田島では、慣習的に、候補生が下宿――校外にある家や部屋を借りて、週末だけ泊まるんだ。
ビジネスライクに家の鍵をぽんと渡してくれるところもあれば、長屋の一部屋を貸してくれて大家さんが食事の面倒をみてくれるようなところもあるよ。
みんな、何して過ごすんですか?
そこを拠点に呉や広島に遊びに行く人が多かったかな?
ボクはずっと下宿に籠もってゲームしてたけど……。
……時間の使い方は自由ですからね。
まぁ、外出の話は結構長くなるから、別の機会に詳しく話そう……。
(今回、あまり記事が長くないので、まとめは省略します。)
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