この記事では海上自衛隊の採用制度について、次の内容を説明します。
- 一般幹部候補生・一般曹候補生は既に入隊した隊員でも受験できること。
- 海曹士から採用された一般幹部候補生は「部内A幹」と俗称される。
- 「部内の幹部候補生」といった場合、海曹から選抜された一般幹部候補生課程(部内課程)=第2学生隊のB幹を指すこともあるが、この場合は第1学生隊のA幹になる。
- 2課程として、他のA幹と全く同じ内容・期間の教育を受ける。
- 海上自衛隊の習俗に少なからず知見のある存在として他の2課程から一目置かれる。
- 任期制隊員から採用された一般曹候補生は「部内補生」と俗称される。
- 通常の一般曹候補生課程終了後に開かれる、一般曹候補生(部内)課程(1ヶ月)を受講する。
- 時期によっては3曹昇任が却って遅くなることもあるので注意が必要。
- いずれの場合も受験には部隊の協力が不可欠。
- 海曹士から採用された一般幹部候補生は「部内A幹」と俗称される。
砲術士、着任した初任海士の面談、終わったよ。
幸いにも現時点で退職希望者なし!艦艇不希望者もなし!恵まれてるね。
おぉ~よかったです!
補給長が今のうちに特別評価を準備するように言ってたので、準備しますね。
うん、よろしく頼むよ。きちんと根拠を調べるのを忘れないようにね。
あ……それはそうと、降ろさないといけないのが2人いるんだ。田中2士と鈴木2士。まだまだ先だけど、心づもりはしておいて。
あら、どうかしたんですか?
部内A幹と部内補生。受験日がちょうど任務行動に被ってるからさ。任務出発前にどこかへ臨時勤務に出さないといけないなぁ……。
部内からも採用されるA幹と一般曹候補生
部内A幹……?
……あ。あれですね!
……砲術士?大丈夫?本当に分かってる?
……分かってないと困るから、一応説明しておくね?
まず今の話は、一般幹部候補生と一般曹候補生の話。どちらも普通は部外の一般人が応募して採用になるんだけど、部内の隊員が受験することも出来るんだ。
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部内A幹
海曹士から採用された一般幹部候補生を「部内A幹」と俗称するんだ。大抵は海士が応募するんだけど、ごく稀に若手の海曹から採用されることもある。
部内の子、砲術士の分隊にも2、3人くらいいたでしょ?
いました、いました!
あんまり目立たなかったけど……
「部内の幹部候補生」っていうと「一般幹部候補生課程(部内課程)」を考える人が多いんだけど、これは第2学生隊のB幹だからね。この場合は第1学生隊のA幹になった部内出身者のことを言うんだ。
本当にややこしいですよねぇ……。
全くだね。そして砲術士も知っての通り、彼らは2課程として扱われる。
教育隊で既に教育されてはいるけれど、幹部候補生学校では他のA幹と全く同じ内容・期間の教育を受けるんだ。
ボクの分隊では、海上自衛隊の習俗に少なからず知見のある人として、他の2課程から一目置かれていたんだけど……。ベッドの張り方とか、護衛艦実習の過ごし方とか。砲術士の期は違ったの?
うちの分隊の部内A幹の子は合格するなり陸上に降ろされちゃったそうです。だからあんまり部隊のことを知らなかったんですよね。
あー。そういうことか。
どうせいなくなる奴だからって、ろくに育ててもらえなかったんだな。かわいそうに。うちの艦はそういうことをしないようにしないとね。
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部内補生
お次は部内補生。
こちらは任期制隊員だけが応募可能だよ。まぁ、非任期制隊員はもともと非任期制隊員だからね……。
これで採用されて課程を修業すると、人事管理に用いられる入隊期別が一般曹候補生に変わるんだ。
あ、そういえば、射撃の内田3曹がそうです!書類の入隊期別に「Y●●期補生(Yー×××練)」って書いてました。
そう。一般曹候補生扱いされるってことは、非任期制隊員になるから継続任用する必要が無くなるし、任期満了時の特例の退職手当なんかも無くなるね。
部内補生に採用された人は、部内A幹と違って、普通の一般曹候補生の教育を受けるわけではないよ。内容の大部分は自衛官候補生課程・練習員課程と重複しているから、例年8月に一般曹候補生課程が終わったあと、9月に1ヶ月間だけ開かれる一般曹候補生(部内)課程を受けるんだ。
確かに、内田3曹の人事記録にはそんなことが書いてましたねぇ。
将来分隊長になったときのために覚えておいてもらいたいんだけど、部内補生は絶対に得するような制度ではないってことは理解しておいてね?
そうですね。満期金がもらえなくなっちゃいますし。
いや、それだけではないよ。
受験時期によっては、部内補生を受けることで却って3曹昇任が遅くなってしまうことがあるんだ。非任期制隊員の3曹昇任資格は士長勤務期間に加えて期別でも管理されているせいだね。
入隊翌年の一般曹候補生にならないと、昇任試験の受験開始自体はおそくなってしまう。もちろん、昇任のしやすさ自体も違うから一概に損だとは言えないけど、十分注意が必要だね。
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なによりも大事な部隊の協力
部内A幹にしても部内補生にしても、大切なのは部隊に協力してもらうことだよ。
受験しようと思ったら、志願票を提出しないといけないし、試験日は配属先の部隊で勤務できない。どう頑張っても人事担当者が了承しないと受けることは出来ない。
それに、A幹の試験って結構難しいんですよね?
艦で働きながら試験勉強するのもなかなか大変そうです。
それもあるね。試験勉強の時間を確保するために、必要なら雑用を一部免除するような調整をしてあげる必要も出てくる。
なるほど~。私たちは責任重大ってことですね。
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